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戦費と長期戦(後編)

皆さまこんばんは、弓削彼方です。
今回は長期戦の弊害で国力が落ちた時に、どのような事態を招いてしまうかをお話して行こうと思います。

少し長い話になりますので、要点を掴むためにも動画も併せて見ることをお勧めします。


それでは原文から見て行きましょう。

原文
「夫れ兵を鈍らせ鋭を挫き、力を尽くし貨を尽くすときは、則ち諸侯、其の弊に乗じて起こる。智者ありと雖も、其の後を善くすること能わず。
 故に兵は拙速なるを聞くも、未だ巧久を覩ざるなり。夫れ兵を久しくして国の利する者は、未だこれ有らざるなり。
 故に尽く用兵の害を知らざる者は、則ち尽く用兵の利を知ること能わざるなり」

戦争を始めれば戦費がかさみ、軍は遠征で徐々に消耗し、そうやって少しずつ国力が衰えていくと言う話を前編でしました。
その続きで、そうやって国力が尽きてしまうと、周りの国が弱った自国を狙って戦争を仕掛けてきます
すでに国力が尽きてしまっている状態では、例えどれほどの智者が味方に居ても、これを防ぐことは不可能であると述べられています。

では、どうしたらよいのか?
戦争は多少まずくても素早くやると言うのは聞くが、長引いて上手く行くと言うのは聞いたことがないと述べられています。
この多少まずくともとは、慌ててやると言うことではなく、味方の準備が万全ではなくても、敵に乗じる隙があるならば素早くその隙を突いた方が良いと言うことです。

戦争が長引いたおかげで、余分に利益が出るということはありません。
長期戦の弊害を理解していなければ、戦争に勝った後の利益を十分に引き出すことはできないのです。
だから戦費と長期戦の弊害と言うものを考えた上で、それでも戦争をするべきかどうかを考えなければいけないのです。
この戦費と長期戦の弊害については、すでに説明した戦争前に考えるべき五事七計と同じように、慎重に考えを巡らせなければいけません。

慎重に考えた結果、もし戦争をやると決めたのならば、素早く行動して可能な限り早く戦争を終わらせる。
そうしなければ国力が衰え、周りの国に付け込まれることになります。
止むを得ず長期戦が避けられない場合でも、長期戦で失うものと戦争に勝利した後に得られる利益のバランスを考えなければならない。
そうでなければ名目上は戦争に勝利しても、実際は疲弊しただけで何も得られなかったと言う結果になります。


以上が戦費と長期戦による弊害の話と、その長期戦により国力が衰えた場合に起きる事態についての解説となります。
物事を始める前には、十分に考えを巡らす必要があると言うことを理解して頂ければ幸いです。
それではまた、次回の講義でお会い致しましょう。

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