今年1番聴いた曲 Age Factory "Say no more"
どうも皆さん、YU-TOです。
音楽好きの人間というのは面倒臭い人種で、毎年この時期になると誰に聞かれたわけでもないのに "今年のマイベスト" を作って、公衆に晒したい欲を必ず持っているものだ。
そんな習性を知ってか知らずか、各サブスプリクションサービスには年末になると、AIが今年自分がよく聴いていた曲やアルバムを再生回数が多い順に振り分けてランキング化してくれる機能が現れる。
自分も含めた音楽マニアックス達は、「今年の俺(わたし)はこんな音楽を聴いていたのだっ!」とそのランキングを晒して承認欲求を満たすわけなんだけど(言い方ww)、こういうシェアから手に入る情報だとか、話の種なんかもあったりするから、なかなか侮れない。
今年の自分のランキングは本当に偏っていた。
まず、アルバムごとのランキングはこんな感じ。
1位、2位はAge Factoryが独占。3位のAFJBも彼らの別プロジェクトだから、もうTOP3をAge Factoryが独占していることになる。
そして曲単位のランキングになるとまた更に極端さが増す。
「いや、もう1年通してほとんどAge Factoryしか聴いてないやんけ!」といったくらいの偏りっぷりである。
あと、自分は基本家で音楽を聴いたり、作業しながら流すということを一切せず、家だとYouTubeでMVを観てることの方が多いから、普通のリスナーに比べてサブスクでの再生回数は少ない方なんだという事も同時に分かった。
だから、今年は自分の数少ないサブスクで音楽を聴く機会の殆どを、Age Factoryに奪われていたということになる。
そんな今自分がどハマりしているこのAge Factoryというバンド、ある程度日本のロックシーンに精通している人であったのなら、名前くらいは目にしたことはあるのではないだろうか?。
奈良出身の3ピースバンドで、大型フェスのラインナップに名を連ねるようになったのはここ数年のことである気がするが、2010年結成とのことだから割と長いキャリアを持ったバンドではある。
これまでに4枚のフルアルバムと3枚のミニアルバムをリリースしており、全国規模で精力的なライブ活動を展開している模様。
どうやらメンバーは未だ奈良在住であるらしく、インタビューなどで地元に対する愛や、奈良という土地ならではの原風景が作品作りのインスピレーションになっていることを語っている。
失礼を承知で言わせてもらうが、自分は "奈良" という場所にバンドシーンがあるイメージが全く無い。
お隣の京都には、かの有名な10-FEETがいて "京都大作戦" なる大型フェスを主催しているし、ロットングラフティー等の存在もあるから、バンド文化が根付いた土地である印象があるけれど、奈良には無い。
もちろん、ライブハウスはあるのだろうけど、自分の割と長いバンド歴の中でも1度もライブをしたことがない土地であるし、そもそもツアーを組む際、日程に奈良を入れるという考えすら浮かばないくらいだ。
そんな土地を拠点にして活動するバンドが、関東で1000人超えキャパのワンマン公演をソールドアウトさせているという事実は、このバンドが巷で "バケモノ" と評され、恐れ慄かれている理由の1つでもあるのだろう。
いつだったかすら覚えていないのだが、何の変哲もない普通の日に、たまたまコンビニで目にしたAge Factoryのライブ広告が彼らの音に初めて触れたキッカケになった。
「Age Factoryってバンド、よく最近名前聞くけど、ZEPPとかでワンマンやれるバンドなんだなぁー」
そう心の中で思ったことを覚えているが、まさかその後このバンドに心底魅了され、その広告のライブに足を運ぶことになるとは、この時は本当に予想もしていなかった。
