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数字で縛ってヨーグルトを和える ◆ 水曜日の湯葉144


『ぬのさんぽ』のボイスコミックが出た。サンポ役が黒沢ともよさん、ヌノ役が杉田智和さんである。

僕は声優に詳しくないので「声優が豪華」などと言われても大抵ピンと来ないのだが、黒沢ともよさんは『スキップとローファー』の主人公役として知っていたし、杉田智和さんは「杉田智和」として知っていたため、キャストを聞いたときは「なんで!?」と声が出てしまった。「東宝だからです」とのことだった。東宝だからか〜。

有名声優に自分の書いたセリフを読みあげてもらうと、収録中は脳の普段使ってない部位がギュルギュルと動いて、ずっと背筋がピクピクと変な動きをしていた。リモート参加なのが助かった。

とはいえ僕もデビュー当初は「ぼくの原稿が活字になっている!」とゾワゾワしたし、漫画が出ると「ぼくの話が漫画になっている!」でゾワゾワしていたわけで、徐々に心がざわつくボーダーが上がってきた感はある。キャリアを積み上げて良い方向に成熟してきたように思う。

「サンポはどういう喋り方なのか」について、僕と作画の小津さんの間に微妙な不一致があったりした。収録現場で急に出るとちょっと戸惑うが、こういうことはシナリオ担当の身としてはとても嬉しい。

このところ打ち合わせでも編集さんから「このキャラはこういうこと言わないのでは?」という意見がちょいちょい出るようになっている。小説家をやっていると時折「自分の頭にしかない虚構を弄んでいる」と落ち込むのだが、こうしたことがあると「わが子が社会に出ている」という実感が得られる。まだ公園デビュー程度の小規模な「社会」だが。

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