10月を待って。(告知あり)
おはようございます。こんにちは。
イラスト・漫画を描いているつかはらゆきと申します。
肩書きを変えようかなとも思っていますが、ちゃんとぜんぶの準備が揃ったら改めて公表したいと思います。
ずっとスランプでした
私は数年、そう長い間ずっと「スランプ」に入っていたと思います。
そうは言っても描いても気に入らないだとか、ぜんぜん何も描けない…というわけではありません。
「何が描きたいのかわからない」
自分がやりたいこと・描きたいもの、それが全くなくなってしまった…と感じていたのです。
15年以上前に解散した大好きだったバンドのボーカルは
「歌にできるだけの怒りみたいなものがなくなってしまった」
というような理由で音楽を自分で演ることをやめてしまいました。
なんだかずっとそれが「わかる」と思っていました。
ただ本当になくなってしまったのなら、もう絵を描かない選択肢があったと思うんです、そのバンドのボーカルのように。
それでも私は絵を描く・絵を続ける方を選んできました。
明確に「何が描きたいのかわからない」という事態に陥ったのは、ひとりの大事な方を亡くした時でした。
そのときなくしたのは…
その大事な方は好きなバンドを通じ知り合った方で
私が会社員だった頃から色んな制作物をほめてくださったり
自営になれば経費関連の相談に乗ってくださったり(会計士だったので)
展示をすれば必ずいらして素敵なひとことを残してくださいました。
応援というか少なくともこの方は「何かを描けば見てくれる」という
ささやかな自信をくれていたのだと思います。
それは私が何かを作り続けるには十分でした。
その方の訃報で私は「何かを描けば見てくれる」から、ただただ「何が描きたいのかわからない」に変わってしまったんです。
実は「何が描きたいのかわからない」はその訃報が直接の原因ではなくもっとずっと前からあったものでした。
絵が描きたくて会社員を辞めたのに、何が描きたいのかわからなくなってしまった。
けれど、絵を描かないと日々の活動もできないしお金も入って来ないので
思えば色々無茶をしながらやってきたんだなと思います。
作品を知っている人のことば
友達に紹介されたCafe lampというお店で3年前に個展を開催しました。
この個展の前にはすでに完全な「スランプ」に陥っていました。
コンセプトを立ててしまえばカタチになる、のは良し悪しですね。
「描きたいものはわからない」から「展示の仕方」にコンセプトをスライドして開催しているわけです。私ってば姑息(笑)
7月このCafe lampにお邪魔してきました。
その時に話の流れは忘れてしまったのですが私は店長かおりさんにこう言ったんです。
「私の作品は変なので」
かおりさんの表情がサッと変わって「変ではない」ことを力説されました。
前回の個展で作品を1か月毎日見てきたかおりさんなので、当然作品を知った信に足る言葉です。
そこで私は「私の作品を変だと思わされたことがあったんだ」と気づいたんです。
かけられた呪い
もともとかおりさんは共通の友達から紹介されて個展を開催する運びとなりました。
というのも、その前にお世話になっていたギャラリーで「二度と展示をしたくない」という気持ちが強くなって紹介してもらうことになったんです。
二度と展示したくないと思ったのはギャラリーのオーナーが原因でした。
周りにも似たような思いを持ったイラストレーターさんが何人かいたので、私だけが何か悪かったのではないとも感じていました。
そのギャラリーオーナーは私の作品をこう評しました。
「気持ち悪い」
「そんなのが良いと思ってるの」
アニメ画っぽいものが嫌いな人もいるし、
美人画を描いている人でアニメイラストぽいものを「気持ち悪い」と評している方もSNSで見かけたことがありました。
そういうもののひとつ、なのだろうと思いました。
でも自分に向かって放たれ、自分の作品を直接に貶められたことは
しっかりと呪いとして私の心をズタズタに切り裂いていたんです。
自分の描きたいものは「気持ち悪い」
自分の描きたいものは「そんなのが良いと思ってるの?」と言われるようなものだ
そうして私は「何が描きたいのかわからない」スランプに陥りました。
描きたいものを描いていい
かおりさんは「ぜんぜん気持ち悪いことはない」と必死で伝えてくれて、
お店の中でも新しいタイプの作品だったと喜んでくれていました。
そうしてやっと「描きたいもの」を取り戻せたのです。
私は人の感情を、人の表情を、描きたい。
スランプ前の作品では確かに人の表情を描いているんですが、
だんだんとスランプが悪化していくにつれて「顔」を見えないように見せないように描いているのがわかります。
顔を描いていても一貫して無表情に描いています。
そういう作品たちを並べると、気持ち悪いという呪いで一番描きたいものを封印してきたとわかります。
でも私がすぐ私の描きたいものがわかったのは、呪いが解けて作品を見返したからだけではありませんでした。
毎週描いていた大河のイラストによって、俳優さんたちの巧みな表情を描くのがなにより楽しいと実感していたからです。
そうやって描き続けていた今だから言えるのだと思います。
私は人の表情を通して感情を伝えられるような絵が描きたいんです。
描きたいものを展示します
私の描きたいものを掘り起こしてくれたかおりさん。
彼女のお店「Cafe lamp」で2回目となる個展を開催します。
やっと描きたいものを描いて、それを初めて見てもらえる機会になります。
やっぱり変だったらどうしようという不安もたくさん抱えていますが
ぜひお誘いあわせのうえ、いらしてください。
10月を待って。