語り尽くせぬ物語
星見塔の老婆が語りて曰く。
「賢王様の偉大さときたら!私の如き老いぼれがこの星見の職に居られるのも、貴方様が平原を大過なく渡っていらしたのも、賢王様の治世ゆえ。百年の戦乱を平定され、平和を齎された!凱旋でお見かけしたのが自慢でしてな、麗しきお顔だったこと!それからも治安には心を砕かれましてな、道には耳を欹て、街には目を凝らしておられるのです。
武だけにございませぬ。市には立ち寄られましたかな?あの活気!長生きするものでございますな!政の巧みさも、かの大王様の生まれ変わりと国中もっぱらの評判でございます。もっとも、私でさえ生まれておりませぬが!
……とはいえ、近頃は迷い込んだ獣が暴れているとか。我らを冥府と蔑む、かの国の狗だと噂は持ちきりでして。賢王様より命を受けし七十二柱の四半を退け、過半を欺いたと。噂に過ぎますぬが。旅のお方、気をつけなされ。かの獣は貴方様と同じごろの背丈、同じように剣を帯びて【続く】
読んでくださりありがとうございます。ぜひ感想をシェアしてください!