「人狼TLPT」を観に行ってきた
人狼 ザ・ライブプレイングシアター
#50:VILLAGE XXI
という即興で演じながら人狼ゲームをする演劇を観てきた。
なんだかとても凄かったので記事を書こうかと。
3公演分を観て、テンション上がってついつい書きすぎて長くなってしまった。
また、記憶力ポンコツなのでかなりうろ覚えだし、個人の感想なので、それもご了承のほど……
きっかけ
人狼 ザ・ライブプレイングシアター(TLPT)とは何なのかは、こちらの公式HPの解説を。
観に行ったきっかけは、お笑い芸人のピュートのポイント(村田翔平)さんが出演されていたから。
少し前にポイントさんが出ていた「アルセーヌ・ルパン!」という劇も見に行っており、その時に出られていた三上俊さんもこの人狼TLPTに出るという事で、それもあって。
あと、数年前から色々な演劇をたまに観に行くので、その延長で。
人狼ゲームは ほとんどルールを知らないし、自分がやったこともない。
神保町よしもと漫才劇場のYouTubeで上がっていた動画を観て、とても楽しそうだけれどなんだか難しいゲームだなという印象はあった。
この第5回が特に好き。
即興劇が好き、という記事を前に書いたように、ポイントさんが即興で演じるのを見てみたい。人狼ゲームを即興で演じるって、組み合わさってなんだか面白そう。
そんな感じでチケットを取った。
●3月17日13時(第7ステージ)
私が観に行ったのは、3月17日(日)13時開演回。
(第7ステージ)
初めての人狼TLPT観劇。
「アナザー公演」と言われる、出演者同士の関係性や事件の経緯が最初に明示される公演だった。
この人とこの人が親子で、姉妹で、恋人同士で……と関係が決まっている。その様子を30分ほど演じたあと、通常の公演と同じようにその日の開演15分前にカードを引いて決まった役で人狼の舞台が進んでいく。
襲われた最初の犠牲者。
悲嘆に暮れる村人たちが始める初日の議論。
投票、そして処刑。
とにかく、凄まじかった。
初日の議論で、一体何が分かったのか、私にはさっぱり分からなかった。
きっと何か引っかかる言動が、あったんだろう。
投票が集まり同票だった、ソーヤーとユリウス。
決選投票の末、
初日に処刑される事になったのは、ソーヤー。
このソーヤーが、私がこの舞台を観に行くきっかけとなった、ピュートのポイント(村田翔平)さんだった。
嘘でしょ初日で?という驚きを飲み込めないまま、舞台上の村人達が狂気を帯びていく。
嫌だと逃げ惑うソーヤー。逃げろと叫ぶ兄のスチュアート、引き剥がされる恋人のライラ。なぜ彼なんだと叫ぶ、決選投票で生き残ったユリウス。ソーヤーを抑えこむフランク。ナイフを構えるジャスパー。
だってさっきまで、あんなに穏やかな村だったじゃない。
あんなに、みんなで夢を語ったり恋をしたりしていたのに、たった1回の議論で、この人が人狼かもしれないと、人ひとりを殺す決断を、どうして出来るんだろうって、怖かった。
誰もが仕方ないと呑み込んで、初日なんてなおさら決定打はなく、人狼かもしれないというただの勘が大きいけれど、それでも誰かに決めないといけなくて。
分かってる。
ゲーム上、絶対に、投票で決まった人が生き残ることはないと。
昼回に必ず1人、選ばないといけないと。
決まった以上はその死から逃れられないし、本当に人狼だったら、生かしておけば犠牲者が増える。
そうなんだけれど、でもさ……あのほのぼのした村の様子を見たあとだと、辛いって……。
演技も鬼気迫るから没入感も凄くて。
いや、検索して先に観た人の感想で、アナザー公演は地獄みたいに辛いとか心痛いとか書いてあったけど。
え、これまだ1日目?
