Dyson空気清浄ファンヒーターの構想設計を紐解いてみた

我が家にDyson Pure Hot+Coolがやって来ました。
ダイソン社の有名な「羽根のない扇風機」に空気清浄の機能と温風の機能が追加された製品になります。以前から気になっていた製品だったのですが、年末セールということで、ついに買ってしまいました。

図1

今回はこちらの製品の中身をTech Structureで整理してみたいと思います。ダイソンの考える構想設計を一緒に紐解いていきましょう。

羽根のない扇風機(基本機能「Cool」)

まずは、ベースとなっている「羽根のない扇風機」のTech Structureです。こちらは、Dyson Pure Hot+Coolでは基本機能「Cool」として位置付けられているようです。

図2

羽根のない扇風機の部位は、「土台部」と「リング部」に分かれます。
「土台部」の役割は空気を取り込むことです。これは、「吸気口」が空気の入口となり、「モーター」と「羽根」が空気を吸い込むことで実現されています。羽根のない扇風機と言われていますが、実際はダイソンの製品にも他の扇風機と同様、羽根は存在しています。ただし、それが目に見えない場所にあるという訳です。
また、「リング部」は狭い隙間から風を高速で送り出すという役割を果たしています。これは、「流路」が空気圧を高め、狭い「開口部(スリット)」が空気を送り出すことで実現されています。狭い隙間から風を高速で送り出すと、周囲の空気を巻き込むことができるため、たくさんの風を送ることが可能となっています。これは、ダイソンの開発した「Air Multiplierテクノロジー」と呼ばれるもので、羽根のない扇風機は、こちらを活用したベースの製品と言えるでしょう。

空気清浄機能「Pure」

それでは次に、上記に追加された空気清浄の機能について紐解いていきましょう。

清浄な空気をつくるため、空気を取り込む「土台部」にはフィルターが追加されています。具体的には、花粉やPM2.5などの微粒子を捕らえる「グラスHEPAフィルター」と、ニオイの元となる有害なガスを捕らえる「活性炭フィルター」が用いられています。また、空気の状態を知らせるため、空気の状態を表示する「ディスプレイ」と微粒子・有害ガスを検知する「センサー」がフィルターと一緒に搭載されています。

図3

温風機能「Hot」

もう一つのメインの追加機能が温風の機能です。部屋を暖めるため、送り出す空気を暖めるといったことができるようになっています。

これは、「リング部」の中に「セラミックプレート」を設けることで実現されています。すなわち、「セラミックプレート本体」と「電力機構」により抵抗熱を発生させることで、送り出す空気を暖めているのです。また、設定温度を保つためには、過度な電流を流さないような仕組みも「電力機構」の中に組み込まれています。

図4

まとめ

さて、これまでの内容をまとめてみると、下図のようになります。

図5

元々は「たくさんの風を送る」という製品だったものが、基本機能「Cool」に空気清浄「Pure」と温風「Hot」といった2つの機能を追加することで、「たくさんのきれいな暖かい風を送る」という製品に進化しました。

私が興味深いと感じたのは、この製品で目標とされていることが、従来の性能を向上させることではなく、従来は解決できなかった要求に新しく応えることである、といった点です。今回の整理をしてみて、ダイソン社は、元々あった機能を活かしつつ、そこに付加価値を与える方法を色々と検討していることが分かりました。また、実現したい要求が明確化されているため、要求の解決方法や開発すべき技術・部品構成も明確になっています。これらは製品開発やマーケティングの事例としても参考になるのではないでしょうか。

以上のように、今回はダイソンのDyson Pure Hot+Coolという製品について、その構想設計を紐解いてみました。実際の製品には、今回紹介したもの以外にも、専用アプリによる管理、首振り、後方への空気排出、などの機能も存在しています。ご興味あれば、皆さんもTech Structureを活用しながら、これらの詳細を紐解き、どのような要求を解決したいのか、なぜその部品が必要なのか、などを明らかにしてみてください。きっと新しい発見が生まれると思います。

Co-cSでは、Tech Structureの考え方を応用しつつ、技術動向の調査・分析や企業による製品開発のベンチマークなどを行った事例が多数あります。Tech Structureや上記事例の詳細にご興味のある方は、ぜひお問い合わせください。


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