「ちょっと聴いてみるかー」と、広告をみたその場でサブスクで音源を検索。「いい時代になったもんだ」と、すぐに彼らの最新アルバムである『Pure Blue』を聴いた瞬間、体に電流が走ったような衝撃が、、、、走らなかった(笑)。
「ああ、なるほど、こういう感じか」
アルバムのオープニングを飾る "Over" を聴いた時の感想は、そんな程度なものだった。
しかし、日本語で歌ってはいるけれど、他の "邦ロック" とは一線を画す音であることは直感的にすぐにわかった。
一聴で心を奪われはしなかったけれど、少なくともこのバンドが、日本語のメロディを歌ってはいるものの、"しみったれた恋愛ソング" を歌う他の邦ロックとは(嫌な言い方失礼w)、全くベクトルが違う気骨のあるサウンドを出しているということが、ごく瞬間的に理解できたのだ。
まず、明らかに他の邦ロックと比べてドラムが重い。
細かいことは一切叩かず、"ビート" に徹して、ピッチが低い胴鳴り感があるスネアと、張り付くような粘り気のあるバスドラム、口径が大きいものを使っているであろう倍音溢れるシンバルの響きを持ったドラムは、 "ロックドラム" のあるべき姿を感じられて、「なかなか渋いドラマーだな」と感心させられた。
ボーカルは男っぽさ満載のハスキーな声質だが色気があり、歌詞はわかりやすくも、歯が浮くような固有名詞は一切出てこない。
ギターのアプローチが所々90`s EMOを彷彿とさせる部分もあって、「このバンド、何か他とは違うな、、、」と思い始めた矢先に3曲目、その後に自分の "1年間で最も聴いた曲" になる "Say no more" が流れ出した。
https://www.youtube.com/watch?v=To2Dak3let8
「これは何だ、、、?。何か、、、音が物凄く温かい、、、」
そうはっきりと感じた。
隙間があるロック
生々しい情感を奏でるロック
どこか懐かしさを感じるロック
何が適切なのかは分からないが、そんな呼び方で形容したくなるサウンド。
そして、この時点ではっきりと気がついたのだが、どうやら彼らは同期音を一切使わず、"人が演奏している音" でアンサンブルを完結させているようだ。
今時のバンドとしては、これは非常に珍しい。
この文字通りの "体温" を感じさせるような温もりがある音の "ロック" は、今時そうそう味わえる音ではない。
だから、おそらくこのバンドは、自分よりも上の世代で、かなりのキャリアがあるバンドなのだろうと予想した。
90年台の音楽をリアルタイムで喰らってきた世代で、長いこと名前は出なかったけど、水面下で長いこと活動してきて、何かがきっかけになって人気が出てきて2020年代で世間に見つかり、ZEPPでワンマンをやれるまでになったバンド。
そんなイメージを勝手に抱いて、「何だか、面白い国内バンドに出会えたなー」なんてことを思い、バンドの詳細を調べてみると、、、。
愕然とした。
「いやっ、年下かい!!!!!」と(笑)。
それも、割と "ジェネレーションギャップ" が生じるくらいの歳の差。
だがしかし、明らかに、これは自分より下の世代が出すような音じゃない。
これは、もっとキャリアがある人達が出す、卓越した演奏技術と歳を重ねたが故の出汁が出ている芳醇な渋い音だ。
だが、確かに彼らの音は古臭くない。
特に『Pure Blue』は、意識しているかは分からないが、このサブスク時代に沿った曲構成になっていたりもして、言われてみれば新世代な音だったりするのかもしれない。
そんな事をあれこれ考えながら、彼らの事を調べていくうちに、冒頭で書いたように彼らは巷で "バケモノ" と称されている事を知ったのだ。
「いや、このセンスはマジでバケモノだ、、、意味が分からない」
そんな衝撃的事実を知って以降、Age Factoryの音楽に虜になってしまうのに、そう時間は掛からなかった。
全アルバムを聴き漁り、ライブ映像を片っ端から観て、存在を知ってから1ヶ月足らずくらいでライブにも足を運んだ。
