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不法移民への食料用デビットカードの停止を発表したNY市長の汚職疑惑

トランプが大統領選で勝利してから48時間以内に、国内外でさまざまな出来事が起こっている。例えば、カタールはハマスの政治指導者に国外退去を命じた。EUのリーダーもアメリカからのオイル購入に前向きな意向を示し、他にもプーチンを含む多くの国家リーダーがトランプに好意的な声明を発表している。

https://www.wsj.com/world/middle-east/qatar-tells-hamas-leaders-to-leave-7d9b1a1e
https://www.reuters.com/business/energy/eu-may-consider-replacing-russian-lng-imports-with-those-us-von-der-leyen-says-2024-11-08/

そのなかで、メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領はトランプと電話会談を行い、国境問題について話し合った。トランプは、不法移民を抑制しない場合、メキシコに対して25%の関税を課す可能性があると伝えたそうだ。

https://www.reuters.com/world/americas/mexico-stick-with-policies-aimed-stopping-migrants-after-trump-win-2024-11-08/

不法移民へのデビットカード支給プログラム停止

「48時間」という意味で最もわかりやすりのが、ニューヨーク市長エリック・アダムスの速攻対応である。

大統領選挙投票日の2日後、11月7日にアダムスは、不法移民へのデビットカード支給プログラムを停止する計画を発表した。このプログラムにはすでにニューヨーク市の予算から5300万ドル(約80億円)が投入されていたが、突然の停止発表となった。  

https://nypost.com/2024/11/08/us-news/nyc-to-end-controversial-program-supplying-migrants-with-prepaid-debit-cards/

このプログラムは、国境をこえてアメリカに入国した移民家族が食料や生活必需品を購入する支援として導入されていたが、今後は他の支援方法を検討し、引き続き移民コミュニティを支援する意向を示している。

アダムスの汚職起訴

2024年9月、大統領選投票日の約2ヶ月前、アダムスはトルコ政府から違法な政治献金を受け取った疑いで、連邦当局から起訴された。起訴状によれば、アダムスはトルコ政府高官らからトルコ航空のアップグレードや違法選挙資金を受け取り、その見返りとしてトルコ領事館の高層ビル建設に際し、市の消防当局に圧力をかけて安全許可を得るなどの便宜を図ったとされている。アダムス氏は無実を主張している。

https://www.justice.gov/usao-sdny/pr/new-york-city-mayor-eric-adams-charged-bribery-and-campaign-finance-offenses

バイデン政権を批判したアダムスが標的にあったという陰謀論

この件について、民主党のアダムスがバイデン政権の移民政策を批判したために連邦司法省の標的にされたという陰謀論も浮上している。

ニューヨーク市は「サンクチュアリ・シティ(Sanctuary City)」として、不法移民を含む移民に対して保護的な方針を取り、住宅や食料の支援を提供している。このため、多くの移民が市に押し寄せ(テキサス州からのバスで送迎されるケースもある)、市の予算に大きな負担がかかっていた。

市民からも批判の声が上がっており、アダムスもバイデン政権の国境管理の問題を無視できない状況に立たされていた。そのため、アダムスはこれまでにも何度かバイデン政権の移民政策に対して批判を行ってきた経緯がある。

この流れの中で、アダムス自身も今回の汚職疑惑の起訴には政治的な動機があると示唆している。しかし、アダムスが政権批判を始めたのは比較的最近のことであり、捜査の開始時期を考えると、政治的動機があったとする陰謀論を裏付けるのは難しい。

https://www.washingtonpost.com/politics/2024/09/26/eric-adams-indictment-doj-conspiracy-theories-targeting/

トランプの見解

トランプはアダムスの起訴について「彼の飛行機の座席がアップグレードされた。これは非常に重大な罪状だ」と皮肉を込めて述べ、司法省を「汚れたプレイヤー」と呼び批判している。

https://www.politico.com/news/2024/09/26/trump-doj-eric-adams-indictment-00181362?utm_source=chatgpt.com

なぜトランプは民主党市長のアダムスを援護するのか。それはトランプ自身が2024年の大統領選にへの出馬を表明してから複数の刑事、民事訴訟に直面してきたからだ。これらは全て選挙出馬前に起訴可能だった案件であり、そのタイミングを考えると、政治的な動機がなかったとは言い難い。

刑事事件:

  1. 選挙結果の覆しを図った疑惑: 2020年の大統領選挙結果を覆そうとしたとして、連邦法違反で起訴

  2. ジョージア州での選挙干渉疑惑: ジョージア州での選挙結果を覆そうとしたとして、州法違反で起訴

  3. 機密文書の不正持ち出し疑惑: 大統領退任時に機密文書を自宅に持ち出し、適切に保管しなかったとして起訴

  4. 不倫口止め料の支払い記録改ざん疑惑: 不倫関係にあった元ポルノ女優への口止め料支払いを巡り、事業記録を改ざんしたとして起訴

民事事件:

  • 詐欺疑惑: ニューヨーク州司法長官から、資産価値を過大に申告したとして民事訴訟を提起

トランプとの電話会談

アダムスは、11月8日のローカルテレビのインタビューで、大統領選挙投票直後にトランプと電話会談を行い、「ニューヨーク市のインフラや公共の安全、生活の手頃さといった差し迫った課題への協力について話し合った」と明らかにした。

また、移民へのデビットカード支給をなぜ今になって急に停止したのかという質問については、予算上の制約が理由だと説明した。

「トランプに起訴を取り下げてもらう期待があるのか?」との質問には、「自分の弁護士が対応している」と述べ、トランプとの具体的な会話内容には触れなかった。



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