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「セブルス・スネイプ 悪人か聖人か?」

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小学5年生の頃、朝の読書タイムで「ハリーポッター」を借りてきてから、私はその世界に魅了された。
当時はまだ映画版はチラッと見た事がある程度だったので、J.K.ローリングスが描く魔法の世界を、ハリーの目を通して夢中で読んだことは今でも鮮明に覚えている。

あれから10年以上経った。私はもう何周も読破していて、いまだに年に何度かは魔法の世界に入り浸っている。
そして、ちょうど先日また読み直したくなり、「Kindle Unlimited」で1巻から最後まで読み耽てしまった。(Kindle Unlimitedはいつでもハリーポッターを読める状態にしておく為だけに加入している)
その熱が冷めやらぬまま、「ハリーポッター談義に花を咲かせたい」と思い立ち、noteを立ち上げている。
もしハリーポッター好きの方がこの記事に目を通したなら、ぜひ意見や感想を聞かせてほしいと願う。

さて、今回のテーマは「セブルス・スネイプは悪人か善人か?」
ファンの間では長く語られてきたテーマだが、1人のファンとしてつらつらと意見を述べたいと思う。
※本記事は小説版を元にしている。

悪人としての一面

デスイーター

セブルス・スネイプが悪人か善人かは意見が分かれるところだが、少なくとも「良い教授」ではなかったことは全読者に同意いただけるところだろう。
彼の初登場は「賢者の石」で、ハリーがグリフィンドールに組分けされ、大広間で食事を取っている席だった。
2人の目が合った際、まだ言葉すら交わしたことも無いのにも関わらず、ハリーが「あの目はハリーが大嫌いだと言っていた」と感じるほど、スネイプはハリーに対して憎悪を抱いていた。
もちろん、後から思うにハリーは父ジェームズに写し鏡だと言われるほどそっくりであり、ジェームズへの憎しみをそのままはハリーに向けていたことは想像に難くない。

しかしだ。だとしてもスネイプのハリーに対する接し方は教授として明らかに問題がある。
最初からハリーを「父親とそっくりの目立ちたがり屋で傲慢な奴」と決めつけて攻撃している。
またハリーほどではなくとも、自身が寮監を務めるスリザリンを明確に優遇し、グリフィンドール生に辛く当たった。

私が「これは流石にないだろう」と感じたのは、「炎のゴブレット」でハリーとマルフォイが言い争いになり、呪いをぶつけ合ったシーン。
2人が放った呪いはぶつかり、ハリーの「歯呪い」はゴイルに、マルフォイの「歯呪い」はハーマイオニーに、互いに跳ね返ってしまう。
そこにスネイプが現れ、ゴイルを医務室へ向かわせるも、ハーマイオニーに関しては「いつもと変わりない」と言い放ったのだ
ハリーとロンはあまりの理不尽さにスネイプに暴言(何と言ったかは描写されていないが)を吐いたが、私の気持ちは2人と全く同じだった。

他にも数え切れないほどエピソードはあるが、とにかく言いたいのは「教授としては問題だらけ」だった、という点だ。

もう一つ、スネイプが悪人と言われたる所以は「闇の魔術に傾倒していた」という点だろう。
彼の生い立ちには同情するが、だとしても闇の魔術にのめり込む言い訳にはならない。シリウス曰く、ホグワーツ入学当初から7年生よりも呪いに詳しかったというのだから驚きである。
しかし、「闇の魔術に詳しい」からと言って悪人と断定するのは短絡的だ。
ムーディー(に化けていたクラウチジュニア)が言うように、自分の身を守るために戦うべき相手を知ることは良いことである。
さらに忘れてはならないのが、スネイプは魔法使いとしては飛びきり優秀であったという点だ。
スグラホーンも述べているが、彼のように優秀な生徒は知識欲から得てして一時的に闇の魔術を探求する事があった。つまり、スネイプが闇の魔術に詳しかったから、と言ってそれがそのまま悪人に繋がるわけではない。

しかし、彼はそのまま闇の魔術に溺れていき、ホグワーツ卒業後はとうとう「死喰い人」になってしまう。
死喰い人としてどのような悪事を働いたかはっきりとは描写されていないが、トレローニの予言の前半を嬉々としてヴォルデモート卿に伝えたことは確かだ。
その結果、ジェームズとリリーは殺害されてしまうのだが、仮にヴォルデモート卿が予言の子にネビルを選んでいて、ネビルの両親が殺害されたとしていたら、不死鳥の騎士団へ加入することはなかったように思う。

彼のその後の功績はさておき、「悪人」と言われても文句は言えない言動や過去があったことは確かだ。

善人としての一面

スネイプ ダンブルドア

さて、ここまでスネイプの悪行を書き連ねてきたが、もちろん彼を語るにはもう一つの面に触れる必要がある。
彼は隠れた偉大な英雄としてこの世を去った。
それを知ったハリーは後年、「最も勇敢な人」の名としてセブルス・スネイプの名を自らの子供に名付けるほどだった。

