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デザインシステムにおける意思決定の質を上げる方法

こんにちは。クラウドワークスでデザイナーをしていますYUCCAです。

デザイン基盤チームでは、プロダクトや組織が成長・変化していく中でも品質を担保しながら拡張していける仕組みを作るべく、プロダクト開発としての技術的負債文脈や生産性文脈でのデザインシステム開発に取り組んでいます。

詳しくはこちらの記事に記載しています

デザインシステムに関わってかれこれ3年程になりますが、デザインシステムを作る上での壁にぶち当たるポイントってたくさんありまして……その中でもプロジェクトを前に進めていく上での「判断基準を身につける」事が難しい。
今回は「デザインシステムにおける意思決定の質を上げる」をテーマで弊社ではどうやっていったかをお伝えできればと思います。


前提として

  • crowdworks.jp (2023年3月末時点で、当社提供サービスのユーザーは558.8万人、クライアント数は90.5万社)のプロダクトを通常運用しながら、新しいデザインシステムnormanとしてUIコンポーネントを開発している

  • 「新規UIコンポーネントと既存のUIコンポーネントライブラリとどう置き換えていくか」という制約を含めた複雑度と向き合いながらデザインシステムの推進をしている

チーム構成・文化

  • チーム構成は、チームリーダー(職種はデザイナー)が1名、エンジニアが1名、デザイナーが3名、POが1名

  • 複数の案件施策も抱えているので皆、兼任という形でやっている

  • 基本的に民主主義で、とことん議論を重ねて物事を進めている

  • 最終的な意思決定はチームリーダーが行う

私の立ち回り

  • チームリーダーとしてデザインシステムチームを推進していく役割をしています(チームの目標設定・期待値調整、プロジェクトの進捗管理、最終的な意思決定役、社内外へチームの価値をデンタツetc…)

  • 並行して、新卒デザイナーの研修プログラムの企画推進や、一部研修内容の設計、デザイン組織周りのタスク、採用対応、新規チームや新規施策の立ち上げ・デザイン実務に繋げるまでの進行など、デザインプロセスにおけるオペレーションや調整業務・実行を行なっています

決まらないのは何が足りていない?

このように、普段の業務の中で意思決定をするシーンはたくさんあるのですが、デザインシステムにおける「判断基準を身につける」ことは難しいものでした。

何が難しいのか。具体的にあげると
1)UIコンポーネントの要件を作る上での調査スコープが分からない
2)UIコンポーネントとしてどこまで品質を担保すれば良いのか分からない
3)UIコンポーネントの分類観点、運用観点を含めてベンチマークするべきところが分からない

今振り返るとこれらの3大分からない問題を抱えたままだったので、判断基準が明確ではなく「決まらない」という事が起こりました。

正確には、最終的な決めの問題で、その瞬間では「えいや」で決められていました。しかし、あとになって「これってここも必要なんじゃ?」や「やっぱり〇〇の観点から、こっちの方にしておいたほうがいいね」といった、要件の手戻りが出てくるのです

とはいえ、既存の画面の制約を無くしてゼロから作り直すわけにもいかず、かといって、既存のサービスの全画面をひとつひとつ調査する時間もお金もありません。
2022年の9月末、そんなこんなで頭を悩ませていたタイミングで、@kentaro さんのLTを拝見する機会がありました。
意思決定と生産性の関係の話です。

生産性には、仕事量(レベル1生産性)、付加価値(レベル2生産性)、実現付加価値(レベル3生産性)の3レベルがあると。

デザインシステムにおける意思決定の話はレベル1生産性の話になるので、レベル1生産性では、「意思決定のスピード」と「意思決定の質」に依存。

今回の場合、「意思決定の質」を上げる為のアプローチを取る必要性があると思いました。
チーム体制的にデザイナーは複数人でUIコンポーネントを作っていくので、なるべくわかりやすい形で要件定義時の判断基準を明確に言語化する必要があります。

レベル1生産性 = 意思決定のスピード(効率性) × 意思決定の質(有効性)

組織の生産性を高める意思決定と構造の方法

救世主あらわる

そこで「Design Systems ―デジタルプロダクトのためのデザインシステム実践ガイド」監修者でもある、佐藤伸哉さん(@nobsato)にデザインシステムの構築及び改善に関するアドバイザーとして1ヶ月お願いする事にしました。
実は1年半以上前から繋がりはあったのですが、色々と予算申請をしていた都合や、依頼したいタイミングを見計らっていたのもあり1年越しの依頼となりました。

