シークレット露出ツアーに参加してきた話
小学校の頃、地元に変質者が出ると注意喚起のために校内放送が流れていたのを思い出す。
最近はスマートフォンのアプリで
『○○町の○○丁目にパンツ姿の男性が現れました』
などと通知が届く便利なものもあるそうだ。
当時は
『変な人がいるんだなぁ』
などとのんきに考えていた私だが、
まさかオトナになって自分が変質者側になるとは、
小学生の私に想像出来ただろうか。
◆ ◆ ◆
私が初めて露出をしたのは行きつけのハプニングバーのシークレットツアーがきっかけだった。
『野外露出写真を撮りに行くわよ!』
という女王様の鶴の一声で、
オーナー含め8人ほどの常連達で遠征しに行くことになったのだ。
ツアーのスケジュールは
サービスエリアでお散歩
↓
ブルマ姿になってコンビニで買い物
↓
T県の運動公園で野外セックス
といった内容だ。
ハプニングバーでのセックスにはすっかり慣れた私であるが、野外露出は初めて。
同志の人間が集まるハプニングバーならともかく、
不特定多数の人間がいる野外でそんな事して捕まらないのだろうか?
そんなありきたりな疑問を女王様に投げかけると
『大丈夫、コツがあるのよ。
私なんて20年露出やってて、
一度も捕まったことないんだから。』
と自信ありげな顔で語っていた。
今回の記事ではその“コツ”についても記述するので、
露出に興味のあるヘンタイたちはぜひ参考にしてみてほしい。
◆ ◆ ◆
日も暮れ始めた午後6時。
私達はハイエースに乗り込み、
露出ドライブの旅に出た。
このハプニングバーは夫婦で運営している趣味を極めたような店で、
こうしてたびたび“野外遠足”が行われる。
運転は主人である店のオーナー。
助手席に奥さんである女王様。
後部座席に男性陣と女性は私1人といった陣形だ。
車を走らせる事1時間。
最初の目的地であるサービスエリアに到着。
このサービスエリアは最近女王様が発掘したスポットとの事だった。
女王様いわく、
こちらのパーキングエリアの女子トイレには大きな個室の更衣室があり、
緊縛を行うのにちょうど良いらしい。
パーキングエリアを見渡してみるが、
特に何の変哲もない、
至って普通の場所だった。
フードコートにレストラン。
屋外ではご当地アイスクリームや串焼きが売られている。
ちょうど夕飯時の時間帯だからか人も多い。
長距離運転のドライバーだけでなく、
ファミリーや観光客など、
様々な人々で賑わっていた。
『じゃ、まずはこれを着てね』
女王様はおもむろに持参のスーツケースから衣装を取り出す。
コスプレ用のピチピチのOL服だった。
性器こそ見えないものの、シャツは半紙みたいに薄いし、スカートもピチピチ過ぎる。
ちょっと屈めばパンツが丸見え。
無論、こんなOL現実にはいない。
これだけでも不審極まりないが、
女王様はさらに
“調教中”
と札のぶら下がった首輪も私にハメてくれた。
ピチピチスーツのOLに緊縛、首輪。
コンセプトはよく分からない。
…が、女王様的にはイケてるファッションなようだった。
衣装を着替え終わり、待望のお散歩タイムが始まる。
ツアーに出かける前、私は女王様から露出のコツをいくつか指導してもらっていた。
露出のコツその①
露出時はエコバッグを片側にかけて歩くこと。
これは人混みを歩く時に有効な手段らしい。
特殊衣装を着ているときは、手ぶらで歩いていると怪しい人と思われて通報されかねない。
だが、片側にバッグを持っていると途端に景色に紛れる事が出来るのだという。
実行するまで
『本当か?』
と内心疑っていたが、実際効果はテキメン。
こんなにも多くの人で賑わっているのに、
誰も私達のことを見ないのだ!
普通、こんな不自然な格好の人間がいたら二度見するか、遠巻きから写真を撮られていそうなもんである。
だが、みな見事にスルーしてくれる。
このエコバッグ、
ハリーポッターに出てくる透明マントなのだろうか?
