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何気ない日々 ライナーノーツ

この曲はコロナで世界が変わり始める直前、2019年の秋ごろに作りました。
コロナが流行る前だったけれど、この年も災害が多く、たくさんの方が犠牲になったり、ささやかな日常を奪われた話が何度も飛び込んできました。

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みなさんのなかにもそれぞれ日常のなかでやっている「いつものこと」があると思います。

今日何したの?と聞かれてあえて答えないようなこと。
そして、そんな答えないようなことの中には、自分だけにしかわからないような小さな幸せ、もしかしたら幸せを感じたことさえも忘れてしまっているような、ささやかな幸せがあると思います。

例えば、

朝お布団で目が覚めたときに差し込んできた光。
いつものカップで飲むコーヒー。

いつもの洗面所で顔を洗い、いつもの家から「いってきます」と
家を出ていくこと。
そして、「ただいま」と家路につき、
晩ご飯を食べ、お風呂に入り、「おやすみ」を言って眠りにつき、
また明日がやってくること。

本当の幸せは、きっとそういう「今日何したの?」と聞かれて答えないようなことだったりするのかもしれない、と私は転勤を重ねて、日常が何度も更新されていく中で思いました。

それらは過ぎてみなければ、「幸せ」としてなかなか見ることができません。

本当の幸せは、日常の中にある「何か特別なこと」ではなく、「日常の全て」なんだな、と私は最近改めて思うようになりました。

「恋人がくれたプレゼントがとても素敵だった」とか、

「美味しいレストランで食事ができた」とか、

そういう「幸せ」だったら、すぐに提示できるけれど、私はそういうのとはちょっと違う「幸せ」を、この「何気ない日々」の中で描きたいなと思いました。

今の日常が自分の手元にあるうちに、その幸せをもっと味わって生きていたい。その想いはこの曲を作ってから二年経った今も変わりません。

そうやって過ごしていると、社会がどれだけ混乱している中であっても、必ず、そこに「日常」があり、そこに「幸せ」があることに気が付けます。

一方、子どもたちは私みたいに堅苦しく考えず(笑)もっと純粋に、「今、この瞬間」をただめいっぱい生きています。

私はそんな風にはもうなれません。
けれどそれはそれでいいのかな、と思っています。

なぜなら、それだけたくさんの日常を私は自分の人生で経験して、
それらが何度も終わりを迎え、新しい日常へと移り変わっていった経験があるからです。

だから目の前の子どもたちのように、手放しで、失うことへの悲しみも切なさも知らなかった頃にはもう戻れません。

けれど、悲しみも、切なさも頭のどこかではいつかは訪れると知っているからこそ感じられる、目の前の日常の幸せもあると思うからです。

それが、歳を重ねる醍醐味なのかな、とも思います。

どちらにせよ、明日という未来が今日と同じになるかはわからないけれど、今日一日を大切に生きて、それを積み重ねて行けたなら、それはそれでとても素敵な人生になる気がしています。

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今を生きている私たちは、2019年まで当たり前にしていた多くのことができなくなってしまいました。Carol Nightでキャロルが一緒に大きな声を合わせて歌えない日が来るなんて想像もしませんでした。

けれど、私たちの何気ない日々は形を変えて確かに続いているし、私たちを含め生き物は、こうして外の要因に大きく日常を揺さぶられたりしながらも、その中でたくましく新たな日常を紡ぎ出していくのだと思います。

みなさんの「何気ない日々」も、きっと人生のステージと共に、何度も形を変えて続いてきたことと思います。そして今現在の「何気ない日々」が次にどんなふうに変わっていくのか、私たちは誰もわかりません。

けれど、分からない未来を恐れるのではなく、未来の自分たちを信じて、今日という一日、今という瞬間、それが自分の手元にあるうちに、その幸せをたくさんたくさん、味わうきっかけに、この曲がなってくれればいいなと思います。

そして、「今日何した?」と誰かに聞かれた時に答えにもならないような、日記にも書くにも足らないような、みなさんの日常の中にそっと、この音楽が流れていたらとても幸せだな、と思います。

春奈

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