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涙のしみ
イラストを描く仕事をしているつかはらです。
先日、高校時代の美術の先生の作品を銀座のギャラリーに見に行きました。
というのも、私の絵を一番に知ってくれたプロって先生だと思うのですよ。
弟の宿題手伝ったら先生に「やっぱり姉弟なのね、作風似てるのね」と言われてヒャッとなりました。
それくらいちゃんと私の作品を見てくれた方なんですよね…
だからずっと先生の作品を見たいと思っていて
でも毎回、情報を検索するたび終わった直後で、今回も個展は終わったばかりで色んな方の作品が集まるグループ展でした。
元々、抽象画でどういう作風かは知っていたものの
ギャラリー入ってすぐに作品見て先生の作品だとわかりました。
作品の中に先生がいる感じがしたんです。
なるほど、その作品名は「raison d'etre」でした。
レゾンデートル。
つまり「存在理由」「存在証明」…先生の存在がしっかりそこにありました。
まぁ影響受けやすいので自分も同じテーマで描こうと思ったんです。
でも…何も描けなかった。
何も描けなかったのは、私には「raison d'etre」が見つかっていないからです。
いや、ないからでしょう。
なんとなく指をポンと置いたその点だけが、キャンバスに残りました。
もう本当に見えないくらいの。
見えます?
そこに残った涙のしみみたいなポツンとした跡。
きっと数分で乾いて消えるような、ちょっとした「しみ」。
たぶんそんなすぐに消えてなくなるくらいの理由や価値しかないのでしょう。
だけれども。
理由や価値がなくても、存在するのです。
涙のしみみたいに。
先生の作品を見てまた色々教わった気がします。
私にとって、大事な先生、そして偉大な画家です。
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