35人学級でも個別の学びを個々の進度で行う方法(6)スタンフォード大の無料コンテンツで学ぶ
一人もしくはチームでの動画のアウトプットはとにかく多く行っていました。始めたのは2014年の11月。ブログによると、
2014年11月11日に偶然生徒との会話から生まれました。世界中のトップレベルの大学の講義を生徒がオンラインで受講し、「誰にでも分かる」をコンセプトに動画でアウトプットしています。
使っていたのはCoursera。スタンフォード大学が中心となって始めた無料の動画コンテンツ集でした。様々な大学が講義をアップしています。今でこそ、日本の高校生向けの取り組みが増えましたが、当時は難しすぎて授業で使えないと思い込んでいた私に、右腕だった生徒のTaroがデザインしてくれた授業です。
映像コンテンツ受講から評価までの流れ
2014年に高校3年の学年でスタートしたこの取り組みは、3年後の2017年にも高校3年の学年で行いました。大まかな流れは以下の通りです。
1)生徒はチームもしくは個人でどのコースを受講するか選ぶ
2)自宅で学習してきて内容をまとめてくる
3)学校ではチームまたは個人でどうすれば伝わりやすい動画にできるか相談
4)動画を制作
5)クラウドにアップしてピア評価
異なるのは、クラウドの種類と生徒の制作技術です。2014年当時はあまり使えるプラットフォームがなかったため、サイトを自作していました。
当時は、編集技術があまり高くないですが、英語を使おうという姿勢は強かったように思います。オールイングリッシュで育てたということも関係しているかもしれません。
Padletで上手に手軽に集約する
2017年時にはEdmodoとPadletを多用していました。Padletではこの写真のようにコラムを作ることができます。チームごとにコラムを割り振っておけば、そこにYoutubeリンクを貼ったり動画をアップするだけでよく、しかもg評価時にもどこを見ればいいか一目瞭然、進捗状況もわかりやすいです。
生徒の動画アウトプット例
英語ばかりで飽きた!という生徒が多く、2017年次にCoursera以外のプラットフォームを解禁したところ、言語を学ぶ生徒が全体の1/3になりました。よく、「英語もできないくせに第二言語を高校でやるなんて」という先生がおられますが、それは生徒に聞くと別問題のようです。二週間程度で基礎的なアウトプットを動画でするのですから大したものです。人気は中国語とスペイン語でした。
こうしたアウトプットのいいところは、偏差値の高低に関わらず、全員が自分の得意分野を発揮できることでした。音楽やアートに強い生徒、まとめの好きな生徒、編集が上手な生徒、アプリを探すのが早い生徒、聞き取りが上手な生徒、和訳をする生徒。
このグループは外部テストの点数は伸びませんでしたが、内容を上手に解釈し、ミッション通り「誰でも分かる動画」に上手に仕立てています。
ニューリーダーの台頭
ボッチだけどこういうプロジェクトではとてつもない集中力とセンスを発揮する生徒がいます。その一人が以前にも紹介したSarina。戦争に関する難解なコースを受講し、ノートにぎっしりとまとめ、自分なりの解釈をします。さらに、何十もの動画や音を使って作ったこの動画はもはやアマチュアの域を脱してしまいました。
動画アウトプットのススメ
動画の場合は非常にプロセスが複雑な上、必要な要素も多様です。つまり、生徒の学びもその分多いわけです。様々な認知特性を生かすこともできる上、計画を立てて遂行する力や、作業に優先順位をつけて各生徒に仕事を振ることも必要です。ICTだけでなく、国語力や思考力、チームビルディングができなければいい映像を作れません。
制作するためのアプリも最初はデフォルトのiMovieかClipsを使うことをお勧めしますが、最終的に生徒の判断に委ねることをお勧めします。キネマスターが最近は人気だとか。
さいごに
生徒が授業をデザインし、指示をだし、全て進める。2014年にはそれが最終形態でした。それができたのにはいくつか理由があります。まず第一に、この学年は3年間持ち上がりでしたが、途中半年間私が育児休業で抜けたこと。最初で最後のBYODのiPadを持ち始めたクラスだったこと。この辺りはまた機会を見つけてお話しします。
余談ですが、この授業を作ってくれた秀才Taroは卒業後、片道切符を持ってミラノへ。次の瞬間、ドルチェ・エ・カッパーナのランウェイから出てきたモデルです。成績No.1の彼は、日本中どこの大学でも行けるのにバカな大学生になりたくない。と世界へ旅立ちました。今頃くしゃみしているかも、しれませんね。