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煙姫

世界は滅んだらしい。テレビやネットは情報が飛び交い、そして何も言わなくなった。詳しくは知らない。私の町は寂れた港で、元々世界から置いてかれていた。

少し早く目が覚めて、ベランダに出た。まだ昇らない朝日が東の空を明るく染めている。手すりに体を預けて煙草を燻らす。
ゆっくり世界は終わっていく。ここに居てもそれが分かる。日が昇れば見えてしまう。

ぼうと煙を見ていると思い出す。
アイツのこと。
「待ってって」って言ったけど、今ごろ何処に居るんだろうか。

短くなった煙草を携帯灰皿に突っ込む。太陽が昇って、煙が染みて視界が滲む。世界に色がつく。そうだと良かった。

港は今日も氷漬けだった。しばらくずっと。地下の何とかの対流が止まったって。人類は人工冬眠で、私はたまに起き出して、煙草を吸っては退屈をすりつぶしている。

アイツは言った。この星を叩き起こしてくる、一発殴れば目が覚めるって。童話のような結末にはならないらしい。【続く】

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