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湯気 川柳村

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湯気の川柳村
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2020年6月の記事一覧

思いだす ああこんなにも 降るんだと

季節の印象は曖昧だ。 実際の梅雨の雨の日、晴れ間からのザーザー降りの外を眺めて、 梅雨ってこうだったよなとやっと実感する。 そうやって少し経てば、またぼんやりとしていく。

梅ほじる 降り出した雨 梅雨入りか

昨日取ってきた青梅を漬ける準備。 青梅をきれいに洗い、水気をとり、竹串でヘタをとる。すぐ終わると思って始めたが、ヘタをくいっときれいに取るにもコツがいる。一粒ずつやっていく。いつの間にやら夢中になる。 指先の青梅に一点集中していると、窓を打つ雨音が聞こえ始める。 先ほどお天気アプリの速報で、梅雨入りを告げていたっけ。

至福かな 湯にほぐされて 唸りでる

湯船に沈んだ時、全身が解きほぐされて、身体の根底から唸り声が出る。 あれは一体、何者の声なんだろう。 お風呂でしか聞けない、己の声もあるよね。

悩みごと 蒸籠に聞けば 蒸しパンのまる

台所でタイマーを眺め、蒸しあがるのを待っていると、ふと、どうしたものかと悩みごとが頭をもたげる。思考しているうちに、タイマーが鳴り、蒸籠をあけると湯気の中に蒸しパンが、丸く丸く膨らんでいる。完璧な丸。答えはここにあったのか。

ニュース見て 夜中に響く カレーせん

カレーせんとは、カレー味のスナックせんべい。かじるとバリッとした音がよく響く。 緊急事態宣言が解除されたニュースを見ながら、無性に食べたくなり、かじる。せんべいの音が室内に虚しく響いた。 虚しいなと思いつつ、今、せんべいをかじり、ここに生きているのかと安堵感もしみじみと湧いた。