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【オペラ日記 3】ローマ歌劇場来日中 「トスカ」あと2公演間に合います
現在、ローマ歌劇場が来日中です。
アフターコロナのオペラ来日公演として、今年6月にパレルモ・マッシモ劇場が来て、イタリア・オペラの空気を再度日本に届けてくれましたが、今回のローマ歌劇場はさらに大がかりです。やっとフル装備のオペラ引っ越し公演が帰ってきました。
演目はヴェルディ作曲「椿姫」とプッチーニ作曲「トスカ」の2つですが、私はトスカの方に集中することにしました。
「トスカ」はローマ歌劇場の前身の劇場で1900年に初演で、ローマ歌劇場の思い入れが強い作品です。往年の大演出家、ゼッフィレッリの手掛けた大掛かりなセットが日本に持ち込まれました。これは宣伝にたがわず、迫力があってすごかった。設営の光景はまさに建設現場のようでしたし、壮大なセットの中で、歌手たちが小さく見える位でした。作りも繊細で、本物の舞台を目にした感動がありました。
こちらが横浜の神奈川県民ホールに設営されたセットの様子(ローマ歌劇場Instagramより)
「トスカ」の初日の9月17日は、神奈川県民ホールでの公演でした。歌姫トスカ役は今をときめくトップ・ソプラノ、ブルガリア出身のソニア・ヨンチェヴァ、その恋人で画家のカヴァラドッシは、イタリアン・テノール、ヴィットリオ・グリゴーロ。「今望みうる最高の配役」という宣伝文句は嘘ではないと思います。
トスカはソプラノの役でも強い声が必要な役で、叫ぶようになってしまう(私はそう感じます)歌手が少なくない中、ヨンチェヴァの声はあくまでも美しくのびやかでした。「トスカ」の一番有名なアリア(独唱曲)、”Vissi d'arte, vissi d'amore”(歌に生き、愛に生き)も、あんなに繊細に歌われることはそうそうありませんので、本当に貴重な歌唱を聴かせてもらいました。
グリゴーロも、子どもの頃に羊飼い役でパヴァロッティと共演して以来憧れ続けた特別なカヴァラドッシ役を、今世界中で歌いまくっています。得意となったこの役を、サービス精神旺盛に、たっぷりと力強い美声を響き渡らせて楽しませてくれました。トスカだと出番が少ないのが残念です。ヨンチェヴァとは旧知で現実でも仲良しなので、恋人役も非常にやりやすそうで、遠慮のないイチャイチャっぷりに観ている方が赤面ですが、それもまた日本のオペラではなかなか見られない来日オペラの楽しみですね。
「トスカ」初日の舞台写真(ローマ歌劇場Instagramより)
悪役スカルピア役のロシア出身のバリトン、ロマン・ブルデンコは、美声です。すごく品があるスカルピアで、まだ39歳ということもあり、スカルピアもよいのですが、別の役でも聴いてみたいな、と思いました。楽屋口で拝見したところ、素顔がベビーフェイスでかわいらしい方で、スカルピア役とのギャップにびっくりでした。
この主役三人は8月にも同じメンバーで、ヴェローナの音楽祭で「トスカ」を歌ってきたばかりで日本に来日ですから、贅沢な布陣です。
オーケストラに関しては、正直あまりピンとこなかったのですが、トスカとカヴァラドッシの恋人同士での甘やかなシーンでは、アモーレ(愛)の国イタリアらしいキュンキュンな感じが出ていたかなぁという感想です。ローマ歌劇場が2014年と2018年にマエストロ・リッカルド・ムーティと来日した際には、えらく感動した覚えがあります。特に2014年の「シモン・ボッカネグラ」では、オーケストラを通じてジェノヴァの海がきらめく様子が見えたほどですから、真の実力はこんなものではないと思っています。マエストロ・ムーティの指揮が素晴らしいということかもしれませんが、昨年音楽監督に就任したマエストロ・ミケーレ・マリオッティとともに更なる進化を遂げることを期待したいです。
そう考えると、東京・春音楽祭での今年4月の演奏会方式の「トスカ」は、オケが読売日本交響楽団でしたが、イタリアの歌劇場のオケにひけを取らない演奏ぶりでした。改めて、緊迫感が半端なかったです。名演でした。
今回のローマ歌劇場の公演では、歌手は初日より一週間以上も前に来日していて、インスタ等で見ていると、じっくりと公演の準備をしていった感があります。トスカ組は横浜で初日まで滞在していて、神奈川県民ホールでの出待ちでの歌手たちのファンへの神対応を見ると、日本での時間を楽しんでくれているようでした。
トスカは本日(9/21)が東京文化会館に場所を移しての2日目、あと9/24(日)と9/26(火)の2回の公演が残っています。チケットはそれなりの😆金額なのですが、ゴージャスなセットと声を楽しめるまたとないチャンス。気になった方は是非、東京文化会館に足をお運びください。
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