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三略講釈【下略-11】

皆さまこんばんは、軍師の弓削彼方です。
今回が最後の講釈になります。

本文現代語訳

「賢明な臣下が政治の中枢に居れば、腹黒い臣下は外に追い出される。腹黒い臣下が政治の中枢に居れば、賢明な臣下は打ち倒されてしまう。賢明な臣下と腹黒い臣下の立場が入れ替わってしまうと、混乱は国中に伝わってしまう。さらに大臣が君主を疑うようになれば、腹黒い臣下が徒党と組むようになる。臣下が君主の権限を侵すようになれば、上下の秩序が曖昧になる。君主が臣下に権限を貸し与えれば、上下の秩序が失われてしまう。
 賢人を傷つけた者は、その禍を三代に渡って受ける。賢人の存在を隠そうとする者は、その身に害を受ける。賢人を嫉む者は、自分の名声を上げることができない。賢人を推挙する者は、その幸福は子孫にまで続く。だから君主は賢人を積極的に推挙して、世間から称賛されて名声を得るのである。
 一つの利益のために百の害悪が生じれば、民衆はその町から逃げ去る。一つの利益のために一万の害悪が生じれば、その国は滅亡してしまう。一つの害悪を取り除いて百の利益が生じれば、人々は君主を慕うようになる。一つの害悪を取り除いて一万の利益が生じれば、政治が乱れることはないのである」

解説

賢明な者と腹黒い者の取り扱いについて書かれています。
腹黒い者や邪な者を退ける一番の方法は、賢明で正実な者を要職に就けることです。
そうすれば腹黒い者や邪な者はいたたまれなくなり、自然と淘汰されます。
この逆をやってしまうと賢明で誠実な者が粗末に扱われ、貴重な人材を失うことになります。
その結果、腹黒い者や邪な者が力を付けて君主の権力を脅かすようになれば、上下の規律は乱れて国全体が乱れてしまいます。
中段では賢人の取り扱いについて述べられています。
賢人を粗末に扱えば害を受け、大切に扱えば幸福になると書かれていますが、この表現は比喩と考えてもよいでしょう。
賢人の智恵を活用すれば国にも民衆にも利益があり、例え賢人が居てもその智恵を活かせなければ意味がないということです。
ましてや、それと反対のことをすれば失敗することの方が多いでしょう。
最後の話は、一つの決断が全体に影響して国の興亡にまで繋がるので、慎重に考えて行動しなさいと言う戒めの言葉です。
目先の利益に惑わされるのではなく全体の利益を考え、目の前の悪行を一つずつでも取り除いていくことで、民衆が安心して暮らせる国になるという教えです。

ここまでが今回の解説となります。
そして今回で、三略の上略・中略・下略の解説が終わりました。
次回の記事でまとめをして、三略講釈を終えたいと思います。
それではまた、次回お会い致しましょう。

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