依頼時の期待値として「誰でも明確にコンポーネント構築を進められる判断基準がほしい」と話していました。
というのもデザイン基盤チームのデザイン原則は「カンタン・スムーズ・オープン」という原則であり、まずは開発者側から、判断基準が明確になる事でカンタン・スムーズに。ナレッジとしてある事でオープンな環境で開発したいなーと考えていました。
出来るだけ同じシーンで悩みを抱えずに開発したいという希望がありました。

自分達に合った制約を設ける事で「意思決定の質」を担保

結果、めっちゃ良かったです!!!!!!
依頼時の狙いであったUIコンポーネント要件定義時の判断基準を明確にする事。それらをUIコンポーネント構築のフレームワークとして運用する事ができました。

UIコンポーネントを構築する為のフレームワークとはいったいどんなものかというと、
自分達のチームの目的と現状に合わせて、調査スコープ、UIコンポーネントを構成する要素の判断基準、迷った時ベンチマーク、各プロセスに対しての完了条件(このタスクはどういった状態になったら完了といえるか)など、意思決定をする上で必要になる項目に対して必要な事をドキュメントとしてまとめ、各担当者の業務をサポートするものです。

UIコンポーネントを構築する為のフレームワークの一例
フェーズごとに検討項目に漏れがないかをドキュメント化

これらがあるお陰で、
レベル1生産性 = 意思決定のスピード(効率性) × 意思決定の質(有効性)「意思決定の質」を以下のような形で担保しています。

  1. 我々の質の定義を行う(質は高すぎても低すぎても良くなく、我々のチームの状態や体制に合わせて考えました。)

  2. その質に沿って要件を満たすようにUIコンポーネント要件の定義・設計をする。

  3. 要件に対してレビューを行う。

  4. 要件を満たしていれば質は担保される。

  5. 要件を考えていくうえで考慮事項があればドキュメントに残して後継者に未来を託す

    1. (ここまでは担保できているけど、ここはまだ担保できていないよ。みたいな)

現状レベルに合わせて質をコントロールする(どこまで作るかの範囲や、制約を設ける)事で、意思決定のしやすさが格段にしやすくなったと感じます。
暗黙知で作っていた要件がどのようなプロセスでつくるのかを言語化・整理したおかげで、チームの共通認識として「今のフェーズは何番のプロセスで〜」と全体を通して、今自分がどこにいるかの観点で話を出来るようになりました。

今までは、考慮不足を無くす為に考慮欠如がないUIコンポーネントを作るという(=質を上げる)という考え方でしたが、まずは我々がコンポーネントとして合格とする質をどこにするかを決め、その範囲内で考慮不足がないかを狙いに行くという考え方に変わりました。

副次的な効果:経験者への相談が出来ることで自分含めチームメンバーへの自信とつながった

デザインシステムという正解がないものに向き合っていく中で、アウトプットとして成果が見える形の時は達成感を感じます。
しかし、自身で正解を導き出したりする工程も含まれるので本当にこれで良いのか?と常にモヤモヤを感じる事もあります。
そんな中、デザインシステムの第一人者として多くの経験がある方に直接相談したり、アドバイスをもらう事で自分を含めチームメンバーへの自信とつながったと解釈しています。
チームの振り返り会では、各メンバーの意見もポジティブなものが多く(むしろポジティブなものしかなかったな??)安堵しました。

チームの振り返り会にてカードを上げている様子
チームの振り返り会にて

まとめ

今回、UIコンポーネントを形にするまでに必要な「判断基準」を作るうえでのお話しをさせてもらいました。
ここまで読んでくださった方はきっとデザインシステムに興味があったり、同じ課題を感じていたりする方なのではないでしょうか。少しでも役に立ったなと思えていただけたら嬉しいです。
また他の事業会社さんのデザインシステムについても色々情報交換ができたら嬉しいです。

さいごに

We are Hiring!!
今年の4月になりますが、HCD-Net認定 人間中心設計スペシャリストとして認定いただきまして、社内のデザイナーの勉強会ではHCD(人間中心設計)についてお話ししたり、最近は新卒デザイナーの研修でHCDを使ったサービス設計の課題を出していたりしています。
このように、デザイン組織としても新しいメンバーが増えたのをきっかけに、社内デザイナー同士の交流も事業を超えてどんどん活発にしていきたいところです 👏
少しでも興味をもちましたら、ぜひお気軽に応募してください!「話を聞きに行きたい」だけでもOKです。

お待ちしています!


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