ひとり社長が気をつけるべき孤独との付き合い方



はじめに

ぼくはひとり社長という働き方を推奨しています。自分で決断し、自分で動くことで効率が上がり、余計なストレスも減らせるからです。ただし、ひとり社長を続けるうえで怖いのが「完全な孤独」に陥ることです。

自己完結しやすい構造だからこそ、あえて意識的に他者とのつながりを持つ機会を作らないと、いつのまにか「誰にも相談できない」「孤独でおかしくなる」という状態に陥りがちです。

今回は、この「ひとり社長と孤独」の問題を深掘りしながら、どんな行動を取ると精神的にも事業的にも健全でいられるのかを考えてみたいと思います。

ぼくがひとり社長を推奨する理由

そもそも、なぜぼくはひとり社長を推奨しているのか。

それは「迅速な意思決定とフットワークの軽さ」が大きなメリットだからです。組織が大きくなると、どうしても会議や承認プロセスなどのステップが増え、スピード感が失われます。

しかし、ひとり社長ならすべてを自分の判断で決められます。

もちろん、ひとりで事業を回すためにはそれなりのリスク管理能力やスキルが必要ですが、そのぶん柔軟性も高く、「こうしたい」と思った瞬間に行動できるのは大きな魅力です。

しかも規模が小さいぶん、ミスやトラブルがあってもリカバリーはしやすいと考えています。

孤独がもたらすメリットとデメリット

ひとり社長には、仕事上のストレスが他者と比べて少なくなるというメリットがあります。組織内の人間関係に煩わされることなく、自分のペースで仕事に没頭できるのは大きいです。

さらに、誰にも邪魔されない集中力が得られるので、ある種の“ソリチュード(solitude)”を楽しめる環境ともいえます。

ただし、その一方で「誰にも相談せずに突き進んでしまう」リスクがあります。自分の判断がすべてなので、成功すればいいのですが、万が一ミスしたときにストップをかけてくれる人がいないのです。

失敗だけでなく、精神的な負荷が大きくなったときに気づかないまま限界を超えてしまうケースも少なくありません。行き詰まった状態でも「周りに相談できる人がいない」という孤独は、想像以上に苦しいものです。

solitude(ソリチュード)とloneliness(ロンリネス)の違い

ぼくが今回のポストで強調したいのは、「solitudeはいいけどlonelinessはダメ」という点です。日本語だとどちらも「孤独」と訳されがちですが、実際は意味が微妙に異なります。

・solitude(ソリチュード):自分の意志でひとりの時間を持ち、自由や創造性を楽しむ積極的な孤独
loneliness(ロンリネス):孤立や寂しさを感じ、心が蝕まれていくような消極的な孤独

ひとり社長は、自分のスタイルで仕事をコントロールしやすいので、うまくいっているときはsolitudeの境地に入りやすいです。

しかし調子を崩しているとき、あるいは予期せぬトラブルに遭遇したときに「誰にも助けを求められない」と感じてしまうと、lonelinessへ転じやすくなります。

これが続くと精神的に不安定になり、事業にも大きな悪影響が及ぶのです。

孤立を防ぐための具体的アクション

では、lonelinessに陥らないためにはどんな行動をとればいいのでしょうか。ぼくは以下のような方法をおすすめしています。

1. 定期的に誰かと話す機会をつくる
ひとり社長とはいえ、誰とも会わない、話さない状態が長く続くのは危険です。

あえて毎週1回でも2回でも、ZoomやLINE通話などで友人や同業者と雑談する場を設けましょう。

大きな悩みがなくても、「こんなこと考えてるんだけど、どう思う?」と軽く意見交換するだけでも気が楽になります。

2. オンラインコミュニティや勉強会への参加
同じ業種、あるいは興味分野が近い人たちが集まるオンラインコミュニティや勉強会に参加してみるのも手です。

自分の知らない世界の知見が得られますし、「意外と同じ悩みを持っている人がいるんだ」と分かるだけで心の支えになります。

3. 誰かにアドバイスする機会を設ける
自分より経験の浅い人に対してアドバイスをする場に参加するのもおすすめです。悩みや課題を聞くことで、自分の置かれている状況を客観視できるメリットがあります。

悩みを相談される側になると、「そういえば自分のときはこうだった」と振り返るきっかけにもなるので、孤独感の強まるループから抜け出しやすくなります。

4. フリーランスや個人事業主の相談窓口を活用
自治体や各種支援機関が、個人事業主や中小企業向けに相談窓口を用意している場合があります。

事業計画の立て方や資金繰りの相談など、ビジネス面でも心強い専門家のアドバイスが受けられるので、「ひとりではどうにもならない」と思ったときは、一度足を運んでみるといいでしょう。

5.一人ではなく「伴走者」をつくる
ひとり社長といっても、絶対にすべてを一人でやる必要はありません。

業務委託などで一部を外注したり、パートナー契約を結んだりして「伴走者」を得る方法もあります。相談相手になってくれる人がいれば、情報交換も円滑になりやすいですし、精神的にもずっと楽になるはずです。

孤独をあえて“デザイン”することの大切さ

ぼくはひとり社長の一番の魅力を「自由度の高さ」だと考えていますが、その反面「誰にも頼れない」という不安定さも抱えています。

だからこそ、「どのタイミングで誰と交流するか」をあえて自分でデザインすることが重要です。

誰かの予定に合わせるのではなく、自分のリズムで人と交流する。これこそがひとり社長の利点を最大化するコツではないでしょうか。逆に言えば、孤独を完全に放置していると、いつのまにかsolitudeがlonelinessになってしまう危険性があります。

自分でしか自分の孤独を管理できない立場だからこそ、積極的に孤立を防ぐ仕組みを作る必要があるのです。

まとめ

ひとり社長という働き方は、自己完結で動けるぶんスピード感があり、自分のやりたいことを実現しやすい魅力的な形態です。とはいえ、その裏には「孤立に陥りやすい」というリスクが潜んでいます。

solitudeとlonelinessは紙一重で、意識的に他者とのつながりを確保しないと、ある日突然「孤独で辛い…」という状態になりかねません。

ぼく自身、そもそも妻と愛犬がいるから安定しているものの、さらにSNSをしたり、定期的にオンラインで人と話をする場を持ち、情報発信を通じて相談を受け付けることで、孤独感を和らげつつ事業を進めていると感じています。

もし今、ひとり社長を始めたばかりの人やこれから独立を考えている人がいたら、「孤独=良いこと」というイメージだけを過信せず、「自分のメンタルを安定させる仕掛け」を早めに導入しておくことをおすすめします。

ビジネスの継続や拡大は、健全な心身があってこそ。ぜひ孤独をデザインする意識を持ちながら、自由度の高いひとり社長ライフを楽しんでほしいと思います。


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