半ば呆然としたまま、昼パートが終わる。
倒れたぼろぼろのソーヤーは、舞台上にそのまま。
最初の犠牲者のトリニティが袖から出てくる。
亡くなった者達による、夜パートの始まり。
「もう痛くないよ、怖くないよ」
と優しくトリニティに起こされて、やたらあっけらかんと起き上がって軽妙なトークが始まって、ほうれん草ゲームとかまで始まって、さっきまでの地獄の昼回との落差に頭がクラクラした。
※客席にいる私たちは、人狼に先にころされてしまった人=「墓友(はかとも)」というらしい。
なるほど、だから夜回で亡くなった人は、客席の事が「見えて」いるんだ。
役者さんって凄い……
さっきまでみんな舞台上で本当に泣いて、客席も貰い泣きしてみんなでズビズビ鼻啜ってたのに。
客席も客席で、明かされたヒントを手がかりにしっかりメモ取ってて、次の昼に備えてる。
そして2日目。増える犠牲者。
1回目の投票の時 誰が誰に投票したか、何番目に投票してたか、みたいな議論が出てきて、うわぁ何も覚えてない…となったので、
もうかなり早い段階で、私は推理を諦めて、観ることに集中した。観客も推理し、3日目の夜に回答用紙を提出するのだけど、さっぱりだった。
なので、人狼ゲーム的な見方は全然できていない。
フランクお父さん、残った息子には自分の処刑をやらせられないとか言ってバイロンに頼んでたけど、正体が狂陣だったと明かされた時の驚き。
狂陣がお守りだか何だかを壊して人狼を村に引き入れたって前設定だったから、元はと言えばフランクお父さんのせいだし、それで娘も息子も人狼にやられてあんなに泣いてたのに……え?もしかして花粉症ですか?
それに残ってた息子シモンはすでに人狼だったんだよ……
バイロンはバイロンで、何で娘にナイフを握らせるんだトラウマになるって、そこはバロウズさんとかに頼もうよう……はっ!バイロンが人狼か?!(全然違った)
バロウズ様はさすが今日のMVP。周りを信じさせる立ち回りと言葉が、すごかった。その流れが最後まで全然変わらず誰もひっくり返せなかった。
夜パートのヒントによって、観客はかなり早い段階でバロウズが嘘つき=人狼陣営だとは分かっていたので、うわぁバロウズを信じちゃダメ!!とヤキモキした。
ずっと泣いていたキンバリーお嬢さんがどんどん憔悴して壊れていく様が妙にリアルで怖くて、護衛のジャスパーが魂を守るとか言ってたけど、笑顔も守ってくれよって思ったり……
絶対ジャスパー人狼だと思ったのにな……でもキンバリーにとってはジャスパーも人狼だったら最悪すぎるから、あれで良かったのか……うん
と、まあ、情緒がぐちゃぐちゃになった。
人狼ゲームとして誰が上手いとか、嘘のつき方とか推理の仕方とかそういうのは全然分からないけど、とにかく凄まじかった。
これが毎公演、この熱量で演じているのがすごい。
しかも毎回、ゲームの役が変わる。昨日人狼だった人が、今日は人間かもしれない。預言者とかの能力がつくかもしれない。
凄いな。
そして重たいよ辛いよアナザー公演……
ゲームとしてやる人狼ゲームだと、多分、処刑って言っても、ただ「退場 」の意味合いが強いと思うのだけど、劇になる事でそれが如実に描写される。
話によると他の公演だと、苦しまない毒とか銃とか方法は色々あるらしいけど、今回はナイフで、じゃあ誰が手にかけるかっていうのがあるし、もうね、辛い。
誰ですかこんな辛い展開にした人は……
これだけ辛い辛い言っているのに、
追加でチケット買って観にいく事にした。
観た後、考えすぎと感情の揺れにもれなく頭痛に悩まされて、帰ってすぐ寝て12時間も寝込んだのに。
役が変わるから、また別の展開になる。
今度勝利するのは人間側か、人狼側か。
ソーヤーさん、長生きだといいな。
2回目だともう少し人狼ゲームっぽい見方ができるかもしれない。でも、かなり感情が引っ張られたから、やっぱり冷静に推理できないかもしれない。
次が楽しみだけれど、確実に辛い展開に怖さもある。
パニック物は苦手だけど、サスペンスは好きだから、何だかハマりそうな気もする……
つい長く書いてしまった。
もし次も観て語りたくなったら、後でこの記事に追加して書こうと思う。
●3月20日13時(第11ステージ)
前回初めて観劇して、あまりの衝撃に追加チケット買って見た回。
今回も推理は難しくて、前回寝込んだのもあるのでなるべく力を入れすぎずに観ようとしたら、人狼全然当たらなかった……
こちらもアナザー公演のため、出演される役者さん達のメンバーは固定で同じ。
今回は、最初の犠牲者(1stゴースト)が、ユリウス先生回。(前はユリウス先生と双子のトリニティが1stゴーストだった)
オープニング、教師のユリウスが追い詰められて行く様はトリニティの時とまた雰囲気が違った。
教師という立場、村を守るという意思が、責任感が、全部があの行動に駆り立てたんだろうなって感じがした。
初日、シモンが強く覚悟を決めて、バイロンさんが行動に出て、一気に場が緊張感に包まれた。
すでに前回観たのと全く違う流れになっている。
すごい、と思った。
行動するが吉か凶か。
発言するのがいいか、なるべく語らないか。
最初の処刑は、バイロンさんだった。
今回も娘のヘイゼルがナイフを取る。
ああ、そういう父と娘なんだなと、そこに信頼関係があるから娘が なんだと、1回目はなぜ娘に?と思ったが、2回目にして妙に納得した。
