【NBA】タイ・ジェロームは秘密兵器になれる?カーが期待する若手プレイメーカーはGSWを助けられるか
こんにちは、ユエです。
いつもお世話になっています。
いやあ、Dubs、なかなか苦しい(酷い)試合が続いていますね。
マイク・ブラウンと重要なロールプレイヤーの退団、チームとして強度のないDF(トランジション、スイッチ、ローテ)、若手の一貫性のないパフォーマンス、パサー、連携不足が目立つ2ndユニット。最近はOFにも停滞感が見えます。
昨季のチャンピオンとは言え、現在のメンバーできちんと戦えるようになるにはまだまだ時間が掛かりそうです。
まあ、応援し続けるのに変わりはないのですが。
さて、上の一貫性のない若手というのは、主にクミンガ、ワイズマンのことを指しているのですが、ここ数試合、そのクミンガのプレイタイム(PT)を奪ってしまった罪深き選手がいます。
そう、2way契約のタイ・ジェロームです。
PHX戦から起用されはじめ、執筆時点の5試合で平均約13分のPTを貰っています。彼の契約を考えれば十分に起用されていますね。
シーズン開幕前のことになります、彼がHOUからウェイブされた後、GSWは真っ先に彼とキャンプ契約を結び、そのまま2way契約を結びました。
その為に獲得したと言わんばかりのスムーズな流れでしたよね。
何がGSWをそうさせたのでしょう?
タイは一体どんな選手なのか?
今回は彼にスポットを当て、そのキャリアと魅力、GSWの現状と彼の役割について語る記事になります。
それでは行きましょう。
Ⅰ. TyのNBAキャリア
まず、タイのここまでのキャリアを駆け足で見ていきましょう。
タイ・ジェロームはバスケのメッカ、ニューヨーク出身の196cm、88kg、25歳の若手長身PGです。ヴァージニア大学出身ですね。
2019年のNBAドラフトで1巡目24位でPHIに指名された彼はトレードを経て、PHXでキャリアをスタートさせましたが、ルーキーイヤーは31試合の出場に留まりました。
その後はクリス・ポールを中心としたトレードに組み込まれ、PHXからOKCへ移籍。
PHXとOKCで計112試合に出場し、 平均17.1分出場、7.1得点、2.4アシストを平均しました。
そして、約1ヶ月前の8人が絡むOKC−HOU間のトレードでHOUに移籍した後にウェイヴされますが、先述したようにGSWと契約することになります。
以上が彼の簡単なNBAキャリアですね。
Gリーグでも度々プレイしている苦労人です。
それなりに経験を積んだ選手ということで、GSWが伝統的に若手とベテランでシェアしている2way契約のベテラン枠に収まっています。
個人的には、現状若手が多いロスターの為、どちらもベテラン枠にして、クインダリーを維持しても良かったのでは、と考えていますが、それはまた別のお話です。
※追記
クインダリーは中国のチームと契約しました
Ⅱ. Tyとの契約理由、彼の魅力
ここからはタイとの契約理由、その長所と起用法についてカーや本人の発言を中心に見ていきましょう。
ⅰ. カーの発言に見るタイの魅力と起用法
カーはタイの魅力についてはっきりと語っています。
以下は、キャンプ招待選手の中でも人気のあったマック・マクラングをウェイブした後のカーの発言です。
個人的には『パスが出来る』が最も重要な要素だと考えています。後述しますが、今のGSWにはパサーが少ないです。
昨季、同じく2way契約でファンから度々批判されていたクリス・チオーザもパスが出来る選手ではありました。
カーは、タイをクミンガよりも優先する決断をするほど、パス能力を重要視している訳ですね。
実際、インタビューでもモーゼスのスペーシング、タイのプレイメイキングがより理に適っているという発言をしています。
そんなタイですが、チームに加わるときに自分の強みについて次のように話しています。
大学時代はNCAAのチャンピオンでもありましたし、その勝者のメンタリティは同じくNCAAチャンピオンのドンテ同様、期待できる部分ではありますね。
またタイが長期的に使われるには、毎回のように言っていますが、DF強度も重要になります。発言通りに頑張って欲しいですね。
また、カーのこの発言にも注目しておきたいです。
ここでもカーがタイのプレイメイク、もう一人のオンボールオプションの役割に期待しているのがうかがえます。
こんなシーンもありましたしね。
そもそも、今回タイを取り上げているのは、ドンテがトリッキーなふくらはぎの負傷で離脱している間のPTが期待でき、かつドンテ復帰後も彼には一定の役割があるのではないかと考えているからです。
何が私にとってそこまで魅力的なのか、以下に見ていくことにします。
ⅱ. タイのハイライトに見るプレイスタイル
では、実際にプレイ面を見ていきましょう。
