科学的に存在しうるクリーチャー娘の観察日誌という漫画について

私なりの愛を語りたい。

まぁ、この漫画の要素のおおよそは上記のサムネ画像に書いてある。

読んで時の如く ”異世界異種族ハーレム奇譚!!” だ。
詰まる所、最近(言うほど最近か?)流行りの異世界物である――のだが、この漫画の面白さはそこに集約される物ではない。

そう、『科学的に』異世界に存在する某を考察して行くのだ。

主人公は転生ではなく謎の現象で異世界に降り立つのだが、この異世界が中々に面白い。
大気成分や重力は(恐らく)地球と全く変わらない、全くの捻りのない異世界なのだ。
にもかかわらず、アラクネやハルピュイア、ケンタウロスやマーメイドといった亜人種族が登場し、我々の持つイメージそのままに劇中で動き回る。
例えばアラクネは垂直の壁を何の苦もなく登攀するし、ハルピュイアは空を高速で飛翔する。
この漫画は『科学的』であるので、当然そこに魔法等のファンタジー要素が入り込む余地はない。
起こりうる物事全てに科学的な説明があるのだ。

手足が12本のアラクネを科学的に作るには?

まず普通の人間は、手足が4本のハズである。
一方アラクネは12本だ。蜘蛛上の下半身に8本、人間の上半身で2本、鋏角にあたる部位に2本。合計で12本。

嗚呼、何ということだ。丁度4の倍数ではないか。
よし、人間3人を合体させてしまおう‥‥‥。

と、作者が思ったかどうかは知らないが、上記がこの漫画におけるアラクネである。
いやはや一体全体どうやって合体させるんだと思う諸氏もいると思うが、劇中では女性のアラクネはすべからく母親の胎内で斯様な状態で育ち(男性は若干の差異こそあれど”普通の”ヒト形である)、生まれるのだ。
即ち、結合双生児の三つ子版である。

いやいや、戦隊モノの合体ロボじゃないんだから‥‥‥と思わなくもないがこのような科学に裏付けされた異世界モノというのは新鮮で面白い。

他にも

時速80キロで大地を疾駆し、その速度で持って離陸を行うトビウオ型飛行形態でありながらハングライダー状の翼でもって滑空を行うハルピュイア

口内にデンキウナギの様な発電用の筋肉を持ち、上下の顎から生えた牙をスパークプラグに見立て点火、吐き出した可燃性ガスに着火し炎を吐き出すドラゴン

等々、作者の発想に舌を巻くばかりである。

リアルだからこそファンタジー

こういった現実的なファンタジー的存在を描くというのは、『指輪物語』や『Dungeons & Dragons』から脈々と続く固まりきったファンタジー的世界観への、一種のアンチテーゼの様に思う。

少し前に話題になった『ダンジョン飯』もそうだが、こういったリアルとファンタジーの間にある世界観が好きなのだ。

少し前のCivilizationの時にも書いたが、歴史に『たら、れば』は無いが、その『あったかもしれない世界』を想像することが楽しい。
これは歴史というのは人類史だけではなく、生物の進化史も当然ふくまれる。
もしチクシュルーブ衝突体による白亜紀末の大量絶滅が起きていなければ、トバ事変による人類の遺伝子プールのボトルネックが起きていなければ‥‥‥。

きっと、ドゥーガル・ディクソン氏が描くようなワクワクする生態を持つ生き物・人類がこの地上に繁栄していたのではないか。

子供の頃に生物図鑑を読んだときのような高揚感が、この漫画の真の面白さであると私は思う。

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