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フラクタル なぜ厄災が起こるのか

今、世界ではコロナウイルスが蔓延しています。
また、世界ではまれに大地震が起こったり、リーマンショックのような経済危機が訪れたりします。
なぜ、時折こういった災難に見舞われるのか?

答えは、世界がフラクタル現象によって成り立っているからです。

自然界には複雑な形の物や複雑な模様が多く存在します。
松ぼっくりや、シマウマの模様、地面のひび割れなどですね。
これらは一見複雑に見えるのですが、よく観察するとある法則に沿って作られていることがわかります。
その法則こそが、
フランスの数学者であり、コンピューターグラフィックスの父でもあるベノワ・マンデブロが発見した、
「フラクタル現象」

ーフラクタルとは?ー

フラクタル現象と言うのは、自然界によく出現する現象で、
冷蔵庫にある野菜の中にも見られる現象です。

例えば、ブロッコリー
ブロッコリーを食べるとき、必ずひと房ごとに切って使いますよね?
今度ブロッコリーを買った時、そのひと房と、元の大きなブロッコリーを見比べてみてください。
二つはほとんど同じような形をしています。
まるで、大きなブロッコリーの子供みたいですよね。
これがフラクタル現象です。

また、岩手県の太平洋沿岸に見られるリアス式海岸
リアス式海岸とは、狭い湾が入り組んだギザギザした複雑な地形をした海岸です。
この海岸をグーグルアースで拡大してみると、全体の海岸の形によく似た小さなギザギザした海岸線が現れます。
これもフラクタル現象。

コメント 2020-04-05 140350

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(上が全体の画像。下が一部を拡大した画像)

つまりフラクタル現象とは、全体の一部を切り取ったときに同じような形になる現象ですね。

厳密に言うと、全体と部分が似ていることを「自己相似(じこそうじ)」と呼び、自己相似が積み重なって自己組織化していく現象が「フラクタル現象」です。

なぜ、自然界にはこういう現象があるのか?

ブロッコリーのような植物は、DNA(遺伝子)によって決められた規則に従って成長します。
そして、DNAと言うのは次の四つの記号(塩基)で成り立っています。
A=アデニン、T=チミン、G=グアニン、C=シトシン
どんな複雑なものでも、この四つの記号の組み合わせで作られているんですね。

こんな制約の中で、複雑な形を作ろうとすると、
一度できた組織を次のステップでまた使い回すしか方法がありません。
これが「自己組織化」で、
自分の中に自分を取り込んだり(これをフィードバックと呼ぶ)、自分の一部を押し出して成長していくのです。

こういった現象はもちろんブロッコリーーだけじゃありません。
DNAによって構成されるものなので、トラやシマウマの模様、肺の気管支、脳のシナプスなど、あらゆる動植物に見られます。


生物が自己組織化するのは、自分で自分を取り込む「フィードバック」が行われているからですが、これはDNAによるものです。
でも、リアス式海岸の場合、生物じゃないのでDNAでは説明できませんね。

では、無生物はどうやって自己組織化していくのでしょうか?

雪の結晶は六角形を組み合わせた自己相似でできています。
これは水蒸気が結晶を作るとき、
酸素のまわりの三つの水素が等価になって結合の角度が120度になるからです。
120度が三つ重なると六角形になりますが、
これがさらに重なり合うことで雪の結晶となるんですね。

つまり、120度が三つ重なり六角形になる。
その六角形が折り重なっていき(自己組織化し)結晶になる(=フラクタル現象が起こる)というわけです。

砂漠もまた、大小の砂山を組み合わせたフラクタル現象です。
テーブルの上に砂粒をサラサラ落としていくと、砂山ができます。
さらに続けると、砂山はある時点で突然崩れ始めます。
砂漠もそれと同じです。
風に飛ばされた砂粒が、砂山を形成し、やがて崩壊し、また別の砂山を築き上げていくのです。
この作業が何千年も繰り返されたため、砂漠というフラクタルな形が生まれたんですね。

