【華茶だよりvol.32】信陽毛尖の歴史と今後の課題
みなさんこんにちは、ゆえじ ちゃんこです。中国茶&台湾茶マガジン【華茶だより】2023年5月29日号をお届けします。
今回は信陽毛尖の歴史についてご紹介します。
信陽毛尖とは
信陽毛尖(しんようもうせん)は河南省信陽市の緑茶で、中国十大名茶の一つに数えられています。
歴史の長い緑茶なのでちょっと紐解いていきます。
信陽毛尖の歴史:昔は違う名前のお茶だった
信陽毛尖は唐代から続く歴史ある名茶です。が、実は「信陽毛尖」という名前で呼ばれるようになったのは比較的最近、清代末期のころ。
信陽の茶は唐代には「大模茶」「餅茶」、その後の宋代からは「片茶」「散茶」と呼ばれるようになりました。つまりこれといった名前はなかったようです。
明代になると、朱元璋が団茶や餅茶など緊圧茶を禁止し、散茶が主流となりました。この影響で信陽の茶も緊圧茶から散茶へと変化。
これが信陽毛尖の前身となる「本山毛尖」の登場へとつながりました。本山毛尖はその採取の季節や形状によって、さらに針尖、貢針、白毫、跑山尖などのサブカテゴリーに分けられました。
信陽の茶業界は明朝以降衰退し、一時は消滅の危機に。しかし、清代末期に甘以敬という人物が登場し、信陽の茶業界の再興に尽力しました。
甘以敬が陳玉軒らと設立した"宏済茶社"は安徽省の六安や浙江省の杭州に人を派遣し、茶の種を購入、茶の製造方法を学びました。そして、龍井から購入した種をもとに作った「車雲龍井」が、1915年パナマ万国博覧会で金賞を受賞。
この時すでに甘以敬は亡くなっていましたがこの成功後、信陽の茶業は発展。お茶の名前も「信陽毛尖」に改名され、現在までこの名前が使用されています。
(余談)
信陽毛尖の公式プロモーションでは「信陽での茶の栽培は周代に始まり、唐代に名前をつけ、宋代に隆盛し、清代に全盛期を迎えた」と宣伝しているようなのでまぁまぁ誇張が入ってるかと。。。
現代では日本との交流も
現代では信陽毛尖の需要に応えるため機械化も推進されています。第一人者の倪保春氏は日本の現代茶産業から多くを学んだとか。
当時、信陽毛尖の機械化レベルは低かったため、日本から2000万元(約4億円)以上の生産ラインを購入。信陽市の茶葉の生産量は増加を続け、現在では8万トン、総生産額は150億元(約2981億円)、従業員は120万人を超えています。
倪さんは「伝統的な手作り茶は大量生産が難しく、価格も高くなってしまう。コストパフォーマンスの高いお茶を作ることが、産業全体の持続的発展の原動力となるのではないか」と語っています。
(参考)AFP BB News 中国の銘茶「信陽毛尖」が目指す近代化とは
信陽毛尖の茶葉と味の特徴
青蛾茶房さんの新茶セットの中に入っていた信陽毛尖を飲んでみました!
茶葉の様子
全体的に深緑、ほのかにカーキのようなくすんだ感じの緑。産毛が目立つ。細く繊細によられた茶葉が美しい。
水色
やや白みを帯びた透明感のある明るい黄緑
茶殻
全体的に白みを帯びたやわらかくて明るい黄緑。色も大きさも均一。葉はやわらかいけどしっかりしている、引っ張ってもちぎれにくい。開いている茶葉は少なく、茶殻も細長いものが多い。ちぎれている葉もちらほら
香り
さわさわした草っぽさ、ちょっと四角い、パキッとした印象。
1煎目はほんのり海苔の甘さ、2煎目一瞬ゆでたカニのような甘さ。
味わい
1煎目、清らかさ、清涼感がすーっと入ってきて喉の奥に抜けていく。後味は舌と喉にほんのり何かが残ってる(渋みとまでは言えない何か)
2煎目、口の手前ではあまり感じない。何事もなく通り過ぎたあと直接のどに当たる喉越し、後味も喉でしっかりした渋み。
2023年春茶は生産量が減少
茶殻を見ると分かるとおり、信陽毛尖は基本的に芽の部分だけを使うお茶です。
しかし2023年の春茶は乾燥などの影響で春茶の生産が遅れ、収穫量が減少する可能性がありました。そこで茶業団体は今年は一芽一葉または一芽二葉の収穫を増やすことを奨励。茶農の収入が影響を受けないよう対策がとられています。
ちなみに一芽一葉または一芽二葉で摘んだ葉を使っても信陽毛尖の特性は発揮されるとの評価を得ているとのこと。
農家の負担も軽減されることを考えると、今後は一芽一葉または一芽二葉の信陽毛尖を見かける機会が増えてくるかもしれませんね。
最後までお読みいただきありがとうございました!
次回は6月12日の配信を予定しています。
よろしくお願いいたします。
ゆえじ ちゃんこ
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発信者プロフィール
ゆえじ ちゃんこ | 中国茶ナビゲーター
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