OKC、GSWファンにとってはともかく、タイはNBA選手としてマイナーではあるので、ハイライトは多くありません。
以下の短めのハイライト群から彼の魅力を探っていきましょう。
【MIA戦 4Q】
【CHA戦 2Q】
【キャリア詰め合わせ】
では、タイの武器を幾つか列挙してみます。
コート上の敵味方を見る力
パス能力、センス
シュートを沈める力
◆敵味方の位置把握、パス能力
タイを見ていて最も魅力的に感じるのは、敵味方の位置をきちんと把握している点です。
OFでは相手の位置を見つつ適切なタイミングでドライブを行い、そこからフローターもしくは味方にパスを供給。
また時にはパスの中継点として、貰ったパスを即座に別の味方に回し、シュートを演出。
味方と連動し、良いタイミングでカッティングもできます。
行動前に位置把握が出来ているので、判断も早い印象があります。そして、見つけた味方にきちんとパスを通せる能力もあります。
DFにも位置把握と判断力は活かされていて、スイッチのタイミングなどは加入したての選手としては既に及第点レベルにあると思います。
対人DFも決して悪くありません。
少なくともプールの横に置けるくらいのDF力はあります。
◆シュートを沈める力
位置把握ができるということは、味方を邪魔せずにスペースを保てるということでもあります。
タイはコート上をよく見ているので、オフボールでも良い位置に動いてスポットアップ・シューターにもなれます。
本人の言う強みのシューティングですね。
とは言え、元々タイはシュート力に優れているとは言えない選手です。
キャリア(117試合)を通してのFGは40.9%、3ptは33.8%と平均以下の数値であり、3年目までのキャリアで効率的だと言えるのは2年目だけです。
しかし、GSWでの5試合に限れば、FG57.1%、3pt50.0%、2pFG66.7%、eFG71.4%、FT100%と凄まじい数値になっています。
チームが上手く戦えていない中での彼の安定感には助けられていると感じる方も多いでしょう。クロック間近のシュートもきちんと沈めていますしね。
事実、非常にサンプルは少ない(平均0.5本)ですが、タイはクロック残り4~7秒のショット(3ptよりも後ろ)を100%で沈めています。
印象がデータによって裏付けられるのは面白いですよね。
もちろん、これがずっと続く選手などいないわけで、数値は落ちてくるでしょうが、少なくとも当面のPTを確保するには十分すぎるサンプルです。
本契約を掴めるかはドンテ復帰以降の更に限られたPTの中でどう活躍できるかにかかってくるはずです。
彼をPOの局面でも使いたいとカーに思わせられれば、可能性は高くありませんが、それも見えてくるでしょう。
タイにPOの経験はありませんが、その有無よりもむしろ胆力・度胸が重要なのは昨季のGSWを見ていればお分かりになるかと思います。
昨季、あのロスターで十分にPOの経験があったと言えたのはBIG3+イグダラだけで、あとは初めてかそれに近いような選手ばかりでした。
それでもプール筆頭に、ゲイリー、オットーと皆素晴らしい活躍をしてくれましたよね。
タイの落ち着きであれば、大舞台で活躍できてもおかしくはないと思います。
CHA戦では、短時間ではありますが、ステフ、クレイ、タイでの3ガードが見られたのは興味深い采配でしたし、ここ数試合では色々なラインナップに組み込まれています。
特に2ndの基本形、プール、タイ、モーゼス、ジャマイカル、ワイズマンのラインナップからモーゼスとワイズマンを抜いて、ウィギンズとルーニーを加えたラインナップは、チームが81通り試しているラインナップ中、上位の+2.0を記録しています。
一番高いのは勿論スターターの+8.3ですが、機能しているラインナップできちんと活躍できているのは嬉しい材料ですね。
Ⅲ. GSWのパサー不足問題とTy
では、ここからは現状のGSWを見つつ、タイがどう役立てるのか考えていきたいと思います。
ⅰ. 昨季とのデータ比較と2ndユニットの問題点
先日、DET相手に惨敗した後、ドレイモンドはチームについてこう語りました。
OFとDFが繋がっていることは自明のことですし、私自身も昨季の良いOFが出来ていない試合ではそういうツイートを偉そうにしていた記憶があります。
特に2ndユニットのOFが上手くいっていないのは何故なのか考えてみると、やはりパサー不足が思い当たります。
主にフロントコートですね。
ドレイモンド以外は出せないと言っても良いかも知れません。ジャマイカルも良いパスを出せる器用さはありますが、毎試合のことではありません。
分かりやすいのは以下のデータです。
昨季RSでは平均1.5アシスト以上を記録した選手が11人居るのですが、今季はたった6人しかいません。
