シャック・リーが止まらない ◆ 水曜日の湯葉[11/1-7]
「水曜日の湯葉」100記事目である。週1更新なのでほぼ2年。当初は「10人課金したら続けよう、5人だったら考え直そう」と思っていたが、ありがたいことに半年足らずで購読者が100人を超えた。それ以後はあまり増えなくなった。メンバーは頻繁に入れ替わるが、総数がほぼ平衡している。たぶん自分の化学ポテンシャルがそのくらいなのだろう。
ところで、先日こんなマシュマロ(匿名質問)をいただいた。
なるほど。「僕に金を払うためにバイトしろ!」と喝を入れればいいのか。それはもうホストのDV営業だろ。怠惰はある種の美徳なのでそのまま寝てなさい。
この「水曜日の湯葉」は、時間と金の余った独居老人からパトロンを募ろう、くらいのつもりでやっている。このため読者が「課金のためにバイトするぞ!」となることは想定していない。そんなことをされると執筆のハードルが上がってしまう。
ネットでは便利な情報に「これ無料で見ていいの!?」とコメントをする人や、投稿者が自分で【有料級】と言っちゃうような YouTube 動画が溢れているが、僕はむしろ有用な情報ほど無料で拡散されるべきだと思っている。人類全体の向上に資する情報が広く行き渡らないと、経済格差が固定され社会の停滞を招くからだ。自治体が図書館を運営するのもそうした思想が背景にある(たぶん)。
この「水湯葉」が有料なのは、そうした高尚な使命とはおよそ縁のない、個人的などーでもいい話だからである。有用なものを無料でバラまいて無用なもので金を取る、それが現代インターネットのあるべきマネタイズである。
11月1日 水
『幽霊』の連載がまるっきり書けず1回休載。しかたなく森をとぼとぼと歩く。
埼玉県にはとぼとぼ歩くのにちょうどいい森がある。たいていは「なんとか自然公園」みたいな名前のついたポケット状の土地である。ボケーっと歩いているとそのうち反対側の舗装路に出るので、うっかり猛獣の巣穴とか魔女の住処に迷い込む心配はない。あくまで「街の中にある自然」である。
アプリでそのへんの草の名前を調べるが、人間ほど学習データが揃っていないせいか、意外とはっきりした答えが出ない。水辺に生える細い竹は「ヨシタケ」らしいが確証がない。りんごかもしれない。
土に還る途中の空き缶を見た。子供のころ「ペットボトルは土に還らない」と習ったときは「空き缶は還るの!?」と驚いた記憶がある。子供にとって金属というのは動かざるものの象徴だったのだが、なるほど確かに分解が進んでいる。
昼過ぎにしゃっくりが止まらなくなり、そのまま翌朝まで続いた。元々しゃっくり体質なのだが夜を越したのは初めてで、さすがにこれはマズイのではないかとなった頃に止まった。
しゃっくりが止まらない時に止め方をアドバイスしてくる人がかならずいる。「水をこうやって飲むと〜」とか。善意で言っているのはわかるがあれはやめてほしい。こちとら体質を何十年も抱えてるのでそんな民間療法はひととおり知っているからだ。といって無視するのも申し訳ないし、そもそも呼吸が苦しい時に会話をさせないでほしい。
そういえば「しゃっくりが100回続くと死ぬ」という都市伝説があるが、あれを考えた人は100回がよほどの異常事態だったのに違いない。実際は100回も続く頃には体に馴染んで「今自分はしゃっくりをしている」と忘れてしまう。むしろ早くその状態に入りたいので、放っておいてもらえるのが一番助かる。
チャールズ・オズボーン(1894-1991)という人物は「しゃっくりが68年続いた人」としてギネス記録に載っている。Wikipedia 項目見てもしゃっくりの話しか書いていないので、傍から見るとしゃっくりだけで終わった人生に見えるが、本人からすると不本意な見え方だったろうなと思う。おそらく人生の大半において「自分はしゃっくりが止まらない人間である」なんてことは意識しなかっただろう。
11月2日 木
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