英語論文を”爆速”で読む
はじめに
近年、AI技術の急速な発展により、研究活動における論文作成や発表資料作成の効率が大きく向上しています。私自身も日常的にAIツールを活用していますが、研究者として避けては通れない「英語論文を読む」というプロセスについて、私の経験と知見を共有したいと思います。
論文の読み方の多様性
論文の読み方一つにしても、様々な人がいると思います。
下記に例をいくつかあげますが、どのアプローチも素晴らしいものだと思います。
内容の選び方
関連する論文を網羅的に読む「完璧主義者」型
重要度を判断して選択的に読む「効率重視」型
読書スタイル
従来型:紙に印刷してメモを取りながら読む
デジタル型:タブレット(iPad等)でPDFを読む
翻訳活用型:翻訳ツールを使用して読む
精読の重要性とメリット
どのような読み方を選択するにせよ、重要な論文は精読することで、以下のようなメリットを得ることができます。
深い理解の獲得
学術的な英語表現の習得
批判的思考力の養成
研究の質的向上
現実的なアプローチの必要性
理想的には、研究関連のすべての英語論文を精読することが望ましいものの、現実には大きな制約があります。研究活動における時間的制限、人間の記憶力の限界、そして研究効率の観点から、すべての論文を精読することは現実的ではありません。そのため、精読すべき論文と速読で済ませる論文を適切に選別し、効率的に研究を進めることが重要となります。
重要なのは限られた時間の中で研究の質を高め、より良い論文を作成することだと思います。そのためには、精読と速読を適切に組み合わせた効率的な戦略が必要となります。
ここまでの前提は理解していただけたでしょうか?皆さんは「時間が足りない」と感じることはありませんか?最新のAIツールを活用することで、研究活動の効率を大きく向上させることができます。人生の貴重な時間を節約することができれば、その時間で別の論文を読むことができますし、趣味や新しいことを始める時間も確保できるようになります。
では本題に入ります。
研究活動において、「英語論文を読む」というプロセスは、実は以下の3つの重要なステージに分けることができます
論文の探索:関連する重要論文を効率的に見つける
論文の読解:内容を正確に理解し、必要な情報を抽出する
アウトプット:自身の論文執筆や発表資料の作成
これらのステージは、従来は多大な時間と労力を必要としていました。しかし、AIツールを活用することで、この過程をより効率的に進めることができるようになるのです。
おすすめのAIツール6選!
1.論文の探索
Perplexity:万能で超優秀!なんでも屋の検索エンジン
Consensus:AI搭載の次世代論文検索エンジン(論文特化型)
Connected Papers:論文探索の可視化ツール
2.論文の読解
NotebookLM:PDFや既存文章×生成AI
Paper Interpreter (Japanese):学術論文の理解を支援するAIツール
3.アウトプット
Claude:ChatGPTを超える(現時点)賢い生成AI
一つずつ見ていきましょう
Perplexity
Perplexity(パープレキシティ)はChatGPTのように、「知っていること」を教えてくれるだけでなく、検索をしてその結果をまとめて教えてくれます。
下の画像のように検索をしてみたところ、7つのサイトから情報を検索してまとめてくれました。
検索した結果をまとめて提示してくれるので、最新の論文なんかも調べることができます。ソースの部分をクリックすれば、そのサイトに飛ぶことも出来ます。
あらゆるサイトを参照して情報を持ってきてくれるので、論文以外のこともなんでも検索することができます。
Perplexityの特徴
賢い情報検索と要約
自然な質問文での検索が可能
複数の信頼性の高い情報源から回答を生成
回答の出典を明確に表示
研究に特化した機能
学術論文の要点を瞬時に要約
関連する研究や最新の知見を自動で提案
技術的な質問に対する詳細な説明が可能
使い勝手の良さ
ウェブブラウザで簡単にアクセス可能
モバイルアプリでいつでも利用可能
会話形式で対話的に情報を掘り下げられる
Perplexityは個人的にとても気に入っているAIツールです!!
