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震災の記憶

第7章   妻の死    【前編】

息子が中学校に入学した。

息子はテニス部に入った。
周りは小学校からテニスをしていた子たちが多くいる中、
息子は初めての部活でいちばん下手くそ。
何をしていいかもわからず、ぼーっと突っ立っていた姿をみた。
「大丈夫かな」
と親心は心配であったが、
毎日、部活を頑張る息子を見守ることにした。

妻は、少し体調を崩す時もあり
何度か通院もしていたが、様子を見ながら
生活をしていた。

震災から7年を迎えた3月中旬ごろ。
急激に妻の体調が悪化した。

「頭が痛い。」
不調を訴える妻。
病院に受診したが、既往の病気もあって
思うように検査が受けられず
肩こり と診断され、薬を貰って帰ってきた。

それから数日経っても体調は芳しくなく
妻はベッドで休んでいた。

私も心配で、私の仕事が終わったあと
もう一度受診をしようと話をしていた。

その日は生憎、
いつもより少し仕事が終わるのが遅くなり
ようやく帰宅し、受診のために準備をしていた。

すると突然2階で休んでいた妻が
凄い勢いで降りてきた。

「頭がいたい!!!!!!!!」
凄い形相だった。
その後すぐにもっと強い力で私の肩を掴み
私の耳元で声にならない声で
何か囁いたあと、意識を失った。

聞き取ることができなかったが

「息子を頼むね。」
と言ったように感じた。

「どうか助かってくれ!!!!」
「生きてくれ!!!」
「目を開けてくれ!!!声を聴かせてくれ!」
「笑顔を見せてくれ!!!」

ただそれだけを考え、それだけを願い
それだけを信じながら救急車に乗り込んだ。


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