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国境沿いの町
肌の奥まで刺してくるような日差しの中、私は大勢のモロッコ人たちと順番待ちをしていた。ここはモロッコ・フニデク、国境沿いの町。隣接するスペイン領の小さな町・セウタに入国するために人がごった返していたが、窓口が男性・女性で違うため、手続きがなかなか進まない。
「こんなの、一緒に通しちゃえばいいのよ」
振り向くと、女の子が豊かな長髪を揺らしながら私に話しかけていた。
聞くと彼女は19歳だと言う。大学での専攻は法律らしい。
「ねえ、モロッコのどこがよかった? 何を食べた? どこの街に行ったの? なぜひとりで旅をしているの?」
キラキラした瞳と笑顔で、私に質問する彼女が忘れられない。
あれからもう3年が経つ。きっと彼女は生ひ優り、美しい女性になっているだろう。今度は彼女を訪ねにモロッコに行くのもいい。どんな3年間だった? どんな大人になりたい? 成長した彼女に会うとき、興味津々で質問攻めにするのは今度は私の方だろう。
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