と思ってしまうくらいだ。
そういえば昔読んだデータハウスの探偵マニュアル本に
“ターゲットを尾行する時は片手にコンビニのビニール袋と缶ビールを引っさげて尾行すると良い。”
と書いてあった気がする。
手ぶらで歩くと街の景色から浮いてしまうが、
ビニール袋を持って歩けば
『あぁ、買い物帰りか』
と、たちまち地元の人として認識されるのだという。
このエコバッグにも同じような効能があるのだろうか。
それにしても、あんまりにも見られないものだから少し寂しい感じもする。
こんなに頑張ってるんだから少しくらい反応してくれたって良いじゃないか。
すぐ隣を見ると、子連れの家族がアイスクリームを頬張っていた。
赤子にミルクをやる母親。
父親はアイスを食べる長男の口を拭ってやったり、次の行き先を調べたりと大忙しだ。
みんな自分のことに夢中で、他人なんて見てないのだ。
◆ ◆ ◆
パーキングでの“お散歩”を楽しんだ次に出された指令はコンビニでのお買い物だった。
OLから変わって、
今度は体操服にブルマ姿でコンビニに行くよう指示された。
深夜帯に差し掛かっているということもあり、
立ち寄ったコンビニには若い男性店員1人しかいなかった。
『お小遣いあげるから好きなもの買っていいよ。
私はお買い物の様子をカメラで撮ってるから。』
そう告げられ、
500円玉を1枚を渡される。
ここで女王様から教えられた露出のコツその②を実践。
露出のコツその②
露出をするときは堂々とすること。
不審者というのは他者から不審だと思われるから不審者となり得るのだ。
辞書で『不審』という言葉を引くと、
「はっきりしない点があって、疑わしく思うこと。 いぶかしく思うこと。 また、そのさま」
と書かれている。
であれば、ハッキリ堂々としてれば良い。
コソコソしているから不審に思われる訳で、
『私はこういう人ですが何か?』
という態度を示していれば、
向こうもいちいちつっかからない。
ロジックが分かれば気後れすることはない。
鼻歌混じりに店内をうろつき、
ポッキーを2箱ほど購入。
なんか段々露出に慣れてきた気がする。
店員も『仕事だから』といった感じで特に何か言うわけでもなく、普通に接客をしてくれた。
もちろん、相手の仕事の邪魔をしないだとか、
同意の無い相手に性器を見せないとか線引きはある。
それさえ守れば案外露出って簡単かもしれない。
コンプライアンスとかなんとかうるさいこのご時世だ。
こっちはちゃんと服を着ている訳だから、
この状態の私を写真でも撮って晒そうもんなら、
店員の方が非難されかねないし。
◆ ◆ ◆
運転する事2時間。
私たちは最終目的地であるT県O市の運動公園に到着した。
ここは露出狂たちが集う人気スポットだ。
この運動公園は周囲に目立つランドマークが無いから一般人との遭遇トラブルがない。
ゆえに
“安心して露出が出来る”
としてマニア掲示板でも頻繁にオフ会が開かれる、
界隈では有名なスポットだそうだ。
車を停め、駐車場を見渡すと何台か車が見える。
『…何組かいるね。』
運転席を降りたオーナーが呟いた。
確かに、よく見てみると広い駐車場に間隔を空けるよう、ポツリポツリと車が停まっている。
周りに何もない、辺境の夜の公園目指してわざわざ車でデートも考えにくい。
ヘンタイがいるのだ。
予想通り、公園を歩いているとすぐに人とすれ違った。
どうやらカップルのようだった。
しかし普通のカップルがこんな時間にこんな場所でデートをする訳がない。
しばらく歩いたところで振り返って見てみた。
カップルの片割れは女装した男性だった。
向こうもこちらの様子が気になるのか、
遠巻きから我々を見返して様子をうかがっている。
まぁよくよく考えてみればこちらもこちらで、
こんな真夜中に8人もゾロゾロと歩いてたら不審きわまりない。
『ゲイカップルかなぁ?』
参加者の1人が呟く。
『おーん、ならちょっくら声掛けてくるわ』
雰囲気で同士である事を確証したのか、
オーナーは熊のように大柄な身体を揺らし、
のっそのっそと歩き始めた。
露出のコツその③
誰かに出逢ったら挨拶をすること。
挨拶はコミュニケーションの基本中の基本。
それはヘンタイ界隈に置いても同じ事だ。
いや、ヘンタイ界隈ではもうちょっと切実な理由がある。
別にヘンタイだって、無鉄砲に人を傷付けたり、一般人に危害を加えたい訳じゃない。