夜パート、バイロンさんの役職が発表されて、うわぁ……この先の村の行方が一気に心配に。
2日目の朝、ソーヤーがいない。
えー、襲撃されてる……
前回見た回も初日処刑だったから、私にとっては続けて短命なソーヤー。
ソーヤー役村田さんのラジオで平均生存日数長めだって話を聞いていたので、何てこった、私の運が良いのか悪いのか。
村には霊媒師と予言者が名乗り出て、能力を授かる事の苦悩の話が出てきた。
キンバリーに予言者の能力を使ってもらえなかったフィーナ。流れる空気が、じわりと嫌だ。
それに、夜回のヒントで客席側はキンバリーが嘘をついていると知っている。
嘘が、嘘によって、断絶を生んでる。
知る事が良いことか、悪いことか。
今回の村はギリギリの攻防で長期戦だった。
2回の決戦投票でも同票になり処刑が行われなかった昼もあり、狩人が無事に守って犠牲者のなかった夜があり、決着がつくのに7日間。
議論が長引けば長引くほど、日数が経てば経つほど、犠牲者は増えるし、村人達の疲弊も進む。
心の決まっている人、説得に揺れ動く人。
うー、今回も辛い……
最後の勝利陣営の確定場面、スチュアート(ソーヤーのお兄さん)が何度もナイフを人狼に刺すのが印象的だった。
狩人の能力を授かったのに、弟や好きな人を守れなかった。
こんなに決死の議論を重ねたのに、村人側の刃は人狼に届いていなかった。(人狼が処刑の時、手を下していたのは人狼側の人間だったため)
守れたはずなのに、その能力が自分にはあったのに。今回は、能力を授かることの苦悩、みたいな話が最初から最後まであったな、と思った。
それで言うと、オープニング。
賢者の残した箱と手記。
声が聞こえるようになったユリウスもしくはトリニティ。でもその声に苛まれて、追い詰められて。
声は「賢者」なんだろう、と言及されていたが、本当に賢者の声だったのか。
あの箱を開けたことは、3つの能力は、救済なのか。
……なんて、考えたくなった。
それ言い出したら人狼ゲームじゃなくなっちゃうか。
アーカイブ残ってるうちに、ソーヤーが長生きしてる回も見てみたい。
1stと3st 、今日の13stも良かったと聞く。
過去の公演のアーカイブも楽しそうで、気になるのがたくさんある。
人狼TLPTの沼に、ハマっていく気がする。
また見たら追記していこうと思う。
●3月23日18時(第18ステージ)
この第18ステージは、アナザー公演の千秋楽で、ソーヤー(村田)さんの千秋楽。
最初からチケット買っていた回。
前の方の席で舞台が近い。
1stゴーストはユリウス先生回。
苦労人の先生。
千秋楽という事もあるのか、関係が明示されていた恋と片思いをはっきりと相手に伝えている初日だった。
スチュアートはデイジーに、ヘイゼルはスチュアートに。ライラはソーヤーに。
「最期かもしれないから、遺言になるかもしれないから」と、「この公演がアナザー村公演の最後だから」が重なったのかなと思った。
初日処刑になってしまったフィーナ。
自分でナイフを握ったのが印象的だった。私が観た回で自刃した人がいなかったから。村のみんなから疑われた悲しさと、それでもそんなみんなにナイフを使わせたくないという強くて、優しい子なんだと思った。
バロウズ様も自分で、友のフランクにはやらせなかった。強い人だった。
とりあえず、第7ステ初日処刑で逃げ回って羽交締めにされてたソーヤーの行動の方が珍しかったんだなと、複数回見て思った。みんな初日から覚悟が凄いし、納得はしてなくても何とか受け入れて、全然暴れてなかった。
いや、恋人ライラの処刑の時もソーヤーはジタバタしてお兄さんとかに抑えられてたから、それがソーヤーの役としてのあり方なのかもしれない。
予言者を名乗る人が、バイロンとジャスパー、2人出てきたのも凄かった。名乗り出てきた時点ではどちらが偽物か(あるいはどちらも偽物)か分からない。
ただ、予言者は村に1人なので確実にどちらかは嘘つきな訳で。
誰がどちらを信じるのかという難しい選択になるし、予言結果も分かれるしで、難しかった。
それに、予言者バイロンさんがフランクを村人だと証言した時の衝撃と言ったら。
今となっては何故か分からないがフランクさんは限りなく黒(人狼)だと私は思っていて、多分客席もそう思っていた人が多くて、そう回答用紙に書いて提出したあとだった。
えっ???という小さな声が客席からも舞台上からも聞こえてきた。舞台上でもみんな混乱しているように見えた。
まさかバイロンさんが言い間違えたのか、あるいはバイロンさんも偽物予言者だったのか、とまで思った。
フランクさんが村人だとすると、前日で信頼されつつあった霊媒師スチュアートも疑われ始めて、今までの議論を根底から見直しして。
スチュアート兄さんの記憶力が凄かった、何日目に、誰が何番目に投票したか、しっかりと覚えていて追求していた。スチュアートだけではなく、みんな記憶力が凄い。私なんて客席でメモとりながら見ていても何にも分からないのに、記憶して推理して演じてを全部同時にやっている。
でも、議論できる時間が足りなくて。
この回で霊媒師のスチュアートさんが処刑された事で、一気に人間側が崩れていった気がする。
盛大にネタバレだが、
今回、ソーヤーが最終日まで生存してた!!!
