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「星のボタン」を売った話

アドベントカレンダー「ぼくのわたしのスタァライト」の記事として、「星のボタン」を売ったお話を書かせていただきます。めのフェ(@Menophe9901)さん、素敵な企画をしてくださり感謝申し上げます!

2023年夏、ワンフェスというイベントにて真鍮削り出しで製作した「星のボタン」を販売しました。ここでは技術的な話(は別途そのうち書くかも)ではなく、版権申請やモノづくりの大変さも交えながら体験記として出力いたします。

何故「星のボタン」を作ろうと思ったのか

理由はシンプルで、レヴューにおけるキーアイテムである「星のボタン」が欲しかったこと、および、ちょうど自宅にCNCフライス(切削加工機)を導入したばかりで「もしかして作れるんじゃね…?」と思ってしまったからです。

星のプロトタイプ

早速CADで3Dモデルを作り、3Dプリント→木材→アルミと、段階的かつ反復的に試作を再演。そして最終的に真鍮削り出しで完成したのは九九組の日である2022年9月9日でした。Youtubeの配信にまにまにまに間に合わない〜〜と言いながら直前まで必死で真鍮を磨いていました。

あの日生まれたんだね
真鍮製 星のボタン「真鍮星」が

ワンフェス出展を決める

その後、有難いことにお褒めの言葉や「売ってほしい!」といった多くの反響をいただきました。

元々は頒布するつもりもなかった(そもそも個人でやるには製造が大変、単価がどうしても高くなる、需要がわからない等)のですが、想定を上回る反響や諸々の経緯を経てワンフェス2023夏への出展を決めました。

私はもう 舞台の上🍅

当日版権とは

ここで、ワンフェス(=ワンダーフェスティバル; 世界最大級の造形・フィギュアの祭典(公式より))の「当日版権システム」という面白い仕組みについてご紹介します。(ご存知の方は読み飛ばしてください。)

当日版権とは、ワンフェスの開催当日に限り、出展者は版権元様からの許諾得ることで版権モノの商品化および販売が可能となる仕組みです。つまり、当日のみの許諾とはいえ、商品にコピーライト©︎を刻めるのです!!これはアツい…!
(実は私はワンフェス自体にも一度も行ったこともなく、お恥ずかしながら
当日版権という仕組みも知りませんでした)


当日版権申請手順

もう少しだけ出展・版権申請の手順を書くと、当日版権は2段階で進めます。

  1. ワンフェス出展申込

  2. 当日版権予備申請 (商品化内容について文章で提出し、版権元様の許諾を得る)

  3. 当日版権本申請 (商品の画像を提出して版権元様の監修および許諾を得る)

  4. 誓約書提出・版権料支払い

  5. 商品製造

  6. ワンフェス当日販売

3.の本申請で許諾を頂くことではじめて公式にワンフェス当日の販売ができるというわけです。
そして本申請の許諾を得た後は取り下げはできず、必ずサンプル提出等所定のプロセスを最後まで完了する必要があります。版権元様からはほぼ好意で許諾を頂いていることも思料すると、出展者としての責務はしっかり果たさないといけません。


怖かった

ワンフェス出展って、こんなに怖いことだったの…?

決して、ワンフェス実行委員会様や他の出展者様、お客様が怖いという意味ではありません。

当日版権許諾をいただけるか?

当然ですが版権許諾をいただけるかわかりません。結果が出るのはワンフェス当日の大体1-2ヶ月前です。前述の通り、基本的に版権元様のご好意です。

売れ残ったら…?

当日版権のルールとして商品はワンフェス当日のみしか販売できないため、売れ残ってしまっても通販等で処分というのは不可です。
(改めて版権申請を経て再販という道はあります)

私はワンフェス自体が初参加であり、更に舞台創造科の皆様がこのイベントにどれくらいいらっしゃるか?も全く読めませんでした。
真鍮星は原価もそれなりですが、それ以上に切削加工も仕上げの研磨作業もかなり大変なので、頑張って準備したのに全然売れないと精神的に辛いものがあります。

限られた時間で品質を保ちながら生産ができるか?

ご購入いただいた方を絶対にガッカリはさせない!!という気持ちは勿論のことですが、それに加えて、版権元様からの許諾をいただく、つまり当日版権とはいえ「少女⭐︎歌劇 レヴュースタァライト」の看板を借りて商品化をするわけで、それなりのプレッシャーを感じました。「質」は絶対に譲れません。
(大袈裟かもしれませんが、このようなマインドで取り組んでまいりました。)

更に、当日版権のルールとして、原則、本申請許諾が出てからでないと商品の生産を開始できないため、限られた時間で品質を保ちながら生産しなければなりません。

お財布もそれなりに…

ワンフェス出展料が3万円とまあまあお高い金額かつ版権不許諾の場合も出展料は返ってきません。初出展のハードルは高いと感じました。(実際出展するかどうかはかなり悩みました。)

苦行の星磨き

ワンフェス当日の1ヶ月と1週間前の6月21日、無事に当日版権本申請の許諾をいただき生産を開始しました。ブシロード様、本当に有難うございました!!