このように、自然界はかなり複雑な形を形成してるけど、
タネを明かすと割と単純な法則でできている
んですね。


フラクタルを可視化

この「自然界の根本法則」である「フラクタル」を発見したマンデルブロ
彼が、有名になったのは、ただこれを発見したからではなく、
これをコンピューターグラフィックスで再現して見せたからです。
「単純な規則から、複雑な組織が生まれるのは、フィードバックを繰り返すから」
彼は、フィードバックを使って、コンピューター上にリアルな山脈や海岸線を次々と作り出していったのです。
この技法は、今ではCGに活用されているため、
「コンピューターグラフィックスの父」とも呼ばれているんですね。

人間社会のフラクタル現象

マンデルブロは、フラクタル現象は人間社会も支配していると考えました
わかりやすいのがインターネットの世界
インターネットのネットワークは複雑ですが、いくつものサイトが自己組織化されたフラクタルな世界です。

インターネットの中には、様々なサイトがありますが、
多くの場合グーグルなどの検索サイトを使って、様々なサイトへアクセスします。
その中でも多く検索されるのがツイッターやYouTubeなどのプラットフォームと呼ばれるサイト。
さらに、SNSには数々の有名人がいて、多くのフォロワーを集めています。
そのフォロワーの中には、一般人でありながら数万人のフォロワーを持つインフルエンサーと呼ばれる人もいます。

グーグルのような巨大なサイトがブロッコリーの根元の一番太い茎だとしたら、
ツイッターやYouTubeのようなプラットフォームは、そこから枝分かれしたやや太い茎
そして、有名人やインフルエンサーは、さらにそこから枝分かれした茎になります。
このようにインターネットの世界も、ブロッコリーと同じようなフラクタル現象になっているんですね。

インターネットに限らず、こういうフラクタルはどこにでも存在します。
会社も大きな「会社」という組織の中に「○○部」や「○○課」があり、
さらに、「係」という小さい組織に別れていきます。
このように、大きな会社でも、全体と部分が同じような構図が見られます。
なので、これもブロッコリーと同じくフラクタル現象です。

人間社会のフラクタル現象は、常に一定の形を保っているように見えますが、枝の先端の部分では、常に細かな変化が起こっています
ツイッターで言えば、参入者が増えたり、辞めていったり。、
また、この前までフォロワーが数百人しかいなかった人が、急成長して何千人のフォロワーを抱えるインフルエンサーになったり。
互いに影響し合いながら、こんな感じに変化しながらフラクタルを作り上げていくんですね。

ハブ

フラクタル現象には、必ず「ハブ」と呼ばれる部分が存在します。
「ハブ」と言うのは、ブロッコリーでいうと、付け根の部分
全体の根元の一番太い部分や、枝分かれの付け根部分です。
インターネットで言えば、グーグルなどのポータルやツイッター、YouTubeなど、プラットフォーム
つまり、人が多く集まるサイトですね。
街で言えば、駅や空港といった場所。

ハブの大きさは様々です。
駅で言えば、東京駅のような様々な路線が集まる駅だったり、
何本か電車を乗り換えることができる中程度の駅だったり、
小さな町の、小さな駅だったり。

この「ハブ」という部分が、まれに世界に大きな変動を与えるきっかけとなります
ようやくここで話の最初に戻るのですが、
ある日突然大きな災害が起こってしまうのは、この「ハブ」に関係します。
ハブからハブへ異常が伝わっていくことで、ドミノ倒しのように世界中に災難が連鎖してしまうのです。

厄災の理由

世界はフラクタルで出来ていて、一見するとその形は一定を保ってるように見えます。
しかし、枝の先の方では、細かな変化が常に起こっていて
たまにその影響で小さなハブに異常を与えます
従業員のいざこざで、小さなお店がつぶれてしまう、みたいな現象ですね。
ほとんどの場合は、この程度では全体に影響を及ぼさないのですが、
まれな確率で、小さなもめごとが大きな戦争に発展する場合があります。

小さなイライラが募ってキレてしまう人がいるように、
小さなもめごとが様々なところで一斉に発生すると、各地になる小さなハブが次々崩壊してしまいます。
すると、中程度のハブにまで影響し、さらに大きなハブに支障を来してしまうのです。
これはいわゆる「バタフライ効果」ですね。

「ブラジルの蝶の羽ばたきが、テキサスで竜巻を起こす」というのが「バタフライ効果」です。
気象学者のエドワード・ローレンツが1960年代からコンピューターによる天候シミュレーション取り込み、
初期のわずかな入力の違いが結果に大きく影響することを発見した際に、用いられた例えです。

