尉繚子講釈【講釈-2】
皆さまこんばんは、軍師の弓削彼方です。
今回の話は前回の続きとなります。
本文現代語訳
「尉繚子は『天文占いの考えで言えば、背水の陣を敷けばそこが絶地となり、坂に向かって陣を敷けば廃軍となって、いずれも敗北すると言われています。しかし武王が紂王を討った時は、済水を背にし、山坂に向かって陣を敷き、二万二千五百の兵で紂王の大軍を打ち破り、殷を滅ぼしました。この時に紂王は天文占いに倣って布陣しましたが、勝利を得ませんでした。楚の将軍の公子心は斉軍と戦いましたが、この時に彗星が現れ、柄の部分は斉の方に在りました。天文占いによれば、柄のある方が勝つことになっているので、戦うべきではないと言われています。しかし公子心は、『彗星が勝利の行方を知るはずがない。箒を持って戦うならば、逆さまに以って柄で相手を叩く方が勝つはずである』と言いました。翌日、実際に斉軍と戦い、これを打ち破りました。黄帝も、神や鬼に祈る前に自分の智恵を働かせよと言っています。これを天文占いの結果と言う者も居ますが、実際には人事を尽くすことが重要です』と恵王に説明した。
解説
占いやまじないなどは意味がないと言う話の具体例になっています。
前者は殷の紂王が占いの結果に基づいて布陣しても敗北したという、占いに頼ったことによる失敗例です。
後者は当時は信じられていた迷信などを信じずに勝利を得た例です。
特に後者の公子心の話は、占いや迷信などは解釈のしようで自分に都合のよい結果を導き出せる頼りのないものだから、そんなものを信じて決断すべきではないと教えてくれています。
最後に黄帝の話に戻り、黄帝も自分の智恵を働かせること、つまり自分が出来ることをやりきる人事を尽くすことが大事だと言っていると締めくくっています。
前回説明したように、尉繚子の考え方の基本は「人事を尽くす」です。
確かに世の中には、人の力ではどうにもできないことがいくつかあります。
だからこそ自分でやれること、人の力でどうにかなることは全部やった上で、絶好の機会が訪れるのと待つのです。
これを実践できる者が、君主や将軍として成功を収めることができます。
今回はここまでです。
それではまた、次回お会い致しましょう。
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