三略講釈【中略-2】
皆さまこんばんは、軍師の弓削彼方です。
中略編の講釈を進めていきたいと思います。
今回の話は、前回の続きを考えると理解しやすいと思います。
本文現代語訳
「三王の時代には、民衆を統制するために道徳を柱にした。それで人心を得て、人々の志をまとめ、法律を作って乱世に備えた。天下の諸侯が集まって、王の役目を尊重し従うと誓った。だから軍事の備えは万全にしてあったが、実際に戦争が起こる心配はなかった。君主は臣下を信頼しており、臣下も君主のことを信頼していた。国は安定していて君主に心配事は無く、臣下も自分の役目を終えたら潔く引退した。だからこの時代の臣下達も、率直に働いて国の害になることなどなかった。
しかし覇者の時代になると、部下を扱うのに権謀を用いるようになった。部下と信頼関係を結んでおきながら、部下を働かせる時は恩賞を与えるようにしたのである。その結果、信頼が薄れると部下達は君主から離れて行き、恩賞が無ければ命令に従わなくなったのである」
解説
先に出てきた三皇五帝の時代には、君主の人徳の高さにより世の秩序は保たれていました。
同時に臣下と民衆も謙虚で、お互いを思いやる気持ちを持っていました。
しかし時代が下って三王(夏・殷・周)の時代になると君主の人徳は先人より劣り、民衆の民度も低下してしまいました。
そこで敢えて道徳を説いて民衆を教化するようになったのです。
そのおかげで家臣と民衆は各々の立場を弁えて自分の仕事に励み、世の中は問題なく治まっていました。
さらに時代が進んで覇者の時代になると、君主の人徳は衰え民衆の道徳も失われてしまいます。
そこで君主は家臣や民衆との関係を信頼や義理と言ったもので縛り、その一方で褒賞を与えることで実際に働かせるようになりました。
君主・家臣・民衆が一致して国を良くしようと思わなくなり、それぞれが自分の利益を求めるようになってしまった結果です。
人徳や道徳が十分であれば自然と世の中は治まりますが、それが失われた場合は敢えて道徳を説き、それでも足りなければ利害で人を動かすしかなくなります。
家臣や民衆が自分に利益があるかどうかで動くようになれば、国の事業は進まず国内は不安定になります。
だからこそ人徳と道徳が重要であるということです。
今回の講釈はここまでと致しましょう。
それではまた、次回お会い致しましょう。
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