山で小石が転がっただけでは、何も起こりませんが、
それが蓄積されると一気に山の形が変わるような巨大な土砂崩れが起こってしまいます
これも、末端の小さな変化がハブからハブへ増幅されることで、起こってしまう現象です。

土砂崩れだけじゃなく、地震も同じです。
地殻には、大小様々な断層が網の目のように走っています。
ここにマントル対流による圧力が加わると、断層があちこちズレるのですが、
ほとんどの場合体感できないほどの小さな地震ですみます。
しかし、そういった現象が積み重なると、徐々に臨界状態に近づいて
わずかな断層のズレが連鎖して、大きな断層(ハブ)を急激に動かす大地震につながるのです。

山で石ころを見ながら、どの石ころが将来土砂崩れの原因になるかを予測するのは不可能です。
同じように、地震もどの断層がいつズレて巨大地震につながっていくのかを測定するのは難しいでしょう。
地震予知は、そういった面でも不可能だと思われます。

サッカー戦争

戦争もある日突然、何気ないきっかけで勃発することがあります。
1969年7月14日から7月19日にかけて、南米エルサルバドルとホンジュラスとの間で戦争があったのですが
このきっかけはサッカーだったと言われています。

1970年のFIFAワールドカップの予選大会で、両国が対戦したのですが、
エルサルバドルの女性サポーターが敗戦を機に自殺してしまいました。
それが引き金になって、次の試合でサポーターが暴徒化し、ホンジュラスサポーターが殺されてしまいました。
これが燃え上がって両国の国交が断絶。
戦争への道へ進んでしまいました。

そもそも、二国間に摩擦があって臨界点に近い状態にあったのですが、
不運にもその時期にサッカーの試合が重なってしまったため戦争のきっかけになってしまったんですね。
もし、サッカーの試合がなくても何かのきっかけで戦争が起こってたかもしれません。
でも、その時は、誰も戦争のきっかけなんて予想できなかったでしょう

いつ何が起こるかわからない

世界は安定した形を保ってるように見えて、実は小さな変化が絶えず起こっています。
その中では、臨界状態が近いものもあるでしょう。

南海トラフ地震は今後30年のうちにあるとされていますが、それは臨界点が近いことがわかってるからですね。
でも、世の中には臨界点が近くても、目に見えないことはたくさんあります。
人の怒りなんかは、そうですね。
普段はへらへらしてる人でも、怒りが蓄積されて限界に近いことがあるかもしれません。
ある日突然キレて暴れだす人がいますが、きっとそういう状態だったのかもしれないですね。

コロナウイルスもそうです。
そもそも中国は、衛生状態が良くなく、さらに様々な動物を食べる文化をもった「臨界状態」でした。
たまたま新型コロナウイルスが発生したんですが、どんなウイルスが発生してもおかしくない状態にあったのでしょう。
中国の武漢と言う中心街(ハブ)で起こってしまったため、すぐに他のハブへと移ってしまいあっという間に拡散してしまいました。
ニューヨークで深刻な状態なのも、ニューヨークが世界中の人が集まるハブなので、流行りやすかったのでしょう。

このように、世界ではある日突然何かが起こったりします。
あるときはリーマンショックのような経済的な打撃。
あるときは、東日本大震災のような地震、
あるときは、今回のコロナウイルスの蔓延。

ただ、それは必ずしも悪いことばかりではありません。
ハブからハブへ連動する社会では、良いこともハブからハブへ伝わっていきます。
ツイッターでふとした発言が、インフルエンサーに拾われて、拡散されていったり。
久しぶりに会った知り合いに誘われて、パーティに参加したら、有名人を紹介されたり。
まぁ、まれな確率ですが、僕たちが生きているこの社会はフラクタル現象なので、可能性はゼロではありませんね。

良くも悪くも、この世界はそういう仕組みになっています。
なので、いつでも災害から逃げられるようにしておくことと、
いつでもチャンスをつかめるようにしておくことをお勧めします。

特に、自ら進んでハブへ飛び込んで発信していく人は、
チャンスをつかめる確率が上がるでしょう!

参考
「読まなくていい本」の読書案内 橘玲

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