ラッパー物語-GARDEN-
この物語はフィクションです。登場する人物、団体名は実在の物とは関係ありません。
第1話 起きる
ブーン、ブーン
マナーモードの携帯が板張りの床の上で小刻みに震えている。
二日酔いの彼はまだ起きる気配は無く、横で一緒に寝ていた裸の彼女がこの携帯の鳴り止まない着信に気づき彼を起こしていた。
「さっきからずっと鳴ってるよ。」
「わかった。」
だらしない声で短い会話をして彼が薄くその目を開けた。
時間はもう夕方の16時を回った頃だ。
彼女から携帯を受け取った彼はおもむろに不在着信とメールチャットを既読すると、灰皿にある吸いかけの葉巻に火をつけた。
1 roomの部屋に白い煙とスモーキーな匂いが漂う。
深い呼吸と供に2,3口吸い込むと、彼女にその葉巻を差し出した。「吸う?」「吸わない。」
また短い会話を済ませたら葉巻を灰皿に置き、彼女にキスをしてまたベッドに横たわった。
どうやらもう一発カマスらしい。
事を済ませ2人で狭いシャワールームに入って行った。1 roomマンションの狭いユニットバスはすぐに水浸しになる。熱いシャワーを浴びてようやく目を覚ました彼は彼女とお揃いのバスローブを羽織り、さっきの吸いかけの葉巻をまた吸いながらようやく電話を始めた。どうやら今日の晩飯の話らしい。
結局良く行くいきつけの店2,3店舗に電話をかけると、すぐに入れる店に決める。
どこも歩いていける距離だ。
今日の店が決まり服を着替えて外に出る準備が出来た頃、今度はマンションの呼び出し音が鳴った。
仲間が下に到着したらしい。テーブルの上に置いてあったタバコを数本手にとったら彼女と一緒に部屋を出た。
「うぃーす」「おつかれー」対して疲れてないがコレが彼らの挨拶だ。慣れた調子で握手をして、他愛ない会話に花を咲かせながら飯屋に向かって歩いている。外はすっかり暗くなり街にはネオンの街頭が灯り出していた。
飯屋に着くと、いつもの調子で店員がキープしている焼酎のボトルと水割りのセットを持って来た。それぞれがそれぞれの食べたいモノを注文し、料理を待ちながら届いた焼酎で水割りを作り宴を始めた。ダラダラと焼酎を呑みながら料理をつまんでいると、また1人、また1人とお馴染みの挨拶をしながら仲間が入ってくる。
「うぃーす」「おつかれーす」
誰1人として疲れてない。疲れてなくてもコレが彼らの挨拶らしい。
食事を済ませると、店を出て彼らはまた歩き出した。
薄暗い路地裏で家を出る時に持ち出したタバコを吸いながら軽く散歩をした。
ちょうどタバコを吸い終わる頃、彼らはネオンの眩しい表通りに出た。
見慣れた景色。街の角には馴染みの客引きや、飲み屋の女の子が立って手を振っている。
前のタクシーをあおる車のクラクション、爆音のベース音を響かせながらゆっくり走るキャデラックに、見廻り中のパトカー。この通りは賑やかだ。
夜の10時、この街は佳境を迎えていた。
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