三略講釈【上略-8】
皆さまこんばんは、軍師の弓削彼方です。
今回も三略を読み進めていきましょう。
本文現代語訳
「世の中に自分の先祖を大事にする者は多いが、民衆を大切にする者は少ない。先祖を大事に扱うのは親族としての愛情があるからであり、民衆を大切にするのは君主としての務めだからである。
民衆を大切にする君主は、民衆に農業をやる事を推奨し、田植えの時期などは民衆の仕事を邪魔しないようにする。税金を出来るだけ軽くしてやり、民衆が財産を蓄えられるように配慮してやる。公共事業の労働力として民衆を集めるが、その仕事もなるべく負担にならないようにする。そうすると自然と国全体が豊かになり、各々の家庭も家族の団らんを楽しめるようになる。
そうした上で優秀な人材を選んで、その人物に民衆の管理を任せるのである。ここで言う優秀な人材とは、英雄と呼ばれるような人達のことである。だから『英雄を漏らさず採用して働かせれば、敵国は手が出せなくなる』と言われるのである。
例えれば英雄とは国と言う樹の幹であり、民衆とは根である。良い幹を得て、根の働きを押さえれば、国の言う樹の政治は正しく行われるようになり、君主を怨む者もいなくなるのである」
解説
今回の要点は、君主は民衆を思いやって政治を行うと言うことと、英雄と呼ばれるような優秀な人材を登用せよという二つです。
民衆を思いやるとは、ただ心でそう思うだけではなく、実際に民衆の生活が良くなるような政治を行うことです。
税金の負担を減らすことで民衆はいくらか蓄えを作れます。
また公共事業での役務を減らしてやれば、農作業など本来の仕事に励む時間が増え、結果として生産力が上がりさらに民衆の蓄えが増えます。
民衆の蓄えが増えて生活の不安が減れば、君主に協力的になります。
その上で、同じく民衆のことを思いやり君主の補佐をしてくれる優秀な人材を得れば、特別なことをしなくても国全体が富み、国力が上がれば軍備も充実して君主自身も民衆も安全を得ることができます。
このような訳で、君主が民衆を思いやることを基本とし、人材登用にも積極的であれば国は安泰であると言うことになります。
内政の基本は「民衆のためにやる」です。
税金や役務の話は例えであり、このことについてのみ考えればよいと言うわけではありません。
細かな配慮を忘れずに大勢のために政治を行うと言うのは、大変な苦労が伴うのです。
今回の講釈はここまでです。
それではまた、次回お会い致しましょう。
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