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三略講釈【上略-1】

皆さまこんばんは、軍師の弓削彼方です。
今回から本格的な講釈を始めていきます。
三略は大きく上略・中略・下略の三篇に分かれていますので、まずは上略の講釈から始めていきましょう。

本文現代語訳

「君主や将軍のような立場にある者がまずやるべきことは、英雄と呼ばれるような優秀な人材の信頼を得て、手柄を立てた者には褒賞を与えて褒め、自分の方針を全員に知って貰う事である。そうやって自分と人々の好きなものが一致すれば、人々は協力するだろうから成し得ない事業などなく、自分と人々の憎むべき敵が一致すれば、人々は自分を信頼してくれるのである。
 国が安定して統治され一族が安心して暮らせるのは、人々の信頼を得られたからである。国が滅び一族が断絶してしまうのは、人々の信頼を失ったからである。
 世に生まれた者は皆が志を持ち、それを達成したいと願うのである」

解説

この文章で一番伝えたいことは「人心を得ることの重要性」です。
特に将来英雄と呼ばれるような人材の信頼を得ること、転じてそう言う人物が力を貸してくれるようにすることが大事だと言っています。
それでは人心を得るためにはどうすれば良いか?
それは人々と心を同じくすることです。
自分の方針(国の方針)を広く知って貰い、「こういう風にしたい!こういう風にはなりたくない!」と言う考えを民衆と同じくすれば、自然と人心は得られると言っています。
そうして民衆と意見を一致させれば、国内は安定し皆が安心して暮らせるようになります。
最後の一文の「世に生まれた~願うのである」と言うのは、人はそれぞれに願うことや思うことがあるのだから、それを汲み取って向かう所を同じにすれば人心を得やすいということです。

北条早雲(戦国大名北条氏の初代)はこの一節を聞いただけで、「三略の真髄を得た!」と言ったそうです。
それぐらいこの最初の一節には、三略の基本思想が詰め込められていると言えるでしょう。
皆さまには、ぜひこの一節だけでも覚えて頂ければと思います。

今回の講釈はここまでとなります。
それではまた、次回お会い致しましょう。

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