号外
なんで同じ話をいつもするの?
阪神は大熊っていう選手が
昔すごかったという話と
今年の先発は秋山が頑張ればいいという話。
会うたびにされるこの話に
「いつのシーズンの話してるんだよ」と
ずっと飽き飽きしていた。
携帯電話を持つようになると
3日に1回はかけてくるようになった。
特になんの用もない
「元気か?」という電話に
その当時の自分は意味を知ることができず
だんだんと電話に出なくなった。
大学生になって一人暮らしを始めた。
1か月に1回は会ってたり、
お寿司食べに行ったり、
そんな時間も少しずつ減っていった。
久々に何年振りかにあった時には
自分のことを誰だかわからなくなってた。
認知症が進み、「お兄ちゃん」と呼ばれる。
それが悲しくて、
あんなに大好きだった人に
もう覚えてられていないという現実が
苦しかった。
その日から何やかんや理由をつけて
会うのをやめた。
お寿司も電話も阪神の話も
全部なくなった。
阪神が優勝した次の日。
久々に会って30分。
少し苦しそうに最期を遂げた。
会いにくるの待っててくれてたんかなと思った。
今週6回出勤の唯一の休みに
法事も全部合わせてくれた。
大熊も秋山も出てないけど
阪神優勝したよ。
流石に向こうでも号外出て知ってるかな?
じいちゃん今までありがと。