三略講釈【上略-3】
皆さまこんばんは、軍師の弓削彼方です。
それでは講釈を進めていきましょう。
本文現代語訳
「世の中では『剛強になりたいと貪欲に願う者が殆どで、そう願わない者は滅多にいないが、柔弱である事を大切にしようとする者は極めて少ない』と言われている。
しかし柔弱である事を大切にするならば、無事に一生を過ごすことができるだろう。聖人と呼ばれる者は、この微妙な加減を熟知しており、その智恵で物事に対処するのである。
この柔弱と言うものは変化自在なので、大きく広げれば世界の隅々まで行き渡り、小さくまとめようとすれば懐にしまえるほど小さくなるのである。これほど小さければしまうための部屋は必要なく、守るために城を建てる必要もない。ただ自分の胸の中に秘めておけば、敵を心服させることができるのである」
解説
今回は少し分かりづらい抽象的な話になっています。
前の話しから続いている内容で、分かりやすい剛強と言う力を求める人は多いのに、分かりにくい柔弱と言う力を求める人は少ないと言っています。
剛強は相手を力で抑えて自分の考えを通すものですが、これだけで全ての事態に対処できるわけではありません。
一見受け手に回って弱く見える柔弱は、時には相手の力を受け流し、またある時には急速に拡大して相手の力を飲み込みます。
本文ではこれを「大きく広げれば世界の隅まで、小さくすれば懐にしまえるほど」と言う形で表現しています。
この柔弱と言う力を使いこなすには、単なる力押しになりがちな剛強とは違い智恵が必要なのです。
ここではそのことを伝えようとしています。
ある意味強さとは力だけではなく、智恵も必要だと伝えている部分だと言えるでしょう。
今回の講釈はここまでとなります。
抽象的で理解しづらい部分ですので、よく分からない場合は三略を一通り読んだ後で戻ってくると理解しやすいかもしれません。
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