1ヶ月ちょっとという期間での生産は非常にタイトで、その中で真鍮切削加工・研磨、3Dプリント、組立て、取説・パッケージ製作などなど……全ての工程で自らの手を動かし、歯を食いしばりながら夜な夜な真鍮を研磨していました。星摘みの塔ならぬ星磨きの家に幽閉されたわけです。

切削加工後未研磨の真鍮星(左) と 研磨後の真鍮星(右)

生産作業は直前ギリギリまで続き、ワンフェス前日には友人を集めて外箱生産と梱包を手伝ってもらったりしながら、どうにか予定数の生産を完了できました。

そして、真鍮星本体と付属のケース、取説、パッケージには堂々とコピーライトを刻みます。これ、めちゃくちゃにテンションが上がりますね!!!!!!!!!眩しい……。

©︎ Project Revue Starlight / ©︎PRS

(ワンフェス当日版権ではコピーライトの表示がルールとして定められています)

誰も予想できない舞台

2023年7月30日幕張メッセにてワンフェス当日を迎えました。

開場の2時間前には小屋入りをしてブースを設営。展示用の雛壇を自作しておいたり、ルールに従い防炎仕様のテーブルクロスを調達したり、商品生産だけでなくブースの準備段取りも大事です。

そして午前10時、開場のアナウンス。開場と共に大手と思われるディーラーさんには列ができていくのを横目に見ながら「お願い…うちにも来て……完売してくれ……」と祈っていた数秒後、我がブースにもお客様が……!というかめちゃくちゃ列が伸びてる!???!!!!え?
もうそこからはパニックで記憶は残ってません…。

そしておよそ10分後には完売。
その瞬間、ワンフェス初出展の不安や緊張、前日までの生産作業の疲労・寝不足から一気に解放されて体が軽くなりました。

わたし、幕張で一番空っぽかも……。

完売できたことは嬉しい一方で、わざわざお越しくださったのにご期待に添えなかったこと、本当に申し訳無いという気持ちでいっぱいでした。それにも関わらず、文句の一言どころか優しい言葉をかけてくださる方が沢山いらして……舞台創造科………優しい……🥺
本当にありがとうございます。

こうして2023年の夏の幕が下りました。

7gのキラめき

真鍮星は真鍮の塊を「エンドミル」という刃物を使って「星のボタン」の形に削り出していきます。削り出した後は、手作業でヤスリがけを何段階か繰り返し、最後に金属研磨剤で丁寧に磨き、鏡面に仕上げます。

なお、真鍮材1.5kgから生まれる星はたったの7g×9個。実に96%の真鍮は「星屑」として捨てられます。

もったいない…?ワカリマス。
しかし、それが星というものなんだと思います。

切削後の廃材の一部

また、量産(といっても2桁個だけですが)するにあたっては、生産のしやすさ、安定した品質で作れるか、手作業をいかに減らすか(これは手間だけでなく品質のばらつきを減らしたい)、納期の制約、などを設計段階から考えることが重要です。そういった頭の体操をしながら設計から生産まで、試作・再演を繰り返しながらパズルのように組み立ていくことはとても面白い体験です。

加えて、真鍮という金属は湿気や皮脂等によって徐々に変色してしまうので、定期的に金属研磨剤で磨いてあげる必要があります。手間こそかかりますが、磨きたてに放つ真鍮の一瞬の輝きは本当に美しく魅了されます。これが真鍮で作ろうと思った理由です。(それ故に、真鍮のキラめきを届けるべく、ワンフェス直前に再度磨き上げを行いました。)

このように、真鍮星はたった7g(※)ですが、その背後には96%の「星屑」や多くの作業の積み重ねが隠れています。

だからこそ美しい。

※真鍮部分のみの重さ

再演

最後に少しだけ宣伝をさせてください。
実は2023年夏のワンフェスは最初で最後、再販もしない前提で出展をしました。というのも、9月に子供が産まれ、当面はこのような活動が難しいことが分かっていたためです。

一方で、この夏、幕張で一番空っぽになったのかもしれませんが、ワンフェスへお越しいただいた方々へ星を届けきれなかった、つまり演じきっては無いという想いと、非常に多くの再販を望む声をお寄せいただいたこともあり、再び舞台に上がるかは本当に悩みました。

そして、有難いことに嫁さんからは「出したら?なんとか協力するよ」と背中を押してもらい(どころか絶対めちゃくちゃ迷惑をかける)2024年冬のワンフェスに再び出展することを決めました。

観客が望むのなら、私はもう舞台の上

嫁さんに感謝しつつ、子育てと出展準備を頑張りますので、ご興味ある方は是非ワンフェス2024年冬(2024年2月11日@幕張)へお越しください!

舞台で待ってます✨


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