『きよしこの夜、プレゼン・フォー・ユー!』雑感

初めまして。広大なインターネットの中で、このページに辿り着いてくださってありがとうございます。弓束(ゆづか)と申します。アイドルマスターシャイニーカラーズを始めて1ヶ月半の新米プロデューサーです。まだまだわからないことだらけで、この記事内にも間違った部分などがあるかもしれません。その際は、ご指摘いただけると幸いです。また、『きよしこの夜、プレゼン・フォー・ユー!』のネタバレを含むので未読の方はご注意ください。

私はゲームが苦手なオタクです。苦手というよりも、興味が無い(だから知識もないし、上達もしない)と言った方が正しいかもしれません。アイドルマスターシャイニーカラーズ……シャニマスも、ゲームの遊び方そのものに魅力を感じて始めたわけではありません。

七草にちか実装で大盛り上がりしたシャニマス界隈では、多くのプロデューサーが彼女とその周辺の人物について言及し、いくつものプレゼンツイートが発生しました。そのプレゼンの中のひとつをTLで目にして興味を持ち、「このストーリーをもっと知りたい!」とシャニマスをプレイし始めました。本音を言えば、お金さえ払えばストーリーを読めるシステムにしてほしいなと思っていました。いや、過去形ではなく、今でもそう思っています。ゲーム開発者に対して大変失礼な発言をしてしまいましたが、要するに「もともとゲームは好きじゃないけれど、それを乗り越えてでもこのストーリーを読みたい」という思いでシャニマスを始めたのです。

プレイするうちに、元々お目当てだったにちかちゃんのコミュ以外にも、シャニマスには丁寧に紡がれた物語がたくさんあることを知りました。

しかし、にちかちゃんを優勝させるために試行錯誤を続けてきたため、「まだまだ無料期間はあるし、コミュは後で読もう」と先延ばしにして、ほとんど読めないまま無料期間が終わってしまいました。そのことを深く後悔しています。ものごとに優先順位をつけるのは、人生においてとても大切なことです。

昨日、やっとの思いで初のTrueEnd(にちかちゃんではなく、手持ちのSSRで一番特訓回数が多かった凛世ちゃん)と、にちかちゃんの初優勝を果たしたため、一旦プロデュースはお休みして、アルバムの鍵を使ってコミュを読むことにしました。

まず初めに解放したのは、P天(プロデューサーと天井社長のカップリング)をお好きな方々がおすすめしてくださった『きよしこの夜、プレゼン・フォー・ユー!』です。

このコミュでは、(当時はまだノクチルとシーズはいませんでしたが)283プロの所属アイドルが全員登場します。無料期間に『Light up the illumination』『廻る歯車、運命の瞬間』『五色 爆発!合宿 クライマックス!』『天塵』の4つしか読めなかった私にとって、ほとんど知らなかったアルストロメリアストレイライトのメンバーについても知ることが出来る大変お得なコミュでした。

読み始めてすぐに「テキストの飾り枠が可愛い!」と思いました。通常の薄いピンクのフレームではなくクリスマス仕様にデコレーションされていて、目でもクリスマスを楽しめる仕様なんだなと感動しました。(アプリゲームをめったにやらないのですが、イベントでテキスト周りのデザインを変えるのは良くあることなのでしょうか?)

19人が3~4人のチームに別れて、マラソンと実況中継を交互にやるため、それぞれのパートでアイドル全員の魅力を知ることができて満足度の高い内容となっていました。

「実況中継のトップバッターに任される結華ちゃんはさすが、有能だな」「チームピーちゃんは声も喋る内容も可愛らしいな」「自ら甘奈ちゃんの風よけを買って出る果穂ちゃんは優しいし、スタミナがあってすごいな」「冬優子ちゃんを支えるチームヘルメス、かっこいいな」「他ユニットのアイドルとも仲が良くてエールを送り合うけれど、やっぱりみんな自分のユニットの仲間が特別なんだな」……ここには書ききれないほど、アイドルに対して「可愛い、かっこいい、優しい、すごい、素敵」を繰り返していました。

