三略講釈【上略-17】
皆さまこんばんは、軍師の弓削彼方です。
続きの講釈を進めてまいりましょう。
本文現代語訳
「そこで、『賢者の智謀、聖人の思慮、民衆の言葉、政治的な意向と、歴史的な国の興亡の原理については、将軍はよくよく耳を傾けなければいけない。将軍が兵士のことを、喉が渇いた者が水を切望するように必死に思ってやれば、兵士も将軍の策に従うであろう』と言われるのである。
将軍が諫言を拒むようであれば、英雄と呼ばれるほどの人材も逃げて行ってしまう。せっかく良い策を考えてもそれが取り入れられなければ、智謀に優れた策士は離反してしまう。良い事も悪い事も同列に扱ってしまえば、功績ある臣下達はやる気をなくしてしまう。独断で何でも進めてしまえば、下の者は自分の責任を上の者になすりつけようとする。自分の功績ばかりを誇るようになれば、部下達の手柄は小さく見えてしまう。陰口を信じるようなら、兵士の心は離れてしまう。私腹を肥やそうとすれば、部下達の悪事を禁止することができなくなる。欲情に溺れるようなことがあれば、兵士も淫らな行為をするようになる。
これら八項目の中で、一つでも将軍に当てはまることがあれば、兵士は服従しなくなる。二つ当てはまれば、軍内の規律は失われてしまう。三つ当てはまるようなら、部下達は逃げ去ってしまう。もし四つも当てはまるなら、その国の存続までも危うくなるのである」
解説
前回の話に続いて、今回も将軍たる者の心構えについてです。
最初の部分は人の意見に耳を傾けることの重要性を指し、国の興亡の原理とは物事の道理を知ることを言い、その上で将軍が兵士のことを思いやらなければならないと言うことを説いています。
兵士のことを思いやると言うことについては、「上略-14」の記事でも述べられた通りです。
そして諫言を拒む、他者の意見を取り入れない、善悪を混同する、独断専行が過ぎる、自分の功ばかりを誇る(自慢ばかりする)、陰口を信じる、私利私欲に走る、肉欲に溺れると言う八つの注意すべき項目を挙げ、これらの中で至らない点があった場合の不利益が述べられています。
こちらは本文の通りなので、理解しにくい部分はないと思います。
これら八項目の中で、一つでも至らぬ点があれば兵士は言うことを聞かなくなり、二つあれば規律が失われ、三つあれば兵士は逃亡し、四つ当てはまれば軍隊は機能しなくなり国の存続すら危うくなると書かれています。
人間である以上、ただの一つも至らぬ点が無いと言うのは不可能です。
しかし、将軍は国家の運命を左右する重要な立場であるからこそ、これぐらい気を引き締めなければならないと言うことです。
今回の講釈はここまでです。
それではまた、次回お会い致しましょう。
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