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三略講釈【下略-2】

皆さまこんばんは、軍師の弓削彼方です。
下略の講釈を続けていきます。
また長めの文章ですが、しっかりと読み解いていきましょう。

本文現代語訳

「賢人が政治を行う際には、体を使って働いて民衆に奉仕する。聖人が政治を行う際には、智恵を使って働いて民衆に奉仕する。体を使って奉仕すれば物事は順調に始められ、智恵を使って奉仕すれば最後まで成果を出すことが出来る。
 体で奉仕する場合には礼に則って行い、むやみに体を酷使すれば良いわけではない。智恵で奉仕する場合は楽に則って行い、むやみに精神をすり減らせばよいわけではない。節度を持って民衆に奉仕するのである。
 この場合の楽とは、音楽のことを指すのではない。人々が家族や一族の者と楽しむことを言う。人々が自分の仕事や自分の住む町を愛することを言う。人々が法令や道徳に喜んで従うことを言う。このようにして君主たる者は、民衆の楽を生み出して節度を守らせ、民衆の調和を損なわないようにする。そこで人徳がある君主は楽で民衆を楽しませるが、人徳のない君主は自分だけが楽しもうとする。民衆を楽しませる者は、その地位を長く保つことが出来る。自分だけが楽しもうとする者は、自分の身を亡ぼす」

解説

政治を行う時の基本は、自分の体と智恵を使って民衆のために奉仕することだと最初に述べられています。
ただし、むやみやたらに長時間働いて体を酷使したり、常にあれもこれもと考えて精神を疲弊させることが正しいやり方ではないとも書かれています。
ここでは「楽」に則って行うと書かれていますが、この「楽」とは楽しむという意味です。
民衆が政策の実施を楽しみ、法令が作られることを楽しむ
転じて喜んでそれらを受け入れるようにすることが大事だということです。
本文では直接触れられてはいませんが、民衆のために尽くした結果、君主自身もその生を楽しむことができることを忘れてはいけません。
もし自分だけが楽しい思いをしようとすると、贅沢をするために税金を重くし、自分の住む宮殿を作るために民衆に役務を課すことになり、そのようなことをすれば民衆の反感を買って自分の身を滅ぼすことになります。
無理をせずに自身のことを大切にしつつ、道理に則って民衆のために政治を行えば、君主自身も民衆も生きることを楽しめるということです。

今回の講釈は以上となります。
抽象的な表現が多くて戸惑うかもしれませんが、今はなんとなく理解するだけで十分です。
それではまた、次回お会い致しましょう。



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