恐らく、自分の人生史上最速の "好き加速度" だったかもしれない(笑)。
Age Factoryは、ライブもまた強烈。
音源通りの、人の演奏のみで構成されたアンサンブル。
クリックも未使用。時に音源よりハシったり、モタったり、音程を変えたりと、現代ロックバンドのライブとしてはかなり荒っぽい部類に入ると思うのだが、決して下手ではなく、幾多のライブ経験に裏打ちされた強靭さが溢れ出る演奏力だ。
その根底を支えているのは、やはり増子 央人氏が叩き付けるドラム。
"ビート職人" とも呼ぶべき彼の魂の籠ったビシッとした音は、広い会場であろうとも音が埋もれず、1発1発が腹に響いてくる。
演っていることは、下手すればドラム初心者でも形だけは叩けてしまうくらいにシンプル。
だが、初心者が叩いても、この音とノリは絶対に、確実に、どうあがいても出せない。
彼が叩き出すドラムの強さは、確実にAge Factoryサウンドの核になっていて、そんじょそこらのへなちょこが叩いてしまっては、彼らの音楽の全てが台無しになってしまうだろう。
そのくらいに、彼が叩き出すドラムは強烈だ。自分も見習いたい。
あと意外なのだが、Age Factoryはボーカルのコーラスワークが非常に美しい。
音源をよーく聴いてみると分かるのだが、サビの主旋律に重なるハモリがかなりハイトーンで、その上で少し違うメロディラインを歌っていたりもする。
普通だったらキーボードなどの同期音で奏でそうな音を声でやっていたり、ウィスパーボイスやファルセットを薄く被せていたりと、メロディに細かい妙技がいちいち効いていたりして、聴いていて思わずニヤリとしてしまう。
ライブにおいて、その役割を担っているのはベースの西口氏。
普通だったら同期で流してしまうようなところだが、そこも全て人で表現しているところがいかにも彼ららしい。
そして、ライブのMCは本当に「アマチュアバンドの平日ブッキングライブかよ!」と思ってしまうくらいに下手(失礼ww)。
だが、そんなことは演奏と曲のとんでもない熱量を喰らってしまうとどうでも良くなる、、、いやむしろ、その何のギミックもない、飾らない姿勢こそが彼らの魅力で、「頼むから小洒落た演出的MCをするようなバンドにだけはならないでくれ」とすら思っている(笑)。
Age Factoryのライブの客層は、ちょうど男女が半々くらい。
自分と同じ世代くらいの人、カップル、学校帰りの女子高生と思わしき二人組、偏りなく色々な世代が交わっていて、彼らが奏でる、"邦ロックの皮を被ったハードコア・パンク" とも呼べるような無骨なロックは、自分だけではなく、この国の幅広い層に今ぶっ刺さっているようだ。
自分が今年1番聴いた曲、"Say no more" は、MVこそない曲だが、ワンマンでのライブでは毎回演奏されているようで、Age Factoryの裏の代表曲なのではないかと勝手に思っている。
たった2分半の中に詰め込まれた、ありったけの悲しくて儚い、人間味溢れた温かい情感。
どこまでも広がっていくような、どデカいサウンドスケープを生演奏のみで表現しきったこの曲は、きっと日本音楽の歴史に残っていくだろう。
別に残らなかったとしても、恐らく自分は一生この曲を愛し続けていく。
それだけは、自信を持って断言できる。
そんな久しぶりに心を持っていかれてるAge Factoryというバンドを、今日、川崎クラブチッタで目撃してくる予定だ。
"Twilight 2022" と銘打たれたこのツアー。チケットは全公演ソールドアウトしたらしい。
何でだろう?、自分のことじゃないのに何故か嬉しい(笑)。
彼らみたいな、生演奏と楽曲が持つ浸透力の高さのみで勝負しているバンドに共感する人が増えているという事実は、日本のバンドシーンの未来にとって、正に "Twilight" なことなんじゃないかと、しみじみ思う。
お後がよろしいようで(笑)。
ライブ、楽しみだなぁ。