未完成のアート
理想。憧れ。期待。望み。
そんな淡い想いを抱えて、同世代が集まる美術館の中に足を踏み入れた。
そこには十人十色の想いがあった。十人十色の形があった。
その中で私だけの色を探してみたけれど、この空間にそんな色はなかった。
そして、この空間は決して私だけの色に染めてはいけないのだと、溢れんばかりの色たちをみて悟った。
それでも自分だけの色を出しても良いスペースがところどころにあった。
それぞれの自分だけの色たちと融合された色たち。
それぞれの色が綺麗に混ざり合って、単色でも美しく映えながら、創り出された色でも華麗に発光していく。
けれど、色を混ぜ合わせれば合わせる程、黒に近づいてゆき、
適当になればなるほど黒になるスピードは早くなっていった。
だから、混ぜ合わせることに疲れて単色のほうが簡単で綺麗だとさえ思った。
混ぜている手に力を込める程、色が汚れてゆくのなら混ぜないほうがずっといい。
ただただ削られていくだけだと。
いつの間にか美術館の天井が少しずつ剥がれていった。
剥がれ落ちてゆく破片をみると、外に出たほうが平和で安全だった。
けれど、美術館の中で痛みに耐えながらも必死に修復をしている姿があった。
その館は傷だらけでも美しかった。
にぎやかな色。派手な色。モノトーンの色。かすみがかった色。渋い色。
単色では決してみられない色に出会うことができた。
混ぜていた手も、崩れ落ちてくる破片も痛かったけれど、その痛みでさえも艶やかに発光していた材料になっていた。
2020年の私たちが創り出した唯一無二の美術館だった。
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