しかしこのコミュでは驚くことに、クリスマスのお話であるにもかかわらず、裏主人公はアイドルではなく社長である天井努なのです。

表のテーマはトラブルに直面しても諦めないアイドルの奮闘であり、主人公は19人全員ということになります。ですが、その裏では中年男性の暗い過去と未来への展望が描かれ、文量は少なくともエピソードの濃度が異常に高く、テニスの王子様で例えると石田銀の波動球百八式ほどの威力でした。P天界隈に激震が走ったのも頷けます。

このコミュで私が天井努に抱いた印象と、そこから派生して、アイドルとプロデューサーの在り方について思うことを書いていきます。

オープニングで天井努の独白を聞いた時点でポエミーだと感じたのですが、「物語における心の声はこんなものだろう」と軽く受け止めていました。しかし、その後の「アイドル(おそらく、八雲なみ)」との会話でもポエミーな表現を多用しており、「天井努は心の声だけでなく相手を前にしても恥ずかしがらずにそうした言葉を発することができる人なのか」と思いました。そうできる理由は、彼が自身の声帯に自信を持っているからかもしれません。というのは冗談です。芸能界に身を置いているからか、あるいは彼個人の特性か、その二択だと思われます。個人の特性だとして、表現が日本人らしくないので、帰国子女だったり、洋画マニアだったりするのかもしれないなと勝手に想像したりしました。

にちかちゃんの優勝コミュでプロデューサー時代の天井努の話も少し聞いていたのですが、実際に天井プロデューサーとアイドルの会話を読んだら、心臓がスッと冷たくなりました。

地獄への道は善意で舗装されているというヨーロッパのことわざを体現したような会話でした。「善意でなされた行為が、かえって悪い結果を招く」という意味のことわざです(他にも意味はありますが、ここではそう定義します)。

彼は、彼女のためを思ってステップアップの場所を確保していました。それが彼女の幸せだと信じていたから。しかし、言いたいことも言えず飲み込む彼女は、前後の会話を知らない私が見ても明らかに幸せではないとわかりました。彼女が何かを言いかけても、「どうした?」と聞くことなくそのまま話を進める彼が心底恐ろしく見えました。特に気にならないということは、これまで彼女は何度も言葉を飲み込んできて、それに慣れきっているからではないか?と勘ぐってしまったからです。

言いたいことを言えない、というのは相当なストレスです。ましてやアイドルとプロデューサーという心を預けるべき間柄で。

シャニPなら、アイドルが何か言いかけたのなら「どうかしたか?」と必ず確認するでしょう。短期間プレイしただけでもそう思わせてくれるほど丁寧にシャニPの人柄を描写してくれたシャニマスだからこそ、この短い会話+断片的な情報だけでここまで不安な気持ちになったのだと思います。

アイドルの語源は偶像です。たとえ自然体が売りのアイドルでも、いつでもどこでもありのまま、とはいかないでしょう。それにしても、限度はあります。

アイドルは「商品」である以前に、ひとりの人間であることをゆめゆめ忘れてはいけないのだと思います。フィクションの話ではなく、周囲の大人が適切なケアを行わなかったせいでアイドルを辞めた女の子は現実に何人も存在します。ところで、ゆめゆめを漢字で書くと「努努」となるのですね。何気なく選んだ言葉なのに偶然でびっくりしました。

シャニPは「みんなのやりたいこと、しっかり実践していこう!」と言いました。ただやりたいことをやろう、ではなく「しっかり」やろうと。現に、約束の時間に間に合わず、真乃たちは海外ロケに行けなくなりました。何としてでも海外ロケに行かせるわけではなく、彼女たちの意思を尊重して決断しました。シャニPは、甘やかしではなく真の意味でアイドルを大切にできる人です。

ひとりの女の子の心を壊してしまった過去を背負う男が「――……お前ならば、きっと……」と思える相手と出会えたのは「救い」ですよね。

うまくまとまりませんでしたが、ここまで目を通してくださってありがとうございました。次は『明るい部屋』を読みます。

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