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三略講釈【中略-8】

皆さまこんばんは、軍師の弓削彼方です。
この節も長めの内容になりますが、しっかり学んでいきましょう。

本文現代語訳

「空高く飛ぶ鳥を撃ち落とすほどの良い弓でも、役目を終えれば蔵に仕舞われてしまう。それと同じく、敵国が滅びてしまえば、謀りごとの得意な者でも亡き者にされる。
 亡き者にされると言っても、殺されてしまうわけではない。その者の権力を押さえ、与えた軍権を取り上げると言う意味である。その為には、朝廷に迎えて高い位を与え、その功績を称えなければならない。そして豊かな土地を領地として与え、一族の者を裕福にしてやり、美女や珍しい宝を贈って満足させるのである。
 そもそも将軍と兵士が一度団結してしまえば、それを引き離すのは簡単なことではない。同じく、軍権も一度与えたならば、簡単にそれを取り上げるのは難しい。軍が戦いを終えて帰還して、その編制を解く時が、国の存亡が決まるほど大事な瞬間なのである。だから与えた軍権を弱めるために、別の高い位を与え、その軍権を取り上げるために領地を与えるのである。これが覇者たる者の策略なのである。
 だから覇者とはどうあるべきかと言う議論は、非常に複雑な話になる。国家を運営し、英雄を登用する術は、この中略に書かれている。だから君主たる者は、この中略の内容を秘密にするのである」

解説

最初の部分は家臣として心に留めておくべきことです。
その能力に応じて必要な分だけ働き、その役目を終えたら任を解かれる。
これは自然なことであり、自分の能力が低いとか仕事を任せて貰えなくなったとか嘆くようなことではなく、また必要になれば声が掛かるのでその時を待つということです。
以下は君主が気を付けるべきことで、功績を称え褒美を与えて家臣の働きに報いるのが重要であると述べられています。
特に将軍に関しては優秀であるほど兵士達の信頼も厚く、粗末に扱えば多くの者から反感を買うので、その働きに見合う十分な名誉と褒美を与え、軍権を取り戻さなければならないと述べられています。
そして、このような細かな配慮こそが覇者としての策略であると書かれています。

今回の講釈は以上となります。
中略編はこれで終わり、次回からは下略編に入ります。
それではまた、次回お会い致しましょう。

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