三略講釈【上略-22】
皆さまこんばんは、軍師の弓削彼方です。
上略編の解説も間もなく終わりますので、もうひと踏ん張りお願いします。
本文現代語訳
「軍讖には、『世の中には悪事を企んで、県の役人を押しのけて権力を奪う者が居る。そして何かをするたびに賄賂を要求し、法律を自分の都合がいいように解釈して好き勝手をする。このような者は君主の身に危険を及ぼす。これを国賊と言うのである』と書かれている。
軍讖の中には『役人が多いわりに民衆が少なく、尊い者と卑しい者の区別がはっきりしない。強者と弱者がお互いに争っているのに、それを止めようとする者が居ない。こういう状態が君主の周りにまで及べば、その害は国全体に及ぶ』と書かれている。
さらに軍讖には、『善行を良い事として推奨せず、悪行を悪い事として排除しない。これでは賢者は隠れてしまい、結局愚か者が官位を得て、その国全体に害が及ぶ』と書かれている。
軍讖には他にも、『根や幹よりも枝や葉の方が強大で、徒党を組んだ者達の方が勢いを強くしてしまう。卑しい者が尊敬される者より力をふるい、時間が経つとますますその力が強くなってしまう。上の者がこのような状態を無くそうとしなければ、その国は危険な目に遭うであろう』と書かれている」
解説
前回の話と通ずるところもありますが、周りに悪い影響を与える者を放置すると、どのような害悪があるかと言う話です。
地方で貴族や有力者が権力を奪うと、賄賂のような悪い習慣が蔓延し、中央の目が届かないことをいいことに法律から何まで自分の都合のいいように解釈して勝手なことをします。
このようになるといずれ君主の権力を奪おうとするので、国賊であると書かれています。
民衆を監督する役人ばかりが多くて民衆が少ない、身分の上下の分別がついていないと言うあべこべな状態で、さらに人々が争っているのに誰も止めようとしない。
このような不安定な状態が君主の身近にも迫れば、それはすでに国全体がそのような悪い状態になっており、国を滅ぼしかねないと言っています。
三つ目は至極当たり前の話ですね。
善行を褒めず悪行を放置すれば、皆が自分だけの利益だけを優先して悪行に手を染め、僅かに残ったまともな人物もいずれ離れてしまいます。
そんな国が長く持つはずがありません。
最後はその人物の良し悪しではなく仲間が多いか少ないかで物事が決まり、仲間の数で発言力や役職が与えられてしまう。
しかも君主がそのことを知りながら何も手を打たないならば、政治においても必要性や民衆のためになるかの内容ではなく、仲間が気に入るか気に入らないか決まり、その国はいよいよ危険だと言っています。
前回お話した周りに悪影響を与える者を一人ぐらいと言って放置しておくと、取り返しのつかない害悪が国を襲います。
このようなことにならないよう、君主は日頃から気を配らなければならないのです。
本日の講釈はここまでとなります。
それではまた、次回お会い致しましょう。
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