2021年12月07日の脚本「配達の踊り人」
ランダム単語で出たのがこちら。
今回はそれをテーマとして書きました。
「配達の踊り人」(脚本)
登場人物表
あらすじ
〇脚本本文(横書き)
〇 バレエ団・スタジオ内
軽やかに飛び、舞い、バレエ踊っている、団員たち。
〇 バレエ団・スタジオ・外観
窓から、クラシックの音楽が鳴っている。
看板には「立花バレエ団」と書かれている。
その前を自転車で走る、江原麻里奈(20)。麻里奈は配達屋の恰好をしている。
〇 道
自転車で走る、小鳥遊直人(20)と。
曲がり角を曲がると麻里奈は直人とぶつかる。
転がる麻里奈。
倒れる直人。
直人「いってぇ…」
道には麻里奈の配達用のチキンが転がっている。
倒れたままの麻里奈。
上を見ると、太陽が麻里奈を照らしている。
麻里奈「…」
直人「(麻里奈の顔を覗き込み)大丈夫…?」
直人の顔が目の前にある麻里奈。
麻里奈「…」
〇 病院・外観
〇 同・待合室
ベンチに座っている直人。
麻里奈「ありがとうございました」
病室から出てくる麻里奈。
直人「大丈夫?」
麻里奈「…どうもすみませんでした」
石山圭吾(30)がやってくる。
圭吾「江原さん」
麻里奈「?」
圭吾「接触事故って…」
麻里奈「ああ…」
圭吾「こちらの方?!」
直人「僕は大丈夫ですよ。丈夫なんで」
圭吾「うちのしがないバイトが大変失礼いたしました」
直人「いえいえそんな。僕もよそ見していたので」
圭吾「ほら、頭下げて」
直人「いやいいですよ」
圭吾「そんなわけには」
麻里奈の頭を無理くり、下げさせる圭吾。
圭吾「大変申し訳ございませんでした」
麻里奈「…」
直人「…」
圭吾「治療費はこちらがお支払いしますので」
直人「…」
圭吾「ほら、ちゃんと謝って」
もう一度、麻里奈の頭を無理くり、下げさせる圭吾。
麻里奈「どうもすみませんでした」
圭吾「大変申し訳ございませんでした」
直人「…」
〇 道・バレエ団前(夕)
トボトボ歩く麻里奈。
ふと立ち止まる。
クラシックの音楽が聴こえてくる。
窓からは片瀬春菜(20)が練習している姿が見える。
麻里奈「…」
直人がやってくる。
直人「あの…!」
麻里奈「?」
直人「これ」
直人から小袋を渡される、麻里奈。
袋の中には麻里奈が配達しようとしていたチキン。
直人「無事だったやつ」
麻里奈「…いりません」
直人「え?」
麻里奈「もうクビんなったので」
直人「それ、僕のせいっすよね?」
麻里奈「…事故のせいです」
直人「じゃあ僕のせいじゃないですか」
麻里奈「…」
直人「すみません」
麻里奈「なんであなたが謝るんですか?」
直人「いや、さっきもあの人が無理やり謝らせたじゃないっすか」
麻里奈「別に大丈夫です、もう会いませんから」
去ろうとする麻里奈。
直人「待って」
チキンの袋を見せ
直人「これ、一緒に食べませんか?」
麻里奈「?」
直人「謝罪はいらないので、一緒に食べて欲しいんです」
麻里奈「…」
〇 公園(夕)
ブランコに乗っている麻里奈と直人。
缶ジュースとチキンの袋が地面に置かれている。
チキンを頬張る、直人。
直人「これ、美味しいですね」
麻里奈「…」
直人「バレエやってたんですか?」
麻里奈「?!」
直人「なかなかいないですよ。あんなとことで立ち止まる人」
麻里奈「…」
直人「お姉さんも訳アリですね」
麻里奈「お姉さんって…」
直人「だからなのかなぁ…」
麻里奈「?」
直人「なんか、お姉さんのこと、気になって」
麻里奈「…」
直人「俺、中学の時、ずーっと野球部だったんです。で、肩壊しちゃって。それで野球辞めたんです。高校に入って、サッカー部に入ったら、今度は膝壊しちゃって。それでスポーツ諦めたんです。どっちも大好きで、いい線行ってたのに、おかげで高卒でフリーターですよ」
麻里奈「…」
直人「頑張れば努力は報われるってよく言うじゃないですか?あれは絶対
ウソですよね」
麻里奈「それは…そうだね」
直人「お姉さんもケガで?」
麻里奈「まぁ…」
直人「そっかぁ…そうだったんすね…。じゃあ、もう見れないのかぁ…」
麻里奈「…え?」
直人「ほら、俺もウーバーなんで。この辺よく通るんですよ。だから、あなたが踊っているのがいつも見えて」
麻里奈「…」
直人「夜遅くまで今日も頑張ってるなぁ~…俺も頑張るかぁ…って。あの人の頑張りは報われるといいなぁっていつも思ってたんです」
麻里奈「…」
直人「最近見ないなぁ…と思ったら今日ぶつかったのが…」
麻里奈「…」
直人「ドラマみたいな話っすよね」
麻里奈「…これがドラマなら、この後の展開って何?」
直人「え…んー…えっと…恋、ではないっすね。たぶん…いや、俺の希望は主人公が諦めかけた夢を追いかける~とかですかね?」
麻里奈「それ希望すぎるでしょ」
直人「まぁ、そうっすね…」
麻里奈「ドラマでなら、そうかもね。でも一度ダメになったものは簡単にもとには戻らないよ」
直人「じゃあこういうのはどうっすか?主人公は出会った若き青年のためにもう一度、最後に最高の踊りを披露する」
麻里奈「…」
直人「ダメっすか?」
麻里奈「…」
直人「俺、一応あなたのファンなんですけど」
麻里奈「私の踊りはそんな安くないの」
直人「やっぱ現実はドラマみたいにはいかないっすよねぇ…」
麻里奈「…」
直人「じゃあさっきの」
麻里奈「?」
直人「実はファンだった主人公の青年と恋を始めるっていう物語は…ナシっすか?」
麻里奈「……(微笑みながら)無しだね」
直人「(微笑みながら)ですよね」
〇 バレエ団・スタジオ内
T「一年後」
掃除をしている、麻里奈。
春菜「麻里奈~。次の公演のことなんだけど」
麻里奈「うん」
麻里奈の周りに団員が集まってくる。
〇 道・バレエ団前
自転車で通る、直人。
ふと立ち止まり、窓から見える麻里奈の笑顔を見て、再び
自転車で走り出す。
(了)
コメントや感想もよろしくお願いいたします~
仕事依頼&過去作品はこちらから
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?