スネイプは前述の通り、闇の魔術に傾倒し、死喰い人に堕ちたが、思いがけぬ転機を迎える。
それは自らの主人に関する予言を聞きつけ、ヴォルデモートに伝えたことだった。スネイプは前半部分しか聞いておらず、またこの時点では予言の子として生まれてくるのがハリーとは判明していなかった。
その後、ヴォルデモートは予言の子をハリーと断定し、リリーとジェームズを狙うようになる。
スネイプは生涯を通して唯一愛したリリーが狙われていることを知り、ダンブルドアに救いを求めるが、虚しくもリリーはヴォルデモートの手にかかり殺害された。
それからはリリーの血が流れるハリーを守ることに生涯を捧げることになる。この経緯がスネイプが「善人」と言われる所以だろう。

スネイプは元死喰い人だった為、不死鳥の騎士団をはじめとするダンブルドア陣営からは常に怪訝の目で見られていた。
もちろんダンブルドアのみが彼の行動原理を理解しており、信用に値する確固たる理由を把握していたが、スネイプはリリーへの愛を他言しないことをダンブルドアに強く頼んでいた。
その為、他の者はなぜダンブルドアがスネイプを信用しているのか理解できなかった。
また「謎のプリンス」の序盤、ベラトリックスがスネイプは信用できないと食ってかかっていたように、ヴォルデモート失墜後ダンブルドアの庇護の下に居たスネイプは、死喰い人からも疑いの目で見られていた。

そんな危険極まりない二重スパイの任務をスネイプは完璧にこなしていく。
魔法界きっての開心術士と言われたヴォルデモートですら、スネイプの心の底は読めずに、結局腹心として扱うようになった。
ヴォルデモートはスネイプを信頼することはなかったが(そもそもヴォルデモートは誰も信頼しない)、疑いを捨て、闇の陣営側であると判断したのだった。

さらに、ハリー含め多くの人を敵に回すことを覚悟の上で、打ち合わせ通り、ダンブルドアを殺害する任務を遂行した。
これによりダンブルドアの狙い通り、ヴォルデモート陣営での立場を確固たるものとし、ハリーには強烈な復讐心を向けられたが、影からハリーたちを援護し続けていた。
スネイプの存在はダンブルドア陣営にとって非常に大きなものであり、その任務は並外れた閉心術の使い手であった彼にしかこなせないものだっただろう。

スネイプにとってハリーがどのような存在だったのか。
ハリーは最も愛する人が唯一残した一人息子であると同時に、彼が最も憎んでいた若かりし頃のジェームズとそっくりの少年でもあったのだ。
しかしその少年を命を賭して守り通し、ダンブルドア亡き後の役目を果たしきった彼は「善人」としての一面があった事は確かだろう。

個人的な結論

ここまでスネイプの二面性について述べてきた。
この二面性こそが彼を人気キャラクターに押し上げ、この議論を巻き起こしてきた理由だ。

「彼が善人か悪人か」
これは答えがあるわけではなく、言ってしまえば限りなくグレーな人物、と言えるだろう。
実際J.K.ローリングスはスネイプに対して、

「スネイプは聖人じゃない。彼は執念深い、いじめっ子だった。彼は悪魔でもない。魔法界を救うため、命を落としたの」

と述べている。

とは言え、ここまで長ったらしく書き連ねてきて、結論がこれでは後味が良くないので、私の個人的な意見を述べておく。

私は、スネイプは非常に愛の深い「悪人」だったと考える。

確かに彼はハリーを守り抜いたが、それはダンブルドアに諭され、リリーへのとても深い愛から成るものだった。
しかし、前述した通りに狙われたのがロングボトム家だったら?彼は闇の道を走り続けていただろう。
そして何より、リリーの息子がヴォルデモートに狙われていると知った際、彼は息子を含め一家全員を殺害するつもりであると考え、息子の命(と父ジェームズ)と引き換えにリリーを見逃すように慈悲を乞うた。
ダンブルドアには「見下げ果てたやつ」とまで言われてしまうが、それも当然だと思う。
ジェームズはスネイプにとって最も憎むべき相手であり、彼の死を気にしないことはまだ理解できる。
しかしハリーは異なるのではないだろうか?確かにハリーはジェームズの子ではあったが、リリーの子でもある。そのハリーの死すら厭わず、リリーだけが助かればそれでいい、と考えた。
仮にスネイプの願い通り、リリーだけが助かり、ジェームズとハリーが死んでいれば、残されたリリーは深い絶望に襲われていただろう。
そのことを考えず、リリーの命だけを懇願したスネイプは独り善がりの愛で、やはり「悪人」だったと思う。

彼の暗い生い立ちや、学校でのいじめは同情に値すると思うが、闇の魔術にのめり込み、ヴォルデモートに心酔していた彼は「ハリーと魔法界を救った悪人」だったのではないだろうか?

最後に

私は「悪人」と結論づけたが、異なる意見があることも当然で、そこがセブルス・スネイプの大いなる魅力だ。
読者の数だけ違った意見や見方があると思うので、この記事がハリーポッター好きの方の目に止まったなら、ぜひあなたの意見を聞かせてほしい。

また、この記事を書いていると、熱が落ち着くどころか更に燃え上がってきたので、「ハリーポッター」に関する記事をいくつか執筆しようと考えている。
嬉しくも興味を持っていただいた方はぜひ次の記事にも目を通していただけると光栄だ。

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