仕事終わりの21:00に、スーツでカホンをたたいた高円寺のこと
わたしはよく、自分の人生でラッキーだった出来事ベスト3を考えます。
生きてきて27年、わたしの暫定ベスト3はこんな感じです。
実はこの5月、ラッキーだった出来事ベスト3に入る高円寺という居場所を引っ越すことにしました。そこで今回は、【3】の思い出を綴ります。
1.コロナ禍で見つけた東京での居場所
高円寺の老舗銭湯・小杉湯のとなりにある「小杉湯となり」は、月額22,000円で通い放題の会員制シェアスペースです。
2021年の2月6日(月日が「ふろ」だったから覚えてる)、小杉湯の掲示板に「小杉湯となり、見学大歓迎!」と書いてあり、恐る恐るひとりで飛び入り見学したことが、となりとの出会いでした。
2020年4月に九州から上京したわたしは、東京で友達が欲しかったのと、広いキッチンや興味深い本が並ぶ本棚を魅力に感じ、入会することを決めました。
2.偶発的な交流が生まれる日々
小杉湯となりの会員として過ごした1年半、受け取ったものがたっっっくさんありすぎるのだけど、「なにかひとつ、これ!っていう思い出を切り取ってみて」と自分に問いかけてみると、2年以上前のある夜のことが思い出されました。
時間は、水曜日か金曜日の21:00ごろ。
かっちりしたスーツを着ていたから、仕事で会議かプレゼンがあった日だったと思う。そして、なんか嫌なことがあった(今は、面白いくらい思い出せない)。
となりののれんをくぐって入り口に入る前に大好きなスタッフさんが見え、入り口をぬけると「こんばんは、おかえり〜」と声をかけてくれました。
平日の夜は、2階で本を読むことがルーティーンだったのですが、
「あゆちゃん、カホンたたいてみない?」
スタッフさんが言うんです。
カホンってなに? たたく??
はてながたくさん浮かびつつ、「あ、はい。やってみようかな」と答えていました。
ちなみに、カホンはこんな楽器。別の会員さんが持っていたカホンを、数人でお試し演奏していたみたい。
カホンにまたがり、カホンの中央を叩いてみると「ぽーん」と音が響きました。その少し上を叩くと、また異なる音が鳴り響きました。
ドラム音ほど大きくなく、なんだか初めて聞いたような音色だったな。
2年以上が経った今、正直どんな音だったか具体的には覚えていないのだけど、あの日、嫌だったことが確かにきゅっと小さくなって、22時に小杉湯に入るころには「カホンってあんな音がするんだな」と、脳内がカホンになっていました。
3.高円寺は、多様性のまち
「高円寺ってどんなところ?」と友人に聞かれるたび、
「多様性のまちだよ」と答えます。
どんな服装でも違和感がないし(超高級なスーツやドレスは例外)、観光客らしき人もいれば、完全に街に馴染んだ外国人もいる。急ぐ人もいれば、ゆっくりゆっくり歩を進める人もいる。
小杉湯となりは、そんな高円寺の縮図です。
仕事も、年齢もバラバラだし、本名も知らない。
でも、知らないからこそ、目の前にいる相手とフラットに対峙できる。
相手にとっての日常が自分の中に入ってくると、予想外な非日常になる。
仕事終わりに、スーツでカホンをたたいたあのときのように。
これが、小杉湯となりに出会って受け取った最大のプレゼントだと思っています。
あとがき
小杉湯となりに入って出会えた大切な人たち、学んだこと、これからやっていきたいライターの一歩を踏み出せたこと。ありったけを書きたかったけれど、集約しきれませんでした。
でも、高円寺にいたこの4年間を忘れたくないから、いちばん覚えていたあの日のことを文章に残してみました。
そして今は、小杉湯となりを企画運営する銭湯ぐらしのメンバーとして、現役会員さんのインタビュー記事を書いています。
「となりのこんなところに魅力を感じてくださっているんだな」と意外に思うこともあるし、「そうそう、その気持ちとっても共感します!!!」と大きく頷くこともある。
そしたら「わたしの心に残るとなり、そして高円寺ってなんだろう」と問いかけてみたくなったのです。
ついでに、ぜひ読んでもらえたらうれしいな🌿
「小杉湯となり」が気になった方、本もあります🌿
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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