不法移民がアメリカ年金崩壊を救う
「年金2034年問題」という課題が浮上している。あと10年で年金積立金が枯渇し、以降は労働者から徴収する年金税で支出を賄わなければならなくなると見込まれている。少子化が進む中、ベビーブーマー世代が次々とリタイアしている現在、年金財源は確実に不足すると試算されている。その結果、受給金額は23%も減少する可能性があり、将来的には受給額の削減だけでなく、受給開始年齢の引き上げや労働者への課税強化が避けられない状況にある。
年金はポンジー
年金制度は「ポンジースキーム」と批判されることがある。それは、労働者が永遠に増え続けることを前提としているためだ。しかし、少子化が進む現代では、その前提自体がすでに崩壊している。シンクタンクのブルッキングス研究所は、この年金問題の解決策として積極的な移民の受け入れを推奨しているが、移民が全員労働者として働くとは限らない。さらに、移民もいずれは年金の受給者となるため、持続可能な解決策として十分かどうかは疑問が残る。
ネットポジティブという考え方
その中でも、不法就労者は「ネットポジティブ」とみなされている。不法就労者は納税しているものの、合法的な身分がないため年金を受給する権利がないからだ。しかし、彼らに恩赦が与えられて合法化されれば、将来的に年金の受給者となる可能性があるため、その時点で「ネットネガティブ」に転じるとされている。
年金を維持するために移民を受け入れるのであれば、若く健康で学歴が高い優秀な不法移民を対象として、恩赦を与えないのが最適ということになる。彼らは今後長期間にわたって高収入を得る可能性が高く、その分多くの年金税を納めることが期待できる上、リタイア後も年金の受給資格がないため、財政に対する負担も軽減されるからだ。
https://cis.org/Report/Impact-Immigration-Social-Security-and-Medicare-Conceptual-Primer
アメリカ政府が最初で最後に不法移民に恩赦を与えたのは、約40年前の1986年、レーガン政権時代のことだ。当時、300万人の不法移民に恩赦を通して永住権が与えられた。その後、ブッシュ(父)、クリントン、ブッシュ(子)、オバマ各政権が再度の恩赦を提案したものの、議会で法案は通過しなかった。現在、アメリカには約1,100万人の不法移民がいるが、巨額の「ネットポジティブ」ではあるだけに、第二の恩赦はあり得るのだろうか。