昨季、オットー、ネマニャ、イグダラの三銃士がそれぞれ1.5、2.0、3.7アシストを記録していたのを考えると、平均1.2アシストのタイですらチーム7番目に多い現状はパスを信条とするGSWからするとやり辛いでしょう。
JTAやチオーザ、リーもアシスト数は1〜2ありましたからね。
勿論、今季がスモールサンプルなのは理解していますが、アシスト数がドレイモンド、ステフ、プールに偏りがちなのは事実です。
クミンガが今季やり辛そうにしているのは、2ndユニットに彼を活かせるパサーがいないことに原因の一部があるのではないかと考えています。
プールは基本、ワイズマンを活かそうとしますからね。
更に以下のデータとこれらの事実を合わせてみると、GSWの現状が見えてきます。
以下、昨季82試合と今季8試合で比較しています。
◆アイソレーション
21-22
平均POSS:5.9(リーグ24位)
FREQ(頻度)%:5.4%
FG43.4%(リーグ6位)
PPP:0.94
22‐23
平均POSS:5.9(リーグ24位)
FREQ(頻度)%:5.0%
FG39.5%(リーグ23位)
PPP:0.94
◆ピック&ロール
21-22
平均POSS:13.8(リーグ29位)
FREQ(頻度)%:12.6%
FG44.1%(リーグ9位)
PPP:0.94
22‐23
平均POSS:16.6(リーグ20位)
FREQ(頻度)%:14.3%
FG41.4%(リーグ14位)
PPP:0.94
◆ハンドオフ
21-22
平均POSS:7.0(リーグ6位)
FREQ(頻度)%:6.4%
FG38.9%(リーグ19位)
PPP:0.93
22‐23
平均POSS:6.5(リーグ11位)
FREQ(頻度)%:5.6%
FG42.2%(リーグ11位)
PPP:0.98
◆カット
21-22
平均POSS:11.5(リーグ1位)
FREQ(頻度)%:10.5%
FG69.0%(リーグ8位)
PPP:1.30
22‐23
平均POSS:12.0(リーグ1位)
FREQ(頻度)%:10.3%
FG64.2%(リーグ18位)
PPP:1.26
ちなみにアシスト数については、昨季が平均27.1本(TO 14.9本)、今季が平均29.0本(TO16.5本)となっています。
アシストはリーグ5位 ⇒ リーグ3位
TOはリーグ29位 ⇒ リーグ27位
TOはリーグ順位では良くなっていますが、数字から分かるように、より悪いチームが増えているだけで、昨季リーグでその数値を当てはめるとHOUと並んで最下位になります。
データが続きましたが、これらから言えることを列挙してみます。
1つ1つの効率が低下している(OFでの苦戦)
アイソ、P&Rはリーグ全体で見ると変わらず低い水準にあるが、P&Rが増えている
ハンドオフ、カットの頻度は高いまま
アイソからは特に得点できていない
アシストもTOも増えている
総合すると、ボールは回っており、アシスト、カット等の数字は良いが、パス精度、パサーの少なさから昨季ほど得点に結びついておらず、TOや決して質の高くないP&Rが増加傾向にある。アイソは困った時の選択肢だが効率は悪い。
と言えるでしょうか。
シューターらしいシューターも多くは居ないので、3pt%も落ちています。
今季はOFRTG111.5で20位、DFRTG115.6で25位と厳しい現状のGSWですが、ドレイモンドの言葉通り、OFでの非効率さや一貫性のなさがDFをやり辛くしているとするならば、両方とも下位に沈んでいる状況はまずOFを改善することで解決できるのかもしれません。
特にドレイモンド不在の時間にどうするかですね。
その一助になれるのがタイだと思うわけです。
彼には昨季RSで奮闘していたJTA達のポジションを埋める期待をしています。
POでは出番はないかも知れませんが…
ⅱ. タイのいきる道
以上のようにパサー問題がGSWをやり辛くさせている現状を考えると、先程触れた2ndユニットにわざわざウィギンズやルーニーを組み込む意図も理解できます。
2人ともGSWのシステムに慣れており、パス能力もある為、2〜3アシストを平均していますが、実は2ndユニットの基本形の構成員であるモーゼスもワイズマンもジャマイカルも平均1に満たないアシスト数なのです。
これでは2ndユニットはプールが1人で引っ張っていて、タイがサポートする形になっているのも頷ける訳ですね。
換言するなら、GSW経験が浅い中でも1.2アシストを平均出来ているタイを使うのは、カーからすれば当然だとも言えるでしょう。
プール、タイ、ウィギンズ、ジャマイカル、ルーニーの並びが一定の成功を収めている理由は、攻守における経験とパスの出せる選手の多さにあります。
ドンテの離脱はそういう意味でも大きいわけですが、タイが使える選手だと分かったことは怪我の功名なのかも知れません。