前に観た2回とも初日でダメだったから、もうそれだけで嬉しかった。
でも、でも人狼だったとは……全く分からなかった。
だって同じ人狼のジャスパーにずっと投票してたよ……?
人狼が人狼に投票するっていうのもあるんだ。人狼ゲームって奥深くて、推理難しすぎる。
もしかして、今回は最初にライラのレースを手に巻いてなかったのも、途中ナイフが椅子の後ろに落ちてたのも、人狼だったからとかある?
(多分全部偶然)
あんなに恋人のライラの処刑に嘆き悲しんでいたのに。
最後の場面、ライラからもらった黒いレースの飾りをぞんざいに投げ捨てて、踏みつけようとして。
冷たい笑顔で嘲笑って。
人狼になっても人間だった時の記憶は受け継いでいるはずなのに、人狼デイジーはそれに影響受けてたって言ったのに、人狼ソーヤーはそれも全部無くしてしまっていて。
初日「ソーヤー頼りないから(弱いから?)私がしっかりしないと」と言ったライラの言葉への意趣返しか、
最後トリニティの服を掴んで、「(人間は)弱っちい、こんなのも振り解けやしない」って言って。
1人残ったトリニティ(人間)の絶望は想像を絶する最悪だったんじゃないだろうか。
フランクお父さんを疑っていたのに、信じていた予言者バイロンがフランクを人間と言った事で、想定が全部崩れて。
人狼かもしれないとギリギリ悩みぬいて処刑したスチュアートとバロウズは人間で、朝起きたらフランクお父さんもいなくて。デイジーとソーヤーが人狼だと確定して。
混乱のまま、きっと理解の追いつかないまま、人狼ソーヤーの投げ捨てたライラのレースを守るように拾って。でも自分がもう助からない事を知って。
ああ、もう最初のオープニング(回想)で観たあのソーヤーとデイジーはもう居ないんだっていうのが、あの楽しく穏やかな村には2度と戻れないんだと、ひどく残酷に見せつけられる人狼勝利エンドだった。
これ、全部オープニング以外台本無しのアドリブって、本当に凄すぎる。
今回、癒しの夜回で、ユリウス先生がコールアンドレスポンスで「アナザー公演大好きー」と3回も言ってもらえてニコニコしていたのが良かった。
フィーナがどこの家に入りたいかとか、どのお父さんがいいかとか。フランク家はアクティブで、バロウズ家は守りで、スチュアートとソーヤーはすっぴん(オールラウンダー)で、みたいな話とか。
フリートークが癒し。
夜回が明るくあるから、亡くなった村人たちもこんなふうにワイワイ楽しく、もう誰も疑ったりころしたりしなくていい世界にいるんだろうなって、何だか悲しくも良かったねという気持ちになった。
結局、アナザー公演を3回見に行った。
予定が合わなくて、通常公演見れていない。
ほんとに辛いし悲しいし、村人勝利エンドも観たけれどあれもとてもハッピーエンドなんて言えないくらい辛かったし、人狼勝利エンドは絶望感しかないし……
狂陣はもう魔除けを壊さないで!!お願いだから!!!という気持ち。
狂陣が狂陣になった理由、みたいなのもあったりするんだろうか。
即興お芝居としても楽しいし、人狼ゲームとしても面白いし、人狼TLPTまた観たいなと思った。
人狼を当てるには、私はまだまだ全然修行が足りない。
あとやっぱり、村田さん(ソーヤー)の演技、好きだなと再度思うなど。また演劇あったら観に行きたい。
来月の神保町の「オプトーバー8」の公演も楽しみだな。
長くなったけれど、とりあえずここまで。