もし相手が一般的であっても、笑顔で気さくに
『やぁ!僕たち、こういう趣味があってね』
なんて話せば案外理解してくれる。
一般的がヘンタイを怖がるのは
『危害を加えてくるかも…』
と思うからであって、
『どうも私たちは関係ないらしい』
と理由が分かればスルーしてくれるものだ。
反面、こちらの身を守る術にもなる。
これは露出のコツ②に通じるものがあるが、
こちらが変に動揺して逃げてしまうと、
相手に
『コイツらはヤマシイ事をしてる』
『見つかって気まずい思いをしてる』
という印象を持たせてしまう。
すると心理的パワーバランスが遭遇した相手に傾いてしまう。
つまり相手の方にマウントを取られてしまうのだ。
自分の方が有利である、
という認識を持った人間の行動は必然的に横暴なものとなる。
『お前らこんな所でいけない事してるんだから、
通報されても仕方ないよな?』
『通報しないでやるから俺も混ぜろよ』
そうなったらこちらは挽回の余地がない。
まぁ、上に挙げたのは極端な例ではあるが、
そうでなくても
“こちらが非を感じてる”
と思われると分が悪い。
変に茶化されたり、ダルい絡み方をされかねない。
せっかくの楽しい露出が台無しだ。
だから過度に威嚇せず、媚びる事もなく、
“あなたと私は対等ですよ”
というメッセージが伝わるよう挨拶をする。
挨拶は大事なのだ。
◆ ◆ ◆
どうやらオーナーの“挨拶”は成功したようだ。
オーナーはカップルの片割れを連れて戻ってきた。
小太りで薄毛の中年男性、
どこにでもいるようなオジサンって感じの人だ。
パートナーの女装子さんは恥ずかしいので車で待機しているとのことであった。
雑談を挟んだところで、
薄毛のオジサンは
『見てほしいものがある』
とトランクスを脱ぎはじめた。
ブルンと飛び出すイチモツ。
オジサンの竿にはゴツゴツとした銀の丸ピアスが無数に埋め込まれていた。
『おーすごいですね』
『これは見事』
一同、歓声をあげる。
ヤクザがチンコに真珠を入れる、
なんていう話は都市伝説で聞いたことあるけど、
本当にチンコを魔改造する人がいるもんなんだなぁ。
そんな人と出逢えるなんて、
本当にこの公園ってヘンタイの集いなんだな。
少し触らせてもらったが、なんだかHUNTER×HUNTERのハンター試験編で出てくるイルミみたいなチンコだなぁと思った。
オジサンによれば、これだけピアスをあけてると女性も痛がってしまうので実際には挿入は出来ないらしい。
それよりも自分の改造したチンチンを見てもらう方が楽しいらしく、
こうしてたまに夜中の公園を散歩しているとの事だった。
見られる快楽のために挿入の快楽を捨てるとは、
このオジサン、相当覚悟が決まっている。
さて、新しい仲間も加わり、
私たちは“夜のアトラクションスポット”を巡ることにした。
公衆便所で輪姦したり、自販機の前に手をついて立ちバックしたり、良さげな木を見つけては吊しプレイなどをして楽しんだ。
オジサンは乱交には参加せず、皆の行為を見ながら1人でシコっていた。
公園には他にもヘンタイたちが数人いて、
オーディエンスとして私たちの輪姦を観戦してくれた。
公園の主、と呼ばれる謎の初老男性からは
『こんな派手なプレイ、久々に見たねぇ』
と、お褒めの言葉を頂き、
その日の露出セックスは大いに盛り上がった。
やはりみんなでするセックスは楽しい。
彼らとの交流は、小学校の頃、親や教師から教えられていた“変質者”のイメージとは全く異なったものだった。
ヘンタイだって人間だ。
彼らも彼らのテリトリーがあり、
コミュニティーの中で作られた秩序の中で生きている。
山のクマと里の人間が共存するように、ヘンタイとそうでない人もそれぞれの場所で楽しく暮らせればそれでよい。
だから自分がそういう行為をするかしないかは別として、『理解できない』と闇雲に攻撃するのはナンセンスなのだろう。
もちろん、かつて親や教師たちが言ってた事も間違いではない。ただ、世の中に対する理解が浅い子どもたちには『人を警戒せよ』という一元化したメッセージを伝えるのが一番の安全策だっただけの話だ。
自分の頭で考えられるようになった大人であれば、少しばかり彼らの世界に歩み寄ってみてもいいかもしれない。きっとそこには新しい刺激が待ち受けているはずだ。