都道府県ぜんぶ逆にした ◆ 水曜日の湯葉130[5/29-6/4]
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5月29日 水
運転中にふと「北海道の意味的な逆って何だろ?」と思いついた。北の逆は南、海の逆は陸でいいとして、道の逆が難しい。道というのはつまり通行可能を意味するので、通行不能を表す「壁」か、通行制限を表す「門」か、あるいは広域自治体としての意味を考えて「州」にするべきか。ふーむ。このあたりの言葉選びはなかなか個人の言語感覚が反映されそうだな。
という具合で47都道府県ぜんぶの逆を考えた。
地名は「愛」などポジティブな言葉が多く、そのまま逆にすると地名に相応しくないネガティブワードになってしまうため、いいかんじの言い換えをするセンスが求められる。就活とかで使える技術。「富」→「貧」では酷いので「清貧」から連想して「清」にするなど。でも「福」→「鬼」はいけそうなので通した。「鬼怒川温泉」とかあるし。
いちばん苦労したのは滋賀。「滋」は「うるおう」の意味なので「乾く」をうまいこと言い換えればいいのだがどれもしっくりこず、結局「乾かす」ための行程である「日で照らす」にした。「賀」は「慶賀」の逆ということで「慰安」。
あと解説がいりそうな漢字はこんな感じ。
「島」を「孤立するもの」と解釈すると逆は「連なる」
「川」を「流れるもの」とすると逆は「留まる」
「長」を「長くかかる」とすると逆は「早く終わる」
「奈」は疑問・反語を表すらしいので逆は「理由」
「埼」「崎」は岬なので、地形的な逆は入江であり「浦」「江」
「阜」は岐阜以外で一切見ない字だが丘を意味するらしいので「窪」。
「知」は外部から知識を得ることとし、その反対は「分かる」もしくは「悟る」
「馬」は速さの象徴なので「亀」
「熊」は経済のベア相場・ブル相場からとって「牛」
「本」は「出発点」とみなして、その逆は「到達点」
「香」の反対は消臭剤に使える「炭」か……? 地名としては「墨」のほうがそれっぽいな。意味違うけど、逆日本史のどこかで書き方が替わったことにしよう。うむ。
ふだん使わない脳の部位を鍛えられるので、皆さんもぜひ運転中にやってみてほしい。あと「三重の逆って七並べじゃん!!!」という気づきを得たのが今日最大の収穫。
5月30日 木
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