理想は、スターター同様、2ndユニットにパスを出せるフロントコート陣の選手を置くことなのですが、モーゼス(SF)、ジャマイカル、ワイズマンは現状それが出来ていない、というのはお話した通りです。
そうなるとフロントコートでパスが出せそうなのはクミンガしかいません。
しかし彼は今、学びの中にいます。
クミンガをハンドラー起用するのは実験としては面白いですが、勝利に繋がるかと言われると首を傾げてしまいます。
『うーん、じゃあ3ガードしかないんじゃね?』(妄想の中のカー)
というのが、今季3ガードが散見される理由だと考えています。
そして、そこに長身PGであるタイの生きる道があるのではないか…
と思う訳です。
ステフ、プール、クレイは昨季もよく見ましたが、今季はステフ、タイ、クレイ/ステフ、プール、タイの並びも見られます。プール、タイ、クレイなんかもあります。
面白いですよね。
先日もステフ、プール、クレイ、モーゼス、ドレイモンドのスーパースモールを(恐らくプレイタイム管理のために)実験していましたし、カー教授の好奇心は留まることを知りません。
まあ、今季については苦しんで実験してるのは分かっていますが…
ともあれ、ここまでの考察を踏まえればドンテ復帰後もパサー、イニシエーターとしてのタイの需要はありそうです。
シュート確率を維持できるならシューターとしても重要性を増すでしょうか。ここはドンテも苦しんでいる部分なので、タイには期待したいですね。
例えば、プール、ドンテ、タイ、ジャマイカル、ワイズマンの並びは有り得そうです。ジャマイカルをクミンガに代えるとよりパスが出せそうですね。
昨季は5人ともパスが出せるラインナップも結構あったので、改めて昨季集まった選手達の特異性と凄さを痛感します。
とは言え、
カーが言葉通り、今季には今季のチャレンジがあります。
いくら若手がフィットしていないからといって、彼らの成長なしでは優勝なんてできないわけですから、使わないわけにはいきません。
今回はタイにスポットを当てましたが、モーゼスもワイズマンもクミンガも自分の得点だけではなく、味方を活かす能力をもっと身に着けて欲しいですし、ジャマイカルにもパサーとしての役割は期待せざるを得ません。
この難局を乗り切るには皆の成長が不可欠なのです。
Ⅳ. 終わりに:GSWはもうだめ?
今回はタイの魅力と役割について考察しました。
結論だけ言えば、3ガードラインナップにこそ、彼のいきる(生きる/活きる)道があるのではないかという内容でした。
また、GSWの2ndにはフロントコートのパサーがいない為、ドンテ復帰後も(2wayの制限内で)一定の役割はあるのではないか、ともお話しました。
長身で視野の広いタイは既に充分なPTを得ています。
リーグ全体の身長が小さくなっている中、どのラインナップにもフィットするサイズとスキルを持っていると思います。
まだ10試合にも達していませんが、彼が居てくれて良かったです。
書きながら思うのですが、2wayの素材枠はアンソニー・ラムではなく、トレビオン・ウィリアムズでも良かったかもしれません。
ジャパンゲームではクインダリーのカットに良いパスを供給していましたしね。フロントコートのパサー、まさにトレビオンです。
それはさておき、今季のGSWは正直まだまだ弱いですね。OFはともかく、DFはスターター、ベンチ問わず良くありません。
観ていて苛ついてしまう試合も多い、というかそういう試合が大半ではありますが、若手も多いですし、まだまだこれからのチームなのは間違いありません。
むしろ、昨季の優勝コアが揃っていながら、このまま終わると考えるほうが不自然です。ある程度忍耐は必要でしょうね。
ベテランだと特にクレイですね。
こういうチームにはタイのように台頭してくる選手もいますし、いきなり15番目に有望な選手が入ってくるかも知れません。
15番目といえば、
ワイズマンのメンターとしての加入希望を公言しているドワイトはGSWに加入するのでしょうか。元DPOYセンターの教えは貴重だとは思いますが、どうなりますかね。
オットーのような選手がどこかに転がってたら良いのですが、あの方は本来15Mくらいは貰っていいくらいの選手ですからね。望み得ないことです。
オールラウンダーといえば、ルーキーのPBJも早く戦力化して欲しい素材型の1人ですね。彼が戦力になることができれば、OFの選択肢が増えると思います。
といったところで、今回は以上になります。
皆さんはタイ・ジェロームについてどう感じていますか。是非コメントをいただければと思います。
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それでは次回の記事でお会いしましょう!
※以下の記事は最近少しずつ読まれているので、こちらも是非。GSWの契約問題についての考察記事になります。