LINEMOユーザーはPerplexityのPro版が1年間無料で使用でできるキャンペーンを行っていて、私も現在はPro版を使用しています。(本当に優秀です)
Consensus
Consensus(コンセンサス)はPepplexityと同じ検索エンジンですが、こちらは論文に特化したものです。↓
先ほどと同じようなテーマで検索すると、以下の写真のように、調べてきてまとめてくれたものを提示してくれます。
文末についている丸数字は、参照してきた論文です。番号をクリックすればその論文を見に行くことができます。
Pro版での回答生成は制限がありますが、無料版でもとてもいい回答を生成してくれます。内容も要約してくれるので、かなり理解しやすいです。
Consensus の主な機能
AIによる論文解析
研究結果や結論を自動で要約
複数の論文から共通の見解(コンセンサス)を抽出
研究結果の信頼性を評価
スマートな検索機能
自然言語での質問が可能
研究結果に焦点を当てた検索
効率的な情報収集
膨大な論文から重要な知見を素早く抽出
エビデンスベースの情報を簡単に収集
Connected Papers
調べてきた論文が、権威のある論文なのか、引用はどれくらいされているのかは気になりますよね?そこで使用するのがConnected Papers です。
以下の写真が実際に検索してみて生成した画像です。
円の大きさが引用数を表現しており、最近の論文であるほど濃い色で示されています。
Connected Papers の特徴
論文関係の可視化
興味のある論文を入力すると、関連する論文のネットワークが図として表示されます
論文同士のつながりが線で結ばれ、関連度の強さも一目で分かります
使い方がシンプル
論文のタイトルやDOI、arXiv ID などを入力するだけで利用可能
基本的な機能は無料で利用できます
研究動向の把握に最適
注目論文の前後の研究の流れを俯瞰できる
重要な関連論文を見落とすリスクを減らせる
NotebookLM
NotebookLMはテキストや文書の分析に特化したGoogle製のAIツールです。
主な機能として
・長文のPDFやドキュメントをアップロードして分析
・文書の内容に関して質問や要約を依頼可能
・引用付きの回答を提供
などがあります。
試しに、脳の予測機構に関する論文を投入してみました。
以下の写真のようにAIに質問をすると、投入した情報をもとに回答を生成してくれます。
チャット形式で追加で別の質問をすることが可能なので、内容理解が素早くできるようになります。
論文中の図表の内容がよくわからないときも、NotebookLMに質問をすれば答えてくれます。
複数データを導入することも出来ますし、読破することが困難なくらい長い論文も、NotebookLMを使用すれば内容を理解できるようになります。
よくある質問も提案してくれるため、それらを利用しながら対話形式で進めていきます。
また、回答した結果の中にある丸数字をクリックすれば、アップロードしたPDFのどこを参照して生成した回答なのかがわかります。
*あくまでPDF内の情報をもとに生成している回答ですので、文章をそのまま引用しているわけではないの注意してください。
Paper Interpreter (Japanese)
このツールは、日本人の方が作成した論文解説AIです。
NotebookLMと同様にPDFをアップロードするだけで、「背景」、「目的」、「方法」のような一般的な論文の形式で内容をまとめてくれます。
下の写真が実際にアップロードした論文から作成してくれたものです。
日本人の方が作成しているので、他の生成AIよりも自然でわかりやすい日本をで解説してくれます。
Paper Interpreterである程度内容を理解し、この論文を読むかどうかを決める判断材料にしています。
PDFをアップロードする機能は、ChatGPT4-oの機能ですので、無料版の場合は1日あたりの回数制限があります。毎月20$の有料プランに加入すれば、この機能も無制限に使用することができます。
なんとなくの役割としては
・論文の概要確認と、読み進めるかどうかの精査 ⇒ Paper Interpreter
・さらに読み進めて具体的な内容理解 ⇒ NotebookLM
・もっと詳しく使用されてる単語や表現なども確認する ⇒ 精読
このような感じで「論文を読む」ということを理解しています。
Claude
最後はアウトプットの際に使用する生成AIです。
主な機能と特徴
自然言語での対話が可能で、要約、編集、Q&A、意思決定、コード作成などのタスクに優れています。
テキストベースの会話に特化しており、最大75,000語(約350ページ分)のテキストを一度に処理できる大きなコンテキストウィンドウを持っています。
ChatGPTよりも文章生成が優秀で、日本語にも強いという特徴もあります。ChatGPTのように画像生成や画像認識、Perplexityのように検索エンジンの機能はありませんが、最新のモデルは2024年4月までの知識をもとに回答してくれるので、信頼性も高いです。
私は日常的にプログラミングのためのコード生成や、文章生成をたくさん行うので、毎月20$を支払って様々なタスクのお手伝いをしてもらっています。
もともとChatGPTの有料プランを使用していたのですが、画像生成や検索機能は他のAIツールで代替できるので、Claudeに乗り換えました。
おわりに
AIツールは私たちの研究活動を大きく変えつつあります。特に英語論文の読解プロセスにおいて、これらのツールを効果的に活用することで、研究の質を保ちながら効率を飛躍的に向上させることができます。
ただし、ここで強調しておきたいのは、AIツールはあくまでも「支援ツール」だということです。論文の本質的な理解や批判的思考、そして研究における創造性は、依然として個人の能力に委ねられています。
これからの研究者に求められるのは、AIリテラシー—つまり、AIの特性を理解し、その可能性と限界を見極めながら適切に活用する能力です。AIツールを「使いこなす」のではなく、「賢く付き合う」という姿勢が重要になると考えています。
最後に、これらのツールは日々進化を続けています。本記事で紹介したツールも、より優れた機能や新しい選択肢に置き換わっていく可能性があります。大切なのは、新しいツールに対して柔軟な姿勢を保ちつつ、自分に合った使い方を見つけることです。
限られた時間の中で研究の質を高めながら、自身の時間も大切にする—そんなスマートな研究生活の実現に、本記事が少しでもお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。