赤月月#15 感想

世界最古の物語とは何か。
ギルガメシュ叙事詩、イーリアス、ナボニドゥスの円筒形碑文、オデュッセイア、サチュリコン、ダフニスとクロエ、源氏物語‥‥‥。
『物語』の定義の仕方により様々な答えが導かれると思うのだが、私が思うに人類史において最古の物語とは、『神話』そのものである。

今よりも遥か古の時代、我々の祖先が火を操る術を身に着け、焚き火を囲み天上の星々を見上げその煌めきの数々を神々に例えた。
繰り返し物語を紡ぎ、繰り返し語り継ぐ中で物語は面白く印象に残るように改変/洗練され、今日の私達はそれを知るのである。

その点を踏まえ、今回の赤月月で決まったゆに様の傍らに佇む非実在ビジネスコウモリ氏の名前を私は甚く気に入った。
名を、北欧神話の主神にして貪欲に知識を求める神オーディンに使えるワタリガラス『ムニン』に因み『むに』と言う。

ゆに様曰く世界中を飛び回り主人に情報を伝えるその姿がインターネットの化身に見え、アリに思えた‥‥‥との事だった。

私もその例えを聞いて甚く得心した。
北欧神話だけでは無い、世界中のあらゆる神話でカラスは登場する。
旧約聖書やギルガメシュ叙事詩ではノアが大洪水が収まったかを確認す為にカラスを船外に放つし、古事記では神武東征の際八咫烏が松明を掲げ橿原まで導いた。
これは世界各地でカラスが神聖視されていた証左になり得るだろう。

そんな最古の物語に登場するカラスの名を、21世紀のインターネットに生きる吸血鬼が拾う‥‥‥。
いやはや、なんとも乙な話ではないか。
コレを気に入るなという方が難しい様に私は思う。

ちなみに、私もこのゴッドファーザー選手権に出場(?)した。
2010年に打ち上げられた金星探査衛機『あかつき』と相乗りした小型ソーラー電力セイル実証機『IKAROS』に因み、イカロス君と命名した。
宇宙空間にソーラーセイルを広げる姿はなんとなく蝙蝠っぽい見た目だし、名前の元ネタの元ネタであるギリシア神話のイカロスの逸話は吸血鬼的にシンパシーを感じるのではないかなと思っていたのだが‥‥‥。
あまり気に入ってもらえなかった様だ。残念。

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