
彼女の手を形作ったのは”ピアノ”。でも、両手が物語ることは経験の積み重ね
あなたの両手が物語ることを教えてくださいと問われたら、どんなことを思い浮かべるでしょうか。
今回取材したのは、企業採用のコンサルティング業務を担う社会人4年目のやながゆいさん。大学時代からの友人です。
今、わたしは「あなたの両手を物語ることを教えてください」を10名にきいて、インタビュー記事を書く自主企画をしていて、すでに3名の記事を公開していますが、実は彼女のインタビューが初回でした。
いちばんに彼女へインタビューできたおかげで、わたしの固定概念がひっくり返り、相手の両手をどうやってフラットに見るか再度考えるきっかけをもらえました。
ぜひさいごまでご覧ください。

考えてみたけど、両手が物語ることは思い浮かばない
ーーさっそくだけど、「あなたの両手が物語ることを教えてください」思い浮かんでる?
ゆいさん:うーーん、意外と出てこないよね。
ーーそりゃそうだよねぇ(内心ドキドキ。このままインタビュー終了か?)
途中まで考えたことはあったかな。
ゆいさん:
そもそも両手が物語ることってどういう状態なんだろうなって思っていて。
なんとなくだけど、私の中で自分の両手で物語れることって、誰にも、私にも、見えてないんだけど、経験や財産が両手の中にあるなっていう感覚を持ったかな。
ーー経験値や財産こそ、ゆいの両手が物語ること?
ゆいさん:
そうだね。たとえば、職人の手がだんだん分厚くなるというけど、手が厚くなるから職人というより、その手で何を経験してきたかが重要じゃないかと思ってる。太いのがいい、分厚いのがいいっていうのはない気がする。
手を形作ったのは’’ピアノ’’。でも、彼女の両手が物語ることは経験の積み重ね
ゆいさん:
私の手が語っていることはなんですか?にシンプルに答えるとしたら、2歳から20歳まで続けたピアノです」って答えるね。
ーー2歳から20歳まで!小さいころ、相当がんばった記憶なのでは?
ゆいさん:
がんばったよりも、自分は継続できるんだと自信になったことのひとつだったかな。小学校から大学を決めるまでは、幼稚園・保育園の先生かピアニストになりたかった。
ーーやっぱり、ピアノはゆいの中で大きい存在だったんだ。夢は変わったの?
ゆいさん:
うん。大学はこども教育が学べるところを志望してたけど、少子化の時代だからって親に反対されて(笑)
結局英語が学べる大学を選んだのは、小学校のころ、お父さんが年賀はがきの1等でハワイ旅行を当てて旅行に行ったとき、外国人に話しかけてもらったのに英語がしゃべれないないことが悔しくて、いつかこの人たちと会話したいと思ったことがきっかけ。
ピアノと英語で、世の中に発信できたらいいなと思ってたな。

ーーここまで大きく影響したピアノでも、「両手が物語ること」の答えではないんだね。
ゆいさん:
「ピアノをやってきた人生だったんだね」と理解されたいの?って考えたら、そうじゃないと思ったんだよね。
形という事実情報で言ったら、形作ったのは間違いなくピアノ。
そのうえに、今の自分になるための経験の重みがのっかってきてる感じだな。
今でもピアノをやっていたらピアノで成り立っている手だと思うけど、海外留学をしたり、今はベンチャー企業にいる。今の自分があるのは1個の出来事にとどまらないから。
どの断片を切り取ったとしてもすべて私の人生の一部で、この手の感覚を自分で作っていけてるなと感じてるよ。自分の経験や失敗が積み重なって、これが自分の手っていうゴールがないな。
両手が物語ることをきいたら、彼女の人生の話になった
ーー「両手が物語ることを教えてください」とお題に出したとき、「人生」が出てくるのはゆいならではの視点だなと思ったな。
ゆいさん:
最初は「手に関するエピソードないわ」が正直な気持ちだったよ。
でも、なにもないと思ったことをスタートにして、手が物語るものって事実情報だな、過去の経験をしてどう思ったんだっけ?ってたどってみた。
結局、目に見えているものから相手がどんな人生を歩んできたかはわからないから、しゃべってもらうしかないよね。
ーーうんうん。冒頭に「経験や財産が両手の中にある」と答えてくれたけど、ゆいの中にある最たる例は何か、きいてみたくなったな。
ゆいさん:
多すぎて最たる例にならないけど、1つめはピアノ、2つめは海外経験、3つめは仕事での失敗、4つめは仕事の失敗から気づいたパートナーの存在。
3つめの仕事では、お客様からいただいた信頼を失ってしまったことがあって。解約のとき、元々握手していた手が離れていく重みがあった。
でも、仕事の失敗も4つめにつながって、なにがあっても近くにいてくれる存在に気づけた。いろんな経験をしている彼の手があると、2倍になって心強い。
こうやって、プラスアルファで自分の経験の積み重ねになっていったな。

ーーゆいの中ではすべてつながってるんだね。さいごに、インタビューを受けてみてどうだった?
ゆいさん:
考えてもうまくまとまらなかったけど、どんな出来事も一人じゃないって気づけた。ピアノをひいていたのは自分だけど、教えてくれたのは先生だったり、ハワイ旅行に行けたのもお父さんが1等を当ててくれたからだったり。
ーーすごい大切な気づきじゃない?気づいたときどんなことを思ったの?
ゆいさん:
当たり前だよなって気持ちと、一人じゃなく誰かに助けられてるってことは自分が死なないと本当の意味で理解できないかもなって気持ちになった。
今この瞬間はありがたみを感じているんだけど、薄れていくものだなって。はかないし悲しいけど、その分人間っておもしろいなとも思った。
ーー「一人じゃないんだ、やったー!」で終わらないのは正直な気持ちだね。答えが思いつかないと言ってくれたところからだいぶ遠くにきたなぁ。本当におもしろかった。ありがとうございました!
さいごに
「おもしろい」「確かにそうだよね」など、インタビューしながら抱いた感情をどうやって文章にしようか。難しそうだけどわくわくするな。
彼女へのインタビューが終わったあと、率直にこう思いました。
きっと、彼女はどんな経験をしても、それを財産にして両手にたくさん積み重ねることができるんだろうと感じています。
彼女の手にある見えない財産を、これからも、こまめにのぞかせてもらおうと思います。