コンビニの変な店員(コメディ小説)
残業が終わり、ようやく俺は帰路に就いた。飯を作る気力もなく、コンビニで弁当を買うことにした。自動ドアが開き店内に入ると、店員の声が聞こえた。
「へい、らっしゃい!」
ここ、コンビニだよな。店内を見渡しコンビニであることを確認する。
「お客様、どうされました?」
「いやなんでも」
店員がおかしいだけか。とりあえず買うもの買って帰ろう。
俺は適当に商品を選びレジに置いた。生憎、店員はひとりしかいない。あまり関わりたくないが仕方ない。
「弁当一点、緑茶一点……」
いちいち言う必要あるか?
「エロ雑誌一点!」
「おい、こらぁ!!」
「お客様、どうなさいました?」
「なんで最後だけ声でけぇんだよ」
くそっ、ほかの客に聞こえちまってる。なんなんだこの店員。
「申し訳ありません。少し興奮してしまいまして」
「店員が興奮すんじゃねぇ」
なんなんだこの店員(二回目)。
「お弁当温めますか?」
「ああ、お願いするわ」
「緑茶も温めますか?」
「あんた、そのまま温める気か」
「ダメですか?」
こんな奴に店任せてるとか、店長もヤバいんじゃねぇの? もしかしてこいつが店長……はないよな。
「耐熱容器に移すから大丈夫ですよ」
「そういう問題じゃねぇ。俺は冷めたまま飲みたいんだよ」
「かしこまりました。ではお弁当温めますね」
「おい、ちょっと待て。それトースターだろ」
レンジのひとつくらい用意しとけよ。よく営業できてるな。
「もういいよそのまんまで」
「中身を出して一つずつ温めればどうにかなるかと……」
「時間かかるわ」
もうこいつと話すのも疲れてきた。さっさと帰りたい。
「失礼しました。では、お会計が税抜き814円になります」
小銭はめんどくさい、千円札出そう。
「消費税は3%、5%、8%、10%どれになさいますか?」
「税率選べんの!?」
「はい、当店オリジナルのサービスです」
斬新すぎんだろ。
「じゃあ、3%で」
「3%でしたら49186円の不足です」
「は?」
「当店では5万円以上の購入で3%、1万円以上で5%、5000円以上で8%を選択できます」
「先にそれ言えや!」
結局10%かよ。つーか、こいつ意外と計算早いな。
「いくら払えばいいんだ」
「895円です」
俺は財布から千円札を出した。
「1000円お預かりします。900円だったらおつり五円でご縁があったのに」
「どうでもいい」
「お客様、商品は袋に入れますか?」
「ああ、入れる」
「サイズはL、M、Sのどれになさいますか?」
ポテトかよ。
「Lでいいよ」
「かしこまりました。袋L入りまーす!」
「何だよ今の」
「すみません。僕、飲食店で働いた経験がありまして、つい癖で」
「ビックリするからやめろ」
こいつやっぱりおかしいわ。俺は嘆息して踵を返す。
「またのご利用お待ちしております!」
「二度と来るか」