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キャンセルカルチャーは果たして正しいことなのか



SNSが持つ力

今では当たり前となったSNS。インスタグラムやX(旧Twitter)、TikTokなど、多くの人が日常的にこれらのプラットフォームに触れている。これらのSNSは、多くの人が気軽に自分の意見を世界に広めることができ、さまざまな情報へ容易にアクセスできるなど、多大な恩恵をもたらしている。

一方で、SNSは新たな脅威や恐怖も生み出した。不確かな情報が瞬く間に拡散され、間違った判断や行動を引き起こすことも少なくない。また、特定の人物が一部の思想や考えに基づき攻撃される現象も目立つようになった。現在、ニュースで話題になっている中居氏とフジテレビの問題も、SNS時代特有の現象だといえる。こうした問題の中で、国外で注目されるのが「キャンセルカルチャー」というムーブメントだ。日本では、「炎上」という言葉が一番近い。


キャンセルカルチャーとは

キャンセルカルチャーは、企業に対する不買運動と類似点があるが、大きく異なるのはターゲットが「個人」であること。特に、セレブや社会的に影響力を持つ人物がその対象となり、主にSNS上で展開される現象である。

a way of behaving in a society or group, especially on social media, in which it is common to completely reject and stopsupporting someone because they have said or done something that offends you:

Cambridge Dictionary

具体的には、セレブや有名人の過去の発言や行動が問題視されると、その人物が出演する番組の降板やスポンサー契約の解除などに至り、結果的にキャリアや社会的地位が失墜するケースが挙げられる。


キャンセルカルチャーの問題点

キャンセルカルチャーにはいくつかの問題がある。第一に、SNS上の情報は真偽の確認が難しいことが多いため、不確かな情報に基づいて行動が起こるリスクがあるということ。この結果、本来キャンセルされるべきでない人物が不当に攻撃される場合がある。第二に、キャンセルカルチャーが広がることで、社会全体に「ミスを絶対に許してはいけない」という風潮が生まれる可能性がある。人は誰しも失敗を通して成長するものだが、些細なミスがキャンセルの対象となることで、人々が失敗を恐れ、挑戦を避けるようになるかもしれない。

さらに、問題となるのは「キャンセルカルチャーにただ参加して盛り上がりたいだけの人々」の存在だ。本来、キャンセルカルチャーは社会の不正や不適切な行動を正すための行動であるはずだが、一部の人々はそれを単なる「エンターテインメント」として捉え、深く考えずにムーブメントに参加することがある。彼らは対象の人物が本当に非難されるべきなのかを考えず、キャンセル運動そのものを楽しむために拡散や批判に加担しているのかもしれない。


キャンセルカルチャーとうまく共存するためには

キャンセルカルチャーは、対象の人物のキャリアや社会的地位を根底から揺るがす非常に強力な現象である。そのため、この動きに対処するには、冷静な視点と慎重な行動が求められる。

例えば、SNS上で誰かをキャンセルしようとする動きを見かけたとき、感情的に巻き込まれるのではなく、まず情報の真偽を確認することが大切だ。また、その情報が誤っている可能性や、行動の背景にどのような事情があるのかを考える余地を持つべきである。

さらに、自分がそのムーブメントに参加する理由を問い直すことも重要である。「正義感」に基づいて行動しているのか、それとも単なる「流行」に乗っているだけなのかを考えることで、冷静な判断を下せるようになる。


私たちが認識すべきこと

キャンセルカルチャーは、SNS時代特有の現象であり、その強力な影響力は社会の不正を正す可能性を秘めている。しかし一方で、その扱い方を誤ると、不確かな情報による不当な攻撃や、単なる「盛り上がり」を目的とした無責任な参加が被害を拡大させる危険性もある。これにより、社会全体でミスを許さない風潮が広がることや、他人の失敗を糾弾する空気が根付くリスクも無視できない。

キャンセルする前に、私たち一人ひとりが情報を精査し、冷静に対応する姿勢が必要だ。また、正義感に基づく行動であっても、それが本当に社会のためになるのかを問い直すことも必要である。

失敗やミスは人が成長するための大切なプロセスだ。社会全体が互いの失敗から学び合い、寛容であることを目指すこともできる。キャンセルカルチャーと向き合う中で、個々の行動が未来の社会をより良くする可能性を秘めていることを忘れてはならない。

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