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【臨床工学技士】役割の拡大とその影響
はじめに
近年、医療の高度化とともに、臨床工学技士の役割が拡大している。特に2021年の法改正により、新たな業務が追加され、臨床工学技士の社会的需要が高まっている。一方で、業務負担の増加や責任の重さが課題となっている。
本記事では、臨床工学技士の現状と業務範囲の拡大がもたらす影響についてまとめる。
臨床工学技士の現状
臨床工学技士の総数は全国で約30,408名であり、そのうち病院勤務が22,653名、一般診療所勤務が7,755名である。医療従事者全体に占める割合は小さく、全国の病院の約43%でしか臨床工学技士が配置されていない。このことから、まだ多くの病院で臨床工学技士の役割が十分に認知されていない可能性がある。
また、臨床工学技士の主な業務は医療機器の操作や保守管理であり、特に人工呼吸器や血液透析装置、心肺補助装置などの高度な医療機器の管理を担当する。医療技術の進歩に伴い、新たな機器が導入されるたびに臨床工学技士の業務範囲も変化しており、その適応力が求められている。
業務範囲の拡大とその影響
2021年の法改正により、臨床工学技士の業務範囲が大きく拡大した。新たに追加された主な業務は以下の通りである。
静脈への穿刺
電気刺激を与える機械の操作
内視鏡手術のビデオカメラ操作
人工透析業務における動脈への穿刺
これらの業務は従来、主に医師が担当していたものであり、臨床工学技士の責任が増すことになった。この業務拡大による影響として、以下の点が挙げられる。
1. 業務負担の増加
新たな業務を遂行するためには、新しい技術や知識を習得する必要がある。また、患者の安全に直結する業務が増えたことで、臨床工学技士の責任も重くなった。さらに、一人当たりの業務時間が延びる可能性があり、負担の増加が懸念される。
さらに、医療現場では人員不足が続いているため、新たな業務が追加されても、それを担当する人員の増加が十分でないケースも見られる。このため、業務の負担が一部の技士に集中し、結果として長時間労働や精神的ストレスの増加が問題視されている。
2. 社会的需要の向上
業務範囲の拡大により、臨床工学技士の配置が進んでいなかった病院でも新たな需要が生まれる可能性がある。また、専門性が高まることで、職種としての認知度や評価が向上することが期待される。
特に、遠隔医療や在宅医療の普及に伴い、病院以外での臨床工学技士の活躍の場が増えると予測されている。例えば、在宅人工呼吸器や在宅透析の管理をサポートする技士の需要が高まることで、新たなキャリアパスが生まれる可能性がある。
3. 医療チームの役割変化
臨床工学技士が医療行為の一部を担うことで、医師や看護師との業務分担が変化し、チーム医療が促進される可能性がある。これにより、医師の負担軽減や診療の効率化が進むと考えられる。
また、病院では複数の専門職が連携する「多職種協働」が重要視されており、臨床工学技士が他の職種と連携しながらチーム医療を実践する機会が増えている。特に救急医療や手術室では、臨床工学技士の役割が不可欠となりつつある。
課題と今後の展望
業務範囲の拡大に伴い、臨床工学技士の負担を軽減するためには、以下の対策が必要である。
人員の増強:業務負担を分散するために、臨床工学技士の育成と増員が求められる。
業務の効率化:タスクの再分配や最新技術の活用により、効率的な業務遂行を図る。
継続的な教育・研修:新たな業務に対応できるよう、定期的な教育やスキルアップの機会を設ける。
キャリアパスの多様化:病院勤務だけでなく、在宅医療支援や医療機器メーカーでの活躍など、多様なキャリアの選択肢を整備する。
臨床工学技士の役割は、今後さらに拡大する可能性がある。医療技術の進歩に対応しながら、現場の負担を軽減し、より良い医療を提供するための体制整備が求められている。加えて、臨床工学技士自身が積極的にスキルアップし、医療チームの一員としての役割を強化することが、医療の質向上につながる可能性がある。
参考ソース
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[7] https://www.jaefce.org/qa/required-number/
[8] https://ja-ces.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2024/08/4_2020業務実態調査_No71.pdf
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[22] https://www.wantedly.com/companies/company_7017771/post_articles/492695
[23] https://www.tcm.ac.jp/contents/column/post-113/
[